アニメ「機動戦士ガンダム」の放送開始30周年を記念して、27日から5夜連続で約20時間にわたって一連のガンダム作品を特集する「ガンダム宇宙世紀大全」がNHK-BS2で放送される。シリーズ全体を未来の歴史絵巻としてとらえ、作品を「宇宙世紀(U.C.)」と呼ばれる劇中の年代順に紹介。インタビューや特集なども交えて、「ファーストガンダム」と呼ばれる最初の作品しか知らない人や、ガンダム初心者にも楽しめる内容になっている。企画したNHK編成局衛星放送センターの植原智幸・専任ディレクターに話を聞いた。
植原ディレクターがガンダムの番組を企画するのは3回目。4年前には「ファーストガンダム」の劇場版3部作の放送を中心にした9時間の特集をBS2で放送した。「その時は30歳代を中心に反響が多く、改めて作品の力を感じた」と振り返る。
今回は「サーガ(歴史物語)としての魅力」をテーマに企画した。ガンダムシリーズは、人類の人口が増えすぎたため、宇宙空間に建設された「スペースコロニー」に移民を始めた架空の未来が舞台。「宇宙世紀」と呼ばれる架空の歴史年表に沿って、各作品の物語は関連し合いながら展開する。「ファーストガンダムしか見たことがないという人も案外多いが、赤ん坊で登場していたミネバがその後、こうなって出てくるんだとか、サーガとしての面白さを知ってほしい。逆にのちの作品で入った若いファンには、本流であるファーストガンダムを見せたかった」と企画意図を語る。
全体の司会は土田晃之さんと喜屋武ちあきさん。声優の古谷徹さん、池田秀一さん、潘恵子さんのほか、中野腐女子シスターズや博多華丸・大吉、ダブルダッチらが出演する。
■第1夜 U.C.0079 27日午後9時からと深夜0時40分から
第1夜は最初の作品であるテレビ版「機動戦士ガンダム」(79~80年)のうち7話を放送。作品の前後に放送される「宇宙世紀の歴史が動いた」では、「ガンダムは全く知らない」という内藤啓史アナウンサーと、歴史学者にふんしたアニメ評論家の氷川竜介さんが架空の歴史番組風にガンダムの世界の魅力を語る。
注目は「ドキュメント・アニメ新世紀宣言」(午後10時ごろ)。81年の劇場版公開を前に開かれたイベント「アニメ新世紀宣言」とは何だったのかを関係者らの証言をもとに検証する。新宿東口に約1万5000人が集まり、当時、社会現象として新聞などでも報じられた。当時小学6年生で大学生らに交じって現場にいたという植原さんは「ガンダムの作品の意味を高らかに宣言したイベントで、アニメのイメージを変えたその後を象徴しているイベント」と語る。150枚の写真で会場の熱狂を再現する予定。
■第2夜 U.C.0079~0087 28日午後9時からと深夜0時40分から
放送するのは劇場版「機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポート」(98年)と劇場版「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」(92年)、劇場版「機動戦士ZガンダムI 星を継ぐ者」(05年)の3作品。アニメだけでなく、小説でも展開されているガンダムワールドの魅力を紹介するミニ番組「ガンダム小説のディープな世界」(午後9時55分ごろ)なども予定されている。
■第3夜 U.C.0087~0088 29日午後9時からと深夜0時40分から
劇場版「機動戦士Zガンダム2 恋人たち」(05年)と「機動戦士Zガンダム3 星の鼓動は愛」(06年)が放送される。この日のミニ番組はミノフスキー粒子やニュータイプなど、ファンでも分かりづらい言葉を解説する「検証!ガンダムの謎」(夜10時44分ごろ)など。
■第4夜 U.C.0088~0089 30日午後9時からと深夜0時40分から
取り上げる作品はテレビ版「機動戦士ガンダムZZ」(86~87年)から計7話。以前別の作品で出てきたキャラクターが再び登場する回を中心に選んだ。「ファンからは『お笑いガンダム』などと呼ばれ、他の作品とは確かに雰囲気が違うが、ZZにはZZの良さがある。登場人物が陽気で前向き。今回見直してみて、こういうガンダムもありだと改めて思った」と魅力を語る。この日の見どころはガンダムの生みの親、富野由悠季監督のこれまでの発言をまとめた「富野監督語録」(午後9時55分ごろ)。
■第5夜 U.C.0093~0153 31日午後9時から
放送される作品は劇場版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(88年)、テレビ版「機動戦士Vガンダム」(93~94年)から計3話。ほかに、「逆襲のシャア」から3年後の世界を描いた小説「機動戦士ガンダムUC」の連載を終えた福井晴敏さんを取材した「福井晴敏が語るガンダムUC」(午後11時4分ごろ)を放送する。アニメ化に向けたシナリオの打ち合わせにまでカメラが入っており、ほとんど公開されない制作の裏側をかいま見ることができる。
2009年7月24日