2009-07-18 傷ついて、ようやく人は愛とむきあう。
■[本][十文字青][傑作]ぷりるん。 〜特殊相対性幸福論序説〜 ★★★★★
『何か、あの、あたしと、話したいこととか、あったりした?』
「とくにはないんだけど、まぁ、迷惑じゃなければ、何か雑談的なことでも」
『迷惑、とか、じゃないよ』
「そう。それはよかった」
『あたし、ユラキくんのこと、好きだし』
「そう。それはよかった」
待ってください。
「――すみませんが、今の、もう一度言ってくれませんか」
『あたし、ユラキくんのこと、好きだし』
「そう、それ」
聞き間違えではないようだ。
短評
「十文字青流、新感覚系ラブストーリー」というふれこみに偽りはないが、エロを通りこした性描写てんこもりのとんでもない内容のため、とにかく読んでみてとしかいいようがない。普通のラブコメからは大きく逸脱した内容であるが、小気味良い文体のドライブ感も手伝って、読み始めたが最後、毒を含んだ内容に気持ち悪さを感じながらも、一気に最後まで読み通してしまった。いかにも十文字青らしい「破滅と再生の青春狂想曲」でありながら、今までの作品とはちょっと違う不思議な雰囲気となっており、大変面白かった。大満足。
以下、ネタバレあり。
「だって、ぼくは知らない。どうやって好きになった人を大切にすればいいのか、とか。何をすれば相手が喜ぶのか、とか。ぼく自身、相手に何をしてもらいたいか、どうされたいのかも、よくわからない。人を好きだという気持ちも、正直、わかるような、わからないような感じだよ。ぼくはたしかに、きみに好意を抱いていたけど、それも漠然としたものだった。いいな、とか、かわいいな、とか、その程度だったんだ。ぼくはきみに欲情したこともあったかもしれない。でも、どうして欲情したのか、それがどうしても必用なことなのか、ぼくにはわからない。もし、必ず、絶対にそういうことをしないといけないんだとしたら、ぼくにはもう無理だ。ぼくにはできない。わからないことばかりだ。だから、ぼくは思ったんだ。きみも同じじゃないかと。きみも、わからないんじゃないかと。わかっているのなら、それはそれでいいんだ。ただ、今のぼくにはわからないんだ。若い身空でこんなことになってしまったし、一生、わからないままかもしれないけど」
感想
暗くて重い作品が多い作者であるが、最近では、ザ・スニーカーに連載しているエロコメ・アクション「ばけてろ」など、杉井光と同じように様々な方面に作品を提供する機会が増えつつある。本書では、十文字作品の中では異色のラブコメに初挑戦となるわけだが、従来のラブコメとは一線を画するような、とんでもない代物に仕上がっていた。
本書の一番の特徴は、エロを通り越した大胆な性描写が盛り込んであることだろう。セックス依存症の恋人のお願いを断れず、何度もセックスするはめになったり、姉にキスされて、○ん○んをなでられたりと、そういう内容が平然と書かれているのだ。しかも、愛のないセックスから始まった不幸の連鎖は、主人公の"あそこ"が勃起しなくなるという大惨事に発展するのだから、ライトノベルにあるまじき過激な性描写をもりこんだと話題になった筒井康隆の「ビアンカ・オーバースタディ」なんて霞んでしまう。
では、そんな本書は、過激なだけで中身がすかすかのただのライトノベルかというと、そんなことは全くない。本書で描かれるのは、今までも十文字青が描いてきた、鮮烈にして強烈な「破滅と再生の青春狂想曲」であり、絶望のさなかに落ちた主人公の回復の物語である。歪んだ性に深く傷つけられた主人公であるが、家出した妹のことを心配し、姉に看病されるなかで、家族のありがたみに気づき、自分を支えてくれる人たちの重要性を知る。他人に対して率直に意見をぶつけることで、真正面から人と向き合うことの意味を知る。今まで当たり前と思っていたものの本当の大切さに気づいて、ようやく主人公は、言葉では伝わらない想い『ぷりるん』、すなわち、『愛』と向きあえるようになるのだ。立ち籠めていた暗雲が次第に消え、晴れわたっていくような清々しさがあり、"あそこ"が再び勃起する瞬間も実にさわやか。なんともすばらしい成長物語ではないだろうか。過激な性描写は、無意味にエロい読者サービスのためではなく、「愛ってなんだ?」「家族ってなんだ?」という普遍的なテーマを描くための重要な要素だったのだ。
ラブコメにあるまじき性描写を、王道的な青春小説に混じえることで、今までの十文字作品を継承しつつも、それらとは違う新鮮で不思議な作品に仕上がっている。大満足の一冊だった。最近はミステリーにも挑戦してみたいとブログに書いているようだが、これからも様々な小説に挑戦していただけたらと思う。
- 30 http://reclips.booklines.net/ISBN/4758040923
- 19 http://reclips.booklines.net/
- 15 http://search.yahoo.co.jp/search?p=零崎人識の人間関係&search.x=1&fr=sb-necctp_sa&tid=sb-necctp_sa&ei=UTF-8&aq=0&oq=零崎
- 10 http://www.google.co.jp/hws/search?hl=ja&q=ub7637&client=fenrir&adsafe=off&safe=off&lr=lang_ja
- 8 http://images.google.co.jp/imgres?imgurl=http://listverse.files.wordpress.com/2007/10/coruscant.jpg&imgrefurl=http://d.hatena.ne.jp/ub7637/&usg=__gWb28lSYleQxnTdn38Y9qmlWsDw=&h=800&w=1280&sz=187&hl=ja&start=4&tbnid=daIU70mMG3YytM:&tbnh=94&tbnw=150&prev=/i
- 7 http://blog.so-net.ne.jp/MyPage/blog/home/
- 7 http://www.google.co.jp/webhp?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8
- 6 http://twitter.com/ub7637
- 5 http://search.yahoo.co.jp/search?p=??????絖????&ei=UTF-8&fr=top_ga1_sa&x=wrt
- 5 http://tc4g3003.blog64.fc2.com/