太陽光発電 広がる不公平感どうする
経済産業省は、電力会社が家庭や学校などの太陽光発電の余剰電力を買い取る際の費用を全世帯の電気料金に上乗せする新制度案の概要を示した。太陽光発電の普及拡大をうながし、地球温暖化対策を加速させる狙いである。
自然エネルギーの活用は、地球環境に負荷をかけないうえ、雇用創出や産業育成につながる景気浮揚策としても注目されている。その代表格である太陽光発電には将来を見据えて積極的に取り組むべきだろう。
ただし、発電設備を設置していない家庭からも料金を徴収する今回の案は、負担の不公平感を助長しかねない側面を持つ。
新制度案は、各世帯の電力の使用量に応じ、買い取り費用を「太陽光サーチャージ」として電気料金に上乗せする仕組みだ。2010年4月から上乗せを開始する。その額は11年度は標準家庭で1カ月当たり30円程度、15年度には最大で100円程度になる見通しという。
政府は20年時点での温室効果ガス排出量を05年比15%減とする中期目標を設定した。太陽光発電はその柱であり、設備の設置数を20年に現在の20倍程度に増やす目標を掲げている。一度廃止した設置費用への補助金制度も復活させた。
一般市民や関連業界の関心も急速に高まっている。岡山県では本年度、出力1キロワット当たり7万円(上限28万円)の住宅用太陽光発電への補助制度を設けたが、2億5300万円の予算枠に対して申し込みが殺到、わずか6日間で受け付けを打ち切ったほどだった。
住宅用太陽光発電1基の標準的な設置費は200万?250万円。高価な買い物だ。それだけに、補助を受けられなかった市民の間には不公平感が広がっている。景気低迷で家計の所得が目減りする中、設備のない家庭からも一方的に負担を求めるとしたらなおさらだろう。
また太陽光発電は天候によって発電量が大きく左右される。大容量の不安定な電力は周波数や電圧に悪影響を及ぼすといわれる。未知の事態で起きる技術的な問題を解決するには相当の費用と時間がかかる。これらのコストも将来の負担に跳ね返ってこよう。
今回の案に対しては、業界や一般の声を集めるパブリックコメント(意見公募)を実施するという。政府は幅広い意見を聞いて制度を練るとともに、環境、エネルギー政策のビジョンを示しながら、消費者が納得できる説明をすることが重要だ。
国民性調査 社会覆う閉塞感浮き彫り
文部科学省所管の統計数理研究所が、日本人の意識を探るために5年ごとに実施している「国民性調査」の結果がまとまった。日本の社会全体を覆う閉塞(へいそく)感が指摘されているが、将来に明るい展望が持ちにくく、不安やいらだちを覚える人が増えている実態があらためて浮き彫りになった。
調査は昨年10?11月、全国で20歳以上の6400人を抽出し、52%が面接で答えた。米国の金融危機をきっかけに日本でも景気後退が深刻化してきたころだ。厳しい経済環境も結果に反映しているといえよう。
人々の生活がどうなるかを尋ねた質問に、「貧しくなる」と答えた人が57%で過去最高になった。2003年の前回調査に比べると、10ポイントもアップした。逆に「豊かになる」とした人は前回より3ポイント減の11%で過去最低だった。
“いらいら”も過去最高だった。「1カ月以内に、いらいらしたことがある」と答えた人は48%に上った。特に若年層で目立っており、20代で63%、30代で62%と、ともに初めて60%を超えた。
社会の満足度は、「満足」と「やや満足」を合わせても30%にすぎなかった。これは前々回から横ばい傾向が続いている。では、「不満があるときにどうするか」をみると、「選挙で考慮する」が前回より9ポイントも増えて55%に上り、過去最高だった1998年の51%を上回った。衆院選がある時に「何をおいても投票する」も前回より5ポイント増の40%だった。
医療、年金など社会保障制度への信頼が大きく揺らぎ、景気後退により人々の生活を下支えするセーフティーネットのほころびが顕著になった。総選挙が迫っている。政治の責任が厳しく問われることになろう。
国民性調査 社会覆う閉塞感浮き彫り
文部科学省所管の統計数理研究所が、日本人の意識を探るために5年ごとに実施している「国民性調査」の結果がまとまった。日本の社会全体を覆う閉塞(へいそく)感が指摘されているが、将来に明るい展望が持ちにくく、不安やいらだちを覚える人が増えている実態があらためて浮き彫りになった。
調査は昨年10〜11月、全国で20歳以上の6400人を抽出し、52%が面接で答えた。米国の金融危機をきっかけに日本でも景気後退が深刻化してきたころだ。厳しい経済環境も結果に反映しているといえよう。
人々の生活がどうなるかを尋ねた質問に、「貧しくなる」と答えた人が57%で過去最高になった。2003年の前回調査に比べると、10ポイントもアップした。逆に「豊かになる」とした人は前回より3ポイント減の11%で過去最低だった。
“いらいら”も過去最高だった。「1カ月以内に、いらいらしたことがある」と答えた人は48%に上った。特に若年層で目立っており、20代で63%、30代で62%と、ともに初めて60%を超えた。
社会の満足度は、「満足」と「やや満足」を合わせても30%にすぎなかった。これは前々回から横ばい傾向が続いている。では、「不満があるときにどうするか」をみると、「選挙で考慮する」が前回より9ポイントも増えて55%に上り、過去最高だった1998年の51%を上回った。衆院選がある時に「何をおいても投票する」も前回より5ポイント増の40%だった。
医療、年金など社会保障制度への信頼が大きく揺らぎ、景気後退により人々の生活を下支えするセーフティーネットのほころびが顕著になった。総選挙が迫っている。政治の責任が厳しく問われることになろう。
(2009年7月26日掲載)
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