「ようやく一人称で仕事ができ、担当する業務の一つひとつの意味も理解し、楽しくなってきました」と、笑顔で話す。彼女は「鈴木真里」さん。Bフレッツの所内保全業務を担当している入社2年目の社員だ。
彼女のもう一つの顔は、“女流棋士”。小学1年生の時、父親から将棋を教わり、小学6年生で女流プロ棋士の育成機関である「育成会」に入会。中学の全国大会では準優勝、高校では優勝し、大学4年の時は全日本学生女流名人戦でも優勝した。
華々しい経歴の中で、大きな岐路もあった。高校3年の時、教わっていた師から、「大学に進むなら、プロはあきらめろ」と言われた。どちらを選ぶか─。彼女にとっての将棋の魅力は、“老若男女を問わない”“いろいろな人と出会うことができる”こと。悩んだ末に、多くの人と対戦する楽しさを続けられる“アマチュア”でいることを選択、大学へ進学した。
就職の際にNTT東日本を希望したのは、グループ会社に将棋部があり、通信を支える仕事に魅力を感じたからだと言う。
職場では、父親ほどの年齢の人たちとも将棋をきっかけに会話が生まれ、仕事もやりやすくなった─と感じている。終業後、部の練習にはなかなか行けないが、「大会があるため、休みたい」と申し出ると、職場の皆が快諾してくれる。「こういう環境は、本当にありがたい」と彼女は話す。
昨年、羽生善治名人と対局する機会があった。名人の“気”にのまれ、「対面しているだけで頭が真っ白になり、自分らしさが全く出ずに負けてしまいました」と語る。
今後の目標を聞くと、「将棋界で言われる“男女間の実力差”を自ら払拭していきたい」「将棋の魅力を地域の子供たちに伝え広げたい」との女流棋士の強い思いと、「自分で判断し、将棋のように先を見据えた仕事ができるようになりたい」と社会人としての思いを、キラキラした目で、熱く語ってくれた。