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 談論風発 :  島根県立大の日韓シンポ 問題の本質そらす詭弁
拓殖大教授 下條正男
 7月3日、島根県立大学は韓国側から4名の研究者を招き、「学術としての竹島/独島研究の定立のために−領有権問題をめぐる堂々めぐりを超えて−」と題するシンポジウムを開催した。主催者側は「恐らく全国的にも初めての試み」としているが、類似の日韓共同シンポは2月21日、「竹島/独島問題の平和的解決をめざして」として、東京の明治大学で開催されている。

 私が今回のシンポに関心を持ったのは、2月のシンポが韓国政府の対外宣伝機関である「東北アジア歴史財団」の後援で開かれたからである。内容は当然、島根県批判と日本政府批判であった。韓国側は近年、積極的に日本攻略に乗り出し、その対象は市民団体や在日社会にも及ぶようになった。

 今年の「竹島の日」の記念式典当日、松江市内で開かれた財団法人人間自然科学研究所の「出版記念講演」も、韓国側に利用された感がある。約700人が参加した上、竹島を「日本固有の領土」とする外務省の見解に異議を唱える島根大学名誉教授の内藤正中氏がビデオ出演したことで、「竹島の日」条例に反対する県民の数は、県の式典に参加した520人より多い、としているからだ。

 今回、私が島根県立大のシンポに一般参加した理由もここにある。7月1日から3日にかけ、対岸の釜山市では韓国海洋警察庁、東北アジア歴史財団、韓国海洋水産開発院による「第3回海上治安協議会」があり、「日本の独島問題接近と動向」「独島に対する日本の管轄権排除措置の性格と意味」などが協議されていた。

 そして事実、島根県立大関係者の口からは、東北アジア歴史財団との関係を示唆され、今後、同財団からの研究支援を受けて研究活動を続けるとのことであった。同財団は、島根県が「竹島の日」条例を成立させる直前の3月7日、当時の盧武鉉大統領が「長期総合的体系的に扱う専門的機構の設置」を指示し、4月20日に発足した「東北アジアの平和のための正しい歴史定立企画団」が母体となっている。2006年9月に東北アジア歴史財団と改組し、対日批判工作を続けている。それも島根県の動きを封じ込めるため、日本海呼称問題や慰安婦問題を竹島問題と結び付け、日本の「侵略」を強調してきたのである。

 韓国側研究者が、「竹島の日」条例の制定を「無分別な歴史認識から始まった島根県議会の政治的」作用と評したのも、同じ発想である。その研究者は、国際政治学の立場から、島根県の「竹島の日」と韓国・馬山市が制定した「対馬島の日」を比較し、竹島問題を地方自治体の問題に局限しようとしていた。だがそれは、聴衆の目から竹島問題の本質をそらす詭弁(きべん)である。

 「竹島の日」条例が成立する1週間前、韓国の潘基文外交通商部長官(現、国連事務総長)が「竹島問題は日韓関係よりも上位概念」としたように、竹島問題は島根県と韓国政府の問題として始まった。本来なら、竹島問題は国家の主権にかかわる外交問題で、日本政府が率先して取り組まねばならない案件である。それを島根県がしなければならないところに、政治家不在の日本の現実がある。その竹島問題の牙城ともいえる島根県にも、韓国側の宣伝工作が及ぶようになった。

 だが今回のシンポの質疑応答を通じて二つのことが確認できた。一つは、竹島が韓国領であるとする歴史的根拠を韓国側が示せなかったこと。もう一つは、サンフランシスコ条約で竹島が日本領となったとする言質が取れたことである。国政が迷走する今日、この国を変えていくのは地方民である。

 …………………………………

 しもじょう・まさお 1950年長野県生まれ。韓国の三星綜合研修院主任講師など歴任し、99年に拓殖大教授に就任。2005年に島根県が設置した竹島問題研究会の座長も務めた。東京都在住。

('09/07/27 無断転載禁止)


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