2009/03/01(日) 13:00〜15:00
「デザイナーがこれからの日本に対して成すべきこと」とは?
留学、社会人を経て独立を果たした義志のブランド。なぜ独自のコンセプトをもつ義志というブランドを立ち上げるにいたったのか?その秘話を公開。その他、地下足袋デザインを考えるワークショップも実施の充実の2時間!【講座内容】
■自己紹介
■独立について
■義志について
■地下足袋デザインワークショップ
■質問タイム
----------------------------------------
■自己紹介と今までの経歴
「一般の大学を卒業して、この業界に入るまでデザインやファッションの勉強などしたことがなかったんですね。まったくの素人のままで業界に入りました。自分の手持ちの資金をものづくりに費やして、それからは売れるか?売れないか?試し試しやりながら30才で独立しました。
独立するまでに3つの会社でサラリーマンをやりました。最初はサザビーという会社で海外営業をして、それ以降はテレビショッピングのバイヤーをしたり、経営コンサルなどやりながら会社の休みをつかって海外にゲリラ営業しにいってましたね。バーニーズやセレブリッチなどの有名セレクトショップをしらみつぶしに営業をして、その結果、何件か扱ってもらえるようになりました。
やっぱりブランドをはじめる当初から海外を意識してましたね。海外に対して日本を発信していきたいと思ってました。」
■独立について
「独立のきっかけはシアトルへの留学でした。留学先では世界中から生徒が集まってきて居て、顔を合わせると大体お国自慢が始まるんですね。とくにヨーロッパの人たちは自国に強い誇りをもっていました。逆に日本人はというと、言い訳から入っている。家が狭といか、物価が高いとか、謙虚な姿勢の表れだと思んですが、日本人は日本の良い所をを紹介できていないって思いました。
例えば、ヨーロッパの友人に日本を紹介するとき、明治神宮や浅草寺など歴史的なものを見せたり、寿司たべさせたり、飲み屋に連れて行ったりすると喜ばれます。日本の食文化や歴史は手放しで自慢できる部分ですよね。
でも、やっぱり同世代の人間はファッションに興味ある、渋谷・原宿連れて行っても、ギャルソンとかビームスとかあるけど、結局『これって日本人がデザインしたものなの?』って質問されたりするんです。
デザインの細かさを見ると日本ぽさは表現されているけど、とくに、プロデュースの部分では欧米至上主義になっている。
単純な話でいうとブランド名や商品名に使われている文字は英語・フランス語がプリントされ、日本語がまったく排除されている。基軸である言語が使われていない。日本語の存在価値が薄れているという危機感を持っているんですね。
例えば服のサイズもS、M、Lで表記されてます。ちなみに義志では大、中、小。
服屋はデザインやクオリティーで勝負すればいいのに、どうしてなぜわざわざ言語まで欧米に習ったものでないとカッコいいものがつくれないのか?疑問に思いますね。
日本に外国人を連れて行きたいと思えるブランドがない、日本が誇れる服を表現したいと思い、義志をつくりました。」
■義志について
「義志のデザイン方針は"和服の再興″をあげております。進化が止まってしまった着物に象徴されるような服飾文化をもう一回想像力を働かせてを進化させてあげる。これをテーマにさせてもらっております。そのためにはまず『かっこいい』と思ってもらわなくてはならならない、と。いきなり着物を作るのではなく、うちのブランドは日本の伝統と現在のファッションをつなぐ橋渡し的な役割を担っていきたいと思ってます。」
■アイテムに関して
(商品ラインナップをスライドで見ながらトーク)
【Tシャツに関して】
「袖口とすそに空手着に施されている補強縫製をいれてまして、重厚でさらに体のラインを出すようなセクシーなTシャツです。柄に関してもうちのブランドが提唱していることが凝縮されています。とくに柄は今の現代の都市文化の中で映える『日本的な柄ってどんなものだろう?』ということに思いをはせて創っていくってことを大事にしています。
その中でひとつケバさってのも大事にしていて、戦国時代の陣羽織とか旗印とか甲冑の仰々しいデザインに習っている部分が強いんですけど、本当に遠くから見ても誰が誰だかわかるわかりやすいデザインなんですね。
このデザインってわびさびとは相対的な感性だと思うんですよね。でもそれも何百年も前から日本人が持ち合わせていた日本人独特の感覚だと思うんですよね。原色ばりばり使って、とにかく目立てばいい!というデザイン。なにか人に元気をあたえられるような豪快な柄を目指したいなって思います。Tシャツはおかげ様でづっと続いてきていて柄も50を越えてきましたね。」
【パンツ類に関して】
「空手袴という商品は空手のパンツそのままです。ベルトを付けないで紐で縛るという日本的な着かたです。合理的でエコでもありますよね。コレひとつで機能が完結しているというのがこのパンツの売りです。うちのパンツは総じて太いものが多いんですけど、それは袴を着た日本人男性の像がイメージとしてあって、上がまとまっていて、下はドスン山型のイメージなんです。スーツとは正反対の形ですよね。」
【地下足袋に関して】
「世界最強の履物だと思うんですよ。持論なんですけど地下足袋というのは運動工学とか人体工学の発展の先に靴っていうアイテムが行き着く未来の形だと思っているんですね。
それを証明する現象としてはバスケ、テニス、バトミントンとか足裏のグリップが重要視されるスポーツのウェアの世界では今、足袋の形の靴下が結構出てきてます。そっちのほうが着地したときの感度が高いって事なんですね。高いパフォーマンスが求められうシーンで足袋のほうがよりいい結果がだせるってことなんです。
今靴下がそういう形になってきているんでど、それだけではまだ不十分だと思います。親指を自由解放してあげるとより「動物的な自由な動きができる」それを追求していきたいと思ってます。今の感覚を取り入れながらスニーカーに負けない履物を作っているのが義志足袋シリーズです。」
----------------------------------------
■地下足袋デザインワークショップ
全員が紙とペンを持ち、自分が思う地下足袋のデザインを全員で考えます。絵で表現しても、文章で表現してもOKで、無垢な商材なのでいろんなアイディアが生まれ、緒方氏が一枚一枚を読み込み、その中で面白いデザインのものを選択、講評をしてくれました。
作品1>足袋の指の部分を思いっきり開かせた足袋をデザインを強調したもの。
【講評】斬新だと思います。アバンギャルドな感じが出ていて面白いと思います。
作品2>もこもこ足袋女の子らしい川しいデザインだと思います。
【講評】最近はやりのムートンブーツを裏返した感じでいいですね。ぬいぐるみみたいでおもしろいですね。
【総評】そとから親指が分かれているとはわからないが、中ではわかれている。隠れ足袋とかもいいアイデアですね。
----------------------------------------
■質問タイム
【Q】今後は日本での生産も考えてますか?
【A】もちろん考えてます。でも今はベトナムで作っています。ベトナム人は日本人と職人気質が似ていて手がいいんですね。ベトナムでしか作れないものもあるです。
【Q】Tシャツの商品写真って全部しわ感があるのはなぜですか?
【A】かっこよくみせるために動きをだしているんですね。ベタな商品写真でもいいんですが、少しでも着ている感じが伝わるようにし工夫しています。
【Q】今後ストリートファッションだけでなく、スーツなどもつくりますか?
【A】スーツはうちの仕事ではないと思ってます。スーツにとって変わるなにかを作り出したいと思っております。多分それは着物だと思うんですよ。ただビジネスシーンでは今着物をきて仕事はできません。完全に淘汰されてしまっている。
これは徐々に時間をかけて着物でもビジネスできる環境がつくれれば最高ですけどね。
でもその前に自分達で普段着たいと思う着物を作ることが通過点だと思います。本当に着たいという着物を作らなければ生きた文化にはならないですからね。
----------------------------------------
来場者のコメント
* とても興味深い話をおききできたので面白かったです。
* 不要な英語は社会に確かに多くでてるとは思った、「日本」をあまり意識することがなかったのでいい経験になりました。
* 日本を元気にしたいという気持ちが僕にもあります。そして日本が誇るものを世界に発信していきたいです。
* 面白かったです。私は外国が好きでけど少し日本のことを考えるいいきっかけになりました。
・・・・・・・・・・・・・end.
STUDIO MASTER PROFILE
緒方義志/「義志」「小萩」デザイナー
上智大学卒業後、大手服飾雑貨メーカーに入社し、海外マーケティングとMDアシスタントを兼任。平成12年、会社勤めをしながら、服飾ブランド「義志」を旗揚げ。都市のスピード感と躍動感を重視しながら日本的服飾表現を追求する東京発信のデザイナーブランドとして企画生産を開始する。平成16年には女性向けブランド「小萩」を発表。平成17年に待望の路面店を原宿に構え、デザイナー、ミュージシャン、ダンサー、DJ、アスリート、格闘家など、個性とこだわりの強い顧客層から根強く支持されている。
また、ミス・ユニバース2006では日本代表の衣装を提供し、ナショナルコスチューム部門にて優勝。翌年のミス・ユニバース2007でも、異例の2年連続となるナショナルコスチュームデザイナーを務め、日本の服飾表現の可能性を世界に主張し、日本代表・森理世の優勝へ大きく貢献した。また、自動車業界に独自の地位を確立する光岡自動車の『大蛇(オロチ)』とパートナーシップを組み、同ブランドとのコラボレーションラインを発表。
平成20年にはアメリカ西海岸での販売を開始し、同年には「日本の新しい表現の担い手」の一人として米TIME誌で紹介されるなど、国外での注目度も上昇中。日本人ならではのデザインのあり方を追求することで、過度の欧米至上主義により本来の個性が薄められてしまった日本のデザイン界に対し独自の方法論を示しながら着実に新たな潮流を起こし続けている。
「義志」PCオフィシャルサイト>>http://www.yoshiyuki.jp/