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きょうの社説 2009年7月26日
◎新幹線の駅舎整備 北陸の新たなランドマークに
北陸新幹線金沢駅舎のデザイン等検討懇話会が初会合を開き、駅舎整備の議論が本格的
に始まった。新幹線開業へ向け、金沢駅舎がどんな姿になるかは県民、市民の最大の関心事といえ、県都、石川の玄関口として強い印象を与え、地域の人々が誇りや愛着を感じられるデザインが求められる。新幹線沿線ではすでに富山駅、新黒部駅、新高岡駅でコンセプト案が示されている。そ れぞれ北陸の新たなランドマークになりうる施設であり、鉄道建設・運輸施設整備支援機構には鉄道の一施設という発想を超え、地元の意向を最大限に生かした整備を望みたい。 東海道新幹線の駅舎群は1964年度に日本建築学会賞を受けている。これは標準設計 の手法が評価されたものだが、機能性や統一感が優先されたため、駅舎は金太郎飴のような印象が否めず、駅周辺のホテルや商業施設に埋没して存在感が薄い駅もある。赤字経営の国鉄時代はコストの制約もあったのだろうが、新幹線駅舎に個性や地域性を重視する傾向が強まったのはJRになってからである。 金沢駅舎の検討懇話会では、もてなしドームや鼓門との一体感を求める意見が出た。駅 東広場はすでに金沢の個性として定着し、駅舎がそれを際立たせる役割を担うのは当然である。屋上に駐車場を造らない意見が大勢を占めたのも妥当な方向といえる。駅舎内部の意匠も重要な要素であり、金沢という都市の魅力を駅舎にどのように反映させるかが今後の課題である。 富山駅は駅舎にガラスのファザード(外壁)を設け、新幹線と在来線ホームの屋根をつ なぐトップライト(天窓)を設置する案が盛り込まれた。新黒部駅は北アルプスや田園風景との調和、新高岡駅はアルミや銅など地場産業の素材を生かす案が示されている。 旅の第一印象が駅の雰囲気で決まるとすれば駅舎も旅の期待感や楽しみが広がる仕掛け がほしい。イメージの異なる個性的な駅舎が誕生すれば北陸新幹線の大きな魅力となろう。詳細な設計はこれからだが、鉄道の専門家による発想に委ねるだけでなく、地元からできる限り具体案を提示したい。
◎ゲリラ豪雨対策 「防災士」育成を急ぎたい
多数の死者・行方不明者を出した山口県の豪雨災害で、あらためて思い知らされたのは
、短時間に猛烈な雨をもたらす「ゲリラ豪雨」の怖さである。昨夏の浅野川水害のように、思わぬ所で突発的に起き、大被害をもたらす豪雨に対処するために、きめ細かな避難誘導計画を立てる必要がある。そこで急がれるのは、避難誘導のプロというべき「防災士」の育成である。石川県では 、6月に開いた県の養成講座の全受講生73人が新たに認定され、県内の認定者が全国でも上位クラスの計726人を数えるまでになった。しかし、これでも十分とはいえず、育成のピッチを上げる必要がある。特に富山県は6月末現在で165人にとどまっており、早急なテコ入れが必要だ。 能登半島地震、浅野川水害など、突発的な災害に対しては、地域の初動対応が救命・救 助活動とその後の復旧に大きな影響を与える。自主防災組織の中核を担う防災士を今後さらに育成し、日ごろの防災活動を通して地域住民がともに助け合う「共助意識」を培いたい。 防災士は阪神・淡路大震災を機に、NPO法人「日本防災士機構」が設けた資格で、災 害時には避難誘導や情報連絡などを担い、平時には防災意識の啓発や訓練などに取り組む。全国的に上位と下位に位置する石川県と富山県の認定者数の差は、石川県や金沢市など自治体による資格取得への支援の差とみられている。行政は地域の防災リーダーである防災士の育成をさらに進めてもらいたい。また、今後は若者、女性層にも認定者を増やしていきたい。 浅野川水害の際は、地元町会が長年取り組んできた訓練が、被害の把握や復旧活動に役 立った。また、能登半島地震では毎年更新されていた輪島市門前町の「高齢者等要援護者マップ」が、迅速な安否確認につながった。 このように、防災活動は不断の取り組みが欠かせず、正確な情報の把握と住民の連携が あってこそ備えが生きてくる。防災士は住民を後押しして、地域の「防災力」を高めてほしい。
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