新居・後日談
≪ジェイドとピオニー≫
「ジェイド。何がンなに嫌なんだよ。いーじゃねーかカーティス家くらい、ルークが跡継ぎでも」
「……陛下、あなた軍の名家をナメてますね……? ルークを養子にとって後継に据えるくらいなら、私のレプリカ作って継がせたほうがなんぼかマシです」
「おいおい……」
「……陛下、私とて以前の私ではありません。だから、言いたいことは分かります。……いくらレプリカとはいえ、それはもう、私自身ではありえない……。そうですね?」
「ちげーよ」
「え!? 違うんですか? だってネビリム先生のときはさんざんそう言って」
「……割といつも思うがな、ジェイド。お前はお前の知らないことに対して盲目すぎるよ! この場合問題なのは年齢だろ! 30代後半の人間が30代後半のレプリカを後継者にしてどーすんだ。次世代って言葉知ってるか?」
「……ああ!」
「ふう……(疲れた)」
「でも、まぁ、やっぱルークでも駄目でしょう。ルークとティアの子どもなら尚更です。ボケな上世間知らずな上空気読めないに決まってます」
「ああ、そうだな。それ全部お前にも当てはまるがな。……だが、そのためにガイラルディアがいるんじゃねぇの? ルークとティアとガイラルディア、三人で子育てすれば何とかなんだろ」
「ボケな上世間知らずな上空気読めない上にねちっこい人間が出来ますよ。何が解決ですか」
「だからそれお前じゃ……なんだこの空間。ツッコミ待ち?」
「三人くらいではカバーできないと言ってるんです」
「じゃ、プラスワン」
「……陛下、念のため言っときますが、陛下は駄目ですよ。あと私は断固拒否します」
「そうじゃなくってよ。ほら、牢にちょうどいるじゃん? サフィール」
「何を言ってるんだピオニー!!」
「え、ちょ……今のってお前にとって、俺が死んだと思ったとき並みの衝撃?」@ファンダム
「動揺した……」
「いや、うん、まぁいいか……」
≪ジェイドとネフリー≫
「でお兄さん、結局どうなったの? ルーク君」
「ガイに預けてありますよ。処遇が決まるまで」
「あら結局? それ、そこに永住じゃない?」
「まあ、それはそれで」
「……ケテルブルクに来てもらうっていうのは? お兄さん」
「ネフリー、慈善では解決しませんよ?」
「いいえ? ルーク君に手伝って貰えるなら、私も仕事が楽だわ。視察とか巡回とか他都市との連絡とか」
「要するにパシリですか」
「まあ、お兄さんパシリだなんて。その言葉が先年、既に差別用語として当市で正式登録されたのをご存知?」
「言葉だけなくして内実を残す、そういうのが一番タチ悪いんですよ? ネフリー」
「でもほら、自分がパシられてると気づかなければ問題ないんじゃないかしら」
「……本当は、私より性格悪くないですか?」
「まさか。お兄さんより性格悪いだなんて。そんな人、人類にいるんですか?」
「おおっとぉ……」
「はともかく、お兄さん。ルーク君の最大の使いどころといったら、そのフットワークの軽さじゃないかしら。グランツ総長を追いかけると言っては地殻からエルドラントまで赴き、アッシュ君を追いかけると言ってはパッセージリングからエルドラントの落とし穴まで落ちていく。その流れと勢いで、ついでに世界を救ったと言っても過言ではないわ」
「過言です」
「ともかく、行動力は欲しいと思います。そういうことよ」
「……分かりました」
「あら、ここに寄越してくれるの?」
「いいえ。あなたにだけは任せてはならない──、ということが分かりました。ルークはグランコクマで、私がパシります。そのほうが心に優しい」
「あらあらお兄さん。やっぱりあの子が可愛いのね」
「……今の流れでその結論に達したあなたを尊敬しますよ、ネフリー」
「あ、でも、アイデア料として、来月は貸して下さる? ルーク君」
「? 何でですか?」
「ちょっと来月、ロニール雪山の調査があって」
「…………もう、好きになさい。なんならティアもつけますよ」
「ありがとう。ついでに、なんならお兄さんもつけて下さらない? 強力な魔物が巣食ってたら、あの子たちだけじゃ心配ですもの」
「なぜ私が……」
「これは聞いた話だけれど……なんでも数年前まで、女性の姿をしたスーパー級のモンスターが、どうしたことか我が市の近くにいたらしいわね……。そのせいで魔物の生態系が変わったのかしら。恐ろしい話だわ……もしこれが人為によるものだとすると、その原因たる人物こそ悪魔だわ」
「…………」
「寒かったでしょうね……こんな長い間……先生……」
「……謹んで行って参ります」
心の狭い雪国組。ブラウザバックお願いします。