きょうのコラム「時鐘」 2009年7月27日

 ロボット工学が大人気である。先日の記事にもファッションショーでウエディングドレスを着たロボットが「モデル」として登場し、愛らしい表情で客席を驚かせたとあった

いかにも注目されそうな話題だが、人間とそっくりの「花嫁」に怖さを感じなかっただろうか。ロボットや人形やマネキンは、人の姿に似れば似るほど親しみがわく。が、あまり似せ過ぎると、突然怖くなる

これをロボット工学で「不気味の谷」といい、人間を模倣したロボットや人形が動きだすと「不気味の谷」はさらに深く、恐怖指数は高くなる(森政弘氏の論=性欲の文化史・井上章一著から)という

漫画の鉄腕アトムは、人と異なる体型だから愛されるのであり、人間の子どもそっくりなら怪談になってしまう。機能だけのロボットは、ただの機械である。それが技術の進歩で、似せなくてもいいところまで人間に似せて作ることになる

話題づくりや機械の可能性を広めるためなら面白い試みだろう。が、そのうち「人間型ロボット」を作るつもりでいたはずが「ロボット型人間」を量産することにならないか。そこが怖い。