事件は時代を映す鏡ともいわれる。今度は年金にまつわる問題が表面化した。「年金たまご」と称するマルチ商法的な集金システムで、東京の健康食品販売会社が出資法違反の疑いで警察の家宅捜索を受けた。
健康食品を購入すると、「年金型ボーナス」を受け取ることができると勧誘したとされる。この会社は会員向けの資料で、公的年金について「将来的に先行き不安」とうたっていたという。
今後、実態解明が進められるが、年金に対する高齢者らの不安感を利用したとみられる。年金問題では社会保険庁のずさんな記録管理だけでなく、制度そのものについて国民の不信感は根強い。
2004年度の制度改革で、支払う保険料を段階的に引き上げる一方、給付水準は抑制されることになった。与党は少子高齢社会の中で年金制度を維持するために必要な措置とし、「100年安心の年金」と強調した。
だが、負担が増えるのに支給額は低下するわけで、10年先まで安心できる人がどれほどいるだろうか。支給開始年齢も徐々に先延ばしされている。国民の間で将来不安が募るのは当然だろう。
年金がらみの事件が起きないためにも抜本改革が必要だ。総選挙が事実上スタートしている。本当に安心できる改革案をどの党が示せるか。政治の責任といえる。