国家によるインターネット規制に反対する「海賊党」が欧州で新たな政治勢力として注目されている。6月上旬の欧州議会選挙でスウェーデンの同党候補が初めて議席を獲得、ドイツでも9月実施の総選挙で連邦議会入りを目指し、選挙綱領が公表された。無党派層だった若い青年らがネット上の呼び掛けで組織され始めている。【ハンブルク(ドイツ北部)で小谷守彦】
党の名は、商業ソフトや音楽データの不法コピーを指す「海賊版」から来ている。海賊を自称することによって、ネットでの自由な情報交換を求めるとともに、商業データのコピーを私的利用のものも含めて犯罪扱いする法規制や国家による検閲的なネット監視に反対している。
スウェーデンで06年1月に同党は初めて発足し、ドイツ、フランス、米国などで相次いで結党された。スウェーデンでは欧州議会選挙で7・1%を獲得した。ドイツでも自然科学者やプログラマーなど理科系の知識層に人気で同選挙では0・9%を得票、名門工科大学のある南部カールスルーエでは2・2%の票を獲得した。
ザイペンブッシュ党首(40)によると、ドイツ海賊党は今春、国がネット上の児童ポルノ交換を強制阻止できる「インターネット封鎖法」の議会審議に反発。「児童ポルノ対策を口実に政府がネット規制に乗り出した」と主張して支持を広げた。また、児童ポルノ所持容疑で3月に家宅捜索を受けた与党・社会民主党のタウス連邦議員(56)が無罪を主張しつつ、海賊党に突然の入党を表明(議会では無所属に転籍)。同党はメディアの注目の的になった。スウェーデンでの躍進もあり党員数は過去1カ月で3倍の約2700人に拡大しているという。
タウス議員は毎日新聞の取材に応じ、「児童ポルノは入手したが、議会活動の調査のため、販売業者と接触する必要があった」と違法性を否定、次期総選挙には出馬せず海賊党の選挙顧問として政治活動を続ける考えを明らかにした。「総選挙で議席を獲得できるかどうかはともかく、中期的に海賊党は議会の新勢力になると確信している」と同党の将来性に期待を寄せた。
毎日新聞 2009年7月24日 東京朝刊