被告が起訴内容を認めた比較的軽微な事件を迅速に審理する「即決裁判手続き」の違憲性が争われた刑事裁判の上告審判決で、最高裁第3小法廷(藤田宙靖=ときやす=裁判長)は14日、合憲とする初判断を示した。そのうえで業務上横領罪に問われた陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県)の元補給科長、宮地繁治被告(56)の上告を棄却した。懲役1年、執行猶予3年とした1、2審判決が確定する。
1審の即決裁判手続きは06年10月導入。被告と弁護人が同意すれば、原則として起訴から14日以内に初公判を開き、即日結審して直ちに判決を言い渡す。懲役・禁固刑は必ず執行猶予が付くが、判決が認定した事実の誤り(事実誤認)を理由とした控訴はできない。
1、2審判決によると、宮地被告は06年10月、勤務していた木更津駐屯地からパソコン1台(購入価格24万円)を自宅に持ち帰った。1審・千葉地裁木更津支部は即決裁判手続きを適用したが、その後、被告側は否認に転じ控訴。2審で主張を退けられ「事実誤認を理由とした控訴ができない即決裁判は、憲法が保障した裁判を受ける権利を侵害している」と上告した。
小法廷は「事実誤認を理由に控訴できると手続きを効率化する趣旨が損なわれる恐れがある」と指摘。手続きの適用を被告が選択でき、懲役・禁固の実刑が科されないことを挙げ、「控訴を制限した規定には、相応の合理的な理由がある」と結論付けた。【銭場裕司】
毎日新聞 2009年7月14日 12時56分(最終更新 7月14日 18時35分)
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