日本カトリック司教団は昨年、「世界人権宣言」が60周年を迎えたことを記念して、12月10日、メッセージ「すべての人の人権を大切に」を発表した。これを受けて全国各地で3回にわたり、人権を啓発する司教シンポジウムを開いている。その第2回が7月11日、仙台・元寺小路教会で開かれ、200人余りが集まった。
3月の福岡に次いでの2回目。社会司教委員会委員長の見三明大司教(長崎教区)のあいさつの後、「世界人権宣言」と司教団メッセージについての説明があり、正義と平和協議会会長の松浦悟郎補佐司教(大阪教区)の司会で3司教が登壇した。
始めに難民移住移動者委員会委員長の谷大二司教(さいたま教区)が「今、出エジプト記を読み直す―移住労働者の視点から」と題し、特にモーセの「十戒」について話した。十戒は、民に向けて書かれたこと、解放者としての主のメッセージであること、苦しむ民の声を聞く神が発したものであること、が重要だと確認した後、第一戒から順に説明した。その上で、十戒はエジプトの民が苦しむ状況を綿密に分析し、その対策を考えたものだと総括した。現代の私たちも同様に、抑圧や人権侵害の原因を究明し、対策を立てることができると訴えた。
カリタスジャパン責任司教の菊地功司教(新潟教区)は「貧困と援助」と題し、話した。先進国が多くの富を得る分、貧しい国々は貧困の“悪循環”に入っており、この悪循環のどこかを援助によって断ち切ることで貧困克服を目指していることを説明。「世界人権宣言」にも適切な生活水準を守る権利が明記されており、国連が策定した「ミレニアム開発目標」が実行されることが重要であることも説明した。
さらに、教会公文書にも人権擁護を呼び掛ける部分は多々あり、「教会の中でも、私たちは人々のために働くよう促されている」と呼び掛けた。
地元、仙台教区の平賀徹夫司教(部落差別人権委員会委員長)は「いわれのない差別―ハンセン病問題を中心に」という主題で話した。「自分も差別するかもしれない存在」としての自覚が重要であり、ハンセン病の場合も患者たちは徹底的に排除されてきたが、教会は福音を社会にもたらすため、政治問題にもかかわらなければならない、と訴えた。
会場から、「小教区の活動は信心深い事柄に向かいがちだが、こうしたシンポジウムで司教らは信者に何を望むのか」という質問があり、菊地司教は次のように答えた。
「なぜ私たちがミサにあずかるかを深く学ぶほど、その恵みをどう生きるかが迫られる。司教たちが望むのは、私たちが生きる信仰を現実に意味のあるものとするために、さまざまな問題にかかわること。現実を知ることでより深い信仰となり、それが福音宣教にもつながるのです」
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