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【社会】

衆院選、一票の価値は「車1台分」 

2009年7月23日 08時58分

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 一票には、いくらの価値があるか。

 いろいろな計算方法があるだろう。その中で、慶応大の曽根泰教教授は「ハイブリッド車1台分ぐらいの価値」という。

 衆院選では勝った方のマニフェストが実現に向かう。マニフェストは「税金の使い道リスト」。リストに沿って税金が使われる。

 1年の日本の予算を約80兆円とする。衆院任期4年分で320兆円。これを有権者1億人で割ると1人当たり320万円が「一票の値段」という計算になる。

 3年か4年に一度、約300万円の買い物というと、確かに自動車を買い替えるかどうかのときの決断に近い。パンフレットを見比べ「A社の車か、B社か」と悩むのと同じぐらいの熟慮が有権者には必要だ。

 政党側には、有権者以上の努力が求められるのは言うまでもない。

 2003年、衆院選にマニフェストが導入されたころ、永田町、特に自民党で「マニフェスト」を口にすると、ただの目立ちたがり屋と受け止められた。今は違う。解散を前にした20日夜、麻生太郎首相は自民党本部に細田博之幹事長らを集め「国民が納得するマニフェストをつくる。野党との差別化が必要だ」と指示。民主党も党を挙げての策定作業が最終局面に入っている。マニフェストは「標準装備」になった。

 それは歓迎すべきことだが、一方でマニフェストを選挙に勝つ道具として考える空気が出てきた。他党に政策をつまみ食いされないために発表を遅らせる考え。党のマニフェストとは別に独自のものをつくろうという動き…。これらは、戦術優先で、有権者に選択肢を示そうという思いが欠けている。

 03年、民主党が初のマニフェストをつくった時、発表の会見時間が遅れた。治安対策の表現でもめたのだ。ある議員は「検挙率を上げる」と書くよう主張し、別の議員は「検挙率は結果であって、政党は約束できない」と反論した。今思うとこっけいともいえる議論だが、現在進行中のマニフェストづくりでは見つけにくい真剣さがあった。

 政党は税金の使い道を、まじめに分かりやすく書いたマニフェストをつくり、有権者は自動車を買うぐらいの重みを感じてマニフェストを吟味し、投票に行く。政権選択の選挙だからこそ、最低限求められていることだ。

(中日新聞)

 

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