和食ブーム追い風、包丁輸出増トントン拍子
世界的な和食ブームを追い風に、日本製の包丁の欧米、アジア向け輸出が伸びている。
海外の日本食レストランで働くプロの料理人らの間で、差別化を目指した「本物志向」が強まり、伝統の職人技が生きる堺の包丁など日本製包丁の人気が高まっているためだ。
真っ赤に焼けた地金を炉から取り出し、ハンマーでたたいては熱し、またたたく作業を繰り返す。地金の焼け具合で炉の温度まで分かる土井さんは「和包丁の刃は、顕微鏡で見るとノコギリのようになっていて、切れ味が良い」という。
青木刃物は2008年春、欧米や韓国向けに、1本1万〜3万円の高級和包丁の輸出を始めた。「毎月、輸出量が倍増」(青木孝浩専務)し、今や売り上げの1割が輸出向けになった。
堺市では、約1年前から海外からの注文が相次いでいる。今年に入り、堺商工会議所が堺刃物の英語版パンフレットを作成したほか、堺市も米国で和包丁の発表会を計画するなど、産地を挙げて輸出振興に取り組んでいる。
財務省の貿易統計によると、08年の台所用刃物の輸出額は前年比14・8%増の60億3847万円で、04年以降、前年比2ケタ増が続いている。
すしや刺し身などヘルシーな和食の人気が世界各地で高まり、海外で日本食レストランが急増したことが背景にある。農林水産省によると、海外の日本食レストランは2万数千店(06年11月現在)にのぼる。
回転ずしや居酒屋など外食チェーンの海外進出や現地資本の参入が相次ぎ、マグロ解体用など水産加工会社やスーパーでも日本製包丁の需要が増えている。
国産包丁の輸出を先導したのは、新潟や岐阜の洋包丁メーカーだった。吉田金属工業(新潟県燕市)は1983年に、柄から刃先までステンレス製の包丁を開発し、年90万〜100万本を輸出する。
岐阜県関市に工場を構える貝印(本社・東京)も高級包丁のブランド「
包丁用鋼材メーカー、武生特殊鋼材(福井県越前市)の河野通亜社長は「高級和包丁を持つことが、海外の料理人の間でステータスとなった」と指摘している。(大阪経済部 船木七月)
◇堺の包丁=国内で鋼の量産体制が整った1400年ごろ、クワやスキを生産する職人たちが集まっていた堺が、刀や槍(やり)など武器の一大生産地となり、鉄砲や和包丁へ技術が受け継がれた。包丁の産地は新潟県三条市、福井県越前市など少なくないが、和包丁は約8割が600年の伝統を持つ堺産という。堺産の和包丁を仕入れた他の産地が自社ブランドで販売する場合も多い。
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