2009-07-26
■「 26 時間テレビ」島田紳助の不可解を象徴したラストカット
最後の最後になにやってんの?
「 26 時間テレビ」はけっこうおもしろく見ました。
と共に、島田紳助に関する自分の感情の整理がある程度つきました。
「あのな、言うとくぞ」「正直」「マジで」
紳助はこういう接頭語をよく使います。みなさんもぼくもたまに使います。
自分の話に説得力を持たせるためのマジックワードですよね。
それはまるで「打ち明け話」のような。その話の内容に、あたかも重大な価値があるかのような。
大風呂敷を広げる。さらにはその話者たる自分を大きく見せようとする。
島田紳助のトークにはそんな傾向がめっぽうあることが見てとれました。
あらかじめ未来を予測しているかのような物言いに興じます。
もしもその試みが結果的に成功した場合「ほらみたことか自分の予見通りだぜ」って自慢できるわけです。
で、これが肝心なのですが、たとえ失敗したとしても、「その理由を冷静に分析するオレって頭イイ!」というプレゼンがなされます。
冷静で俯瞰的。しかし俯瞰的になること自体が一種のポーズになってもいるようです。
島田紳助の笑いのタネは圧倒的に「他人いじり」が基本です。自分のことはさておいて、とにかく客観的分析的にもの申す。あらかじめ大量に仕入れている情報から裏話を繰り出していく。奇特なレッテルをつける。
よって口は極端に悪いです。たまにちっとも笑えない罵詈雑言が繰り出される。
ただ、その裏返しとして他人に言及する際のバリエーションはたしかにあまりにも多彩です。語彙や表現が一様ではなく、引き出しは無限にさえ錯覚させられます。人生経験とお勉強の賜物なのだと思います。
そこを努力するかしないかがタレントとしての命運をわける分岐点なのだとすれば島田紳助は努力の人といえそうです。
自分のことになると、とたんに弱音をこぼします。
他人をいじるときは自分を大きく見せて、いざ自分に言及するとなると、とたんに小さく見せる。
勝負事には基本マジですが、口ほどにもないところもあります。「策士策に溺れる」がしっくりきます。
とはいえゲーム前の派手な「煽り」とか「フリオチ」という意味では、あれやこれやと煽るのは、少なくともおとなしく唯々諾々とゲームに従うよりは、圧倒的に正しいとも思います。
いろんな人に過酷なことをやらせます。
「申し訳ないことをしたかな」と反省の素振りもたまに見せます。
これまで 27 時間テレビで催されたような「ゆるキャラ着ぐるみ同士の相撲」みたいなもんのほうが個人的にはおもしろいんですけど、でも、そういうのは紳助流からすればお好みじゃないんでしょうね。なぜなら「ヌルい」から。
「ただバカをする」のは柄じゃないみたい。そのほうがおもしろい場合もあると思うんですけど、「紳助流」とは違うんでしょうね。もしかしたら「そこはさんまやたけしなど競合他社がひしめいている」という理由であえて嫌ってるのかも知れません。
島田紳助に対する視聴者の「好き嫌い」は人それぞれです。
好きと公言するよりも嫌いな人のほうが多いと思います。
でも「凄い」のはまちがいなく「凄い」んです。
打率が圧倒的です。空振りしない。
さんまやダウンタウンや今田耕司が出たときのやり合いは、紳助があえて一段ギア上げて本領発揮、という感がありました。
体力もあるようです。
筋肉ひけらかすのとかはどうでもいいんですが、さんまとの真夜中の超絶バトルトークの他、全体を通してものすごくしゃべりまくってました。08 年のさんま司会時に十分匹敵するほどです。
それでいて声が出なくなったりしないのです。これひそかにすごいと思うんですがどうでしょう。
休憩らしい休憩も取ってないらしいですし、実際にほとんど出ずっぱりでした。口では「疲れた」とかよく言ってるけど、表向きはたいして疲れも見せていない。負けず嫌いで弱みを見せたくないだけなのかも知れませんけど、にしても 53 歳にして驚異的な体力です。
ただ、「超笑顔パレード」という名前に反して、笑ってないのは紳助だけでした。
そのかわりいちばん周囲を笑わせてるのもたしかにこの人ではあるんです。
「感動」の閾値はおそろしく低いようです。感動、感動、涙、涙ととにかく連呼しています。
お高く見せかけてはいますがが、言葉が実はとてつもなく安いです。屁理屈。思いつき。
後半の三輪車レースのくだりについては、実況席から感動だの涙だのを言葉にすればするほど、どんどんそのレース風景が陳腐なものになっていくようでした。
そして、最後の最後、放送のラストカット。大団円です。
しかしこのとき島田紳助が何をやっていたのかというと、手を振って笑顔でテレビカメラに朗らかにバイバイを言うのでもなく、羞恥心や Pabo と抱き合うでもありませんでした。
これまで共演してきた中村仁美アナに「耳打ち」をしていたのです。
マイクに音声が拾われない程度に。
その声は視聴者には聞こえない。
昨年の明石家さんまは醤油瓶をもってカメラ目線で「しょうゆーこと!」でラストカットをシメました。
おもしろいのかつまらないのかは人によると思いますが、最後の最後にこのシーンというのは、もうばかばかしさを遥かに超越した爽快なダイナミズムさえ感じたものです。
すべてがここに収斂した
ところが紳助は、中村アナに対して、誰にも何もよくわからない「耳打ち」。
もしかしたら単純に「おつかれさん」だったのかも知れません。ダメ出しだったのかも知れません。「このあと、空いてるか…?」だったらお盛んなことであります。
しかし放送では音声が何もいっさい聞こえてはこなかった。
26 時間が経過しようという肝心のラストカットで、こんな場面を作りだしてしまう。
島田紳助のわけわかんなさを象徴する場面だと思いました。
品川は見た
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