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シベリア抑留 墓参へ希望もたらす 遺族ら「遅すぎる資料発見」

7月24日7時57分配信 産経新聞

 【モスクワ=佐藤貴生】ロシアの国立軍事公文書館で、シベリアなど旧ソ連に抑留された約76万人分もの資料の存在が確認されたことで、「戦後最大の悲劇」ともいわれるシベリア抑留の全体像解明が進む期待が出てきた。とはいえ、戦後60年以上がたった現在でも、旧ソ連各地に眠りながら埋葬場所が特定できない抑留者は約2万1000人に上る。遺族の高齢化も進むなか、一貫して詳細な事実の公表を拒んできたソ連の非人道的な姿勢が改めて問われている。

 在ロシア日本大使館によると、抑留者に関する資料を整理した「カード」がロシア側に存在することは、以前から日本側も把握していた。今回の資料の発見は、墓参しようにも場所さえ分からない遺族にとって、久々に大きな希望をもたらすものといえる。

 ソ連で命を落とした抑留者の埋葬場所の特定は長い年月をへて、年々困難になっていた。日本人とロシア人を合同で埋葬している墓地があったり、もともと墓地だった場所に住宅が建設されたりしているためだ。

 日本の厚生労働省は、シベリア抑留者の総数を約56万人と推計しているが、60万人を超えるとの見方もあり、確たる総数は定かではない。今回見つかった資料は同一人物を重複して算定している可能性もあり、今後の精査が待たれる。

 貴重な資料の発見は吉報には違いないが、元抑留者の平均年齢は85歳を超え、抑留者の子供たちも高齢化が進んでいる。

 終戦直後にスパイ容疑でハルビンからソ連に連行され、モスクワ市内で銃殺、埋葬された満州電信電話会社政治部長、宇山禄郎さん=当時(34)=の長女、冬実さん(64)=静岡県掛川市=は資料発見の知らせを受け、「埋葬場所の特定をあきらめていたご遺族も多いので、一人でも多くの方の墓地が特定され、墓参できるようになることを願っている。しかし、資料の発見があまりにも遅い。抑留者の子供の世代もどんどん亡くなっている」と話した。

 「スターリンのソ連」の犯罪は、日ソ中立条約を破って対日参戦し、今に至るまで不法占拠している北方領土問題だけではない。もう一つの「人道に対する罪」であるシベリア抑留問題を風化させないためにも、日本政府は全容解明に向けてロシア側にさらなる協力を求めることが望まれている。

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最終更新:7月24日8時18分

産経新聞

 

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