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国家の品格

2006-12-19 00:26:41 テーマ:ブログ

競争と格差社会について考えてみたいと思います。

ディズニー出身の私が出した結論は以下の通りです。

「競争至上主義に基づいた組織運営を長期間にわたり推進すると、企業も社会も必ず衰退する」ということです。

所得格差、教育格差、希望格差など格差もいろいろですが、ここでは職場内の総合的な実力格差(スキル格差)を取り上げてみたいと思います。

それではなぜ、格差が生まれるのでしょうか。簡単に言えば格差=差とは「自由競争」の結果といえるでしょう。自由に競争させれば結果に差が出ます。勝つ人と負ける人が生まれます。ゴルフを考えればその当たり前のことがよく分かります。

プロ選手の大会にはハンディキャップはありません。当然タイガー・ウッズのようなランキング上位者、つまり「強い者」が勝つ確率が高くなります。
大会で優勝すれば高額な賞金を手にすることができます。年間を通じて何回も優勝争いに加わる選手と、毎回予選落ちの選手では獲得賞金に差がつくことは当たり前のことです。端的に言えばこの差が所得格差になるということです。

さて、話を表題にある「国家の品格」(著者 藤原正彦 新潮新書)という本の内容に移します。

この本では、個人の行動基準や、日本という国家の持つべき品格は「教養から生まれた情緒(あわれみ)」「惻隠の情(思いやり)」など武士道の思考基盤に基づくべきであると説いています。そして、行き過ぎた競争主義や金銭至上主義は、産まれながら日本人のDNAに組み込まれている、この武士道の思考基盤をずたずたにしてしまう、と書かれています。

少しだけ本文を引用します。
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実力主義を本当に徹底し始めたらどうなるでしょうか。例えば、同僚は全員がライバルになります。ベテランは新入りにノウハウを絶対教えなくなる。教えたら最後、自分が追い落とされてしまいます。したがって、いつも敵に囲まれているという、非常に不安定な、穏やかな心では生きていけない社会になってしまうのです。
競争社会とか実力社会というのは、野放しにすると必要以上に浸透していきます。究極の競争社会、実力社会はケダモノの社会です。
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この本への賛否にもかなりの「格差」が生じていることは知っていますが、私自身は、著者のこのような指摘は概ね正しいものである、そう考えていることを申し上げておきます。

さて、上記の「非常に不安定な、穏やかな心でない環境」のなかで仕事をするということは、所属員にとってはどのような意味を持つのでしょうか。

不安であるということです。やるか、やられるかの環境では、安心して能力を発揮できないということです。

具体的には、所属員は良いアイディアを出さなくなります。出したら最後もって行かれる(盗まれる)可能性があるからです。
所属員同士のチームワークにもひびが入ります。チームワークでの仕事の成果が、個人の評価の対象になりにくいからです。

そして、何よりも問題であるのは「マインド」の問題です。安心して能力を発揮できない不安な環境では、「勝つこととは、他人を負かすこと」という欠乏マインドが中心になってしまいます。共有ではなく、奪い合いの結果として、資源を手に入れるという野蛮なマインドになります。
つまり、小さなパイの取り合いが始まるということです。世界は、こんなに大きく広いのにです。

グローバル(世界的)な競争に立ち向かっているはずが、気が付いてみれば競争相手は同じ職場の同僚・・・
衰退している商店街の経営者のパラダイムと同じです。競争相手は郊外の大型スーパーマーケットではなく、100メートル先の同業者・・・

このように、小さいパイを取り合うようなマインドでは、グローバルな競争には決して勝てません。

さらに危惧すべき大切なことがあります。
著者は「新入りにノウハウを絶対教えなくなる。」と書いていますが、ノウハウを教えなくなるのは新人に対してだけではなくなります。OJT制度自体が機能しなくなってしまうということです。

現在の上級職者の多くの方々は「仕事のノウハウやスキルは盗むもの」と教えられたことでしょう。徹底した競争主義とはそのような「盗み合う」職場環境へ逆行させてしまうものです。しかしながら、日進月歩の現代社会においては、そのような旧来型の教育システムは、すでに通用しないと思います。このようなOJT制度が機能しない職場では、所属員のスキルの低下やモチベーションの低下と正比例して、仕事の生産性も低下していくことでしょう。

さらに、今日の成熟した消費者は、企業の「教育水準」を容易に判断する「目」を持っています。また、耐震強度偽装問題、ライブドア問題などを経験した日本国民は、企業の「知性や知的水準」を鋭く見抜く「目」も養いつつあるのです。

長々と書いてしまったので、まとめますと、、、

所属員が安心して能力を発揮できない企業、職場内にノウハウや知識が蓄積されない企業においては、所属員のスキルの格差が拡大することにより、製品や提供するサービスなどの品質の低下を招く。

この状態が長く続くと企業全体の生産性の低下につながるだけでなく、企業にとって一番大切なもの「良い評判」を失ってしまう。

「良い評判」を失えば、顧客も離れていく。

このような理由から、「競争至上主義」に基づいた組織運営を長期間にわたり推進する企業が勝ち残っていくことはない、と私は判断しており、自らの顧客には競争至上主義的な人事制度や運営ルールは極力持ち込まないように心がけております。

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