「衆院選「候補者A」かく闘わんとす」

衆院選「候補者A」かく闘わんとす

2009年7月24日(金)

第27話 4年ぶりに資金集めパーティー

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 それでもAは従来からの方針を守り、今回のパーティー券は、自らの秘書やHら地元の親しい支援者を通じて販売した。

 「商売でもやっている人でなければ、個人で政治家のパーティーに2万円を払うのは確かに大変ですよね」

出席した40代のサラリーマン男性は言う。男性がチケットを買ったのは、自身が応援している前県議から購入を頼まれたからだ。前県議は今回のパーティーの司会者である。

 こうした形で人集めしたパーティーの最終的な収支は、300万円ほどの黒字となった。券代を引き上げる一方、食事代など経費も抑えた結果である。100万円の黒字だった前回と比べれば、成功と言えるだろう。

購入者の多くは個人だが…

 「Aには、いつも泣かされます」
 そう苦笑しながら、Hもほっとした様子だった。

 東京と地元でそれぞれAの後援会長を務める企業経営者が、併せて60枚のパーティー券をまとめて購入した以外は、大半が一般の個人としての参加である。民主党は3年後、企業・団体の献金やパーティー券購入を全面禁止する方針を打ち出している。しかし、個人の献金にだけに頼るのは簡単なことではなさそうだ。

 こうして高額の政治資金パーティーが開催されるのも、選挙を始めとする政治活動に大きな金が必要だからだ。その金を工面するために、政治家が不透明なしがらみを持ってしまう。また、党が候補者に支給した選挙資金にしろ、私たちの税金の一部であることも忘れてはならない。

 衆院解散から投票日までの40日という期間は、戦後では最も長いものとなる。本連載では総選挙まで、資金面を始めとして“普通の”候補者たちが直面する問題を通じ、現在の政治が抱える課題について引き続き追っていく。





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著者プロフィール

出井 康博(いでい・やすひろ)

ジャーナリスト。
1965年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社入社、「ザ・ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」の客員研究員を経て、独立。主な著書に『松下政経塾とは何か』(新潮新書)、『年金夫婦の海外移住』(小学館)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社)などがある。また日経ビジネス2002年9月30日号コラム「ひと烈伝」でヨシダソースで有名な米ヨシダグループの吉田準輝会長を寄稿、現在「フォーサイト」(新潮社)で「2010年の開国・外国人労働者の現実と未来」を長期連載中。


このコラムについて

衆院選「候補者A」かく闘わんとす

ねじれ国会に、2代続けて首相の突然の辞任、そして総選挙。ざわつく国政に、テレビや新聞、そして週刊誌と政局関連の話題を取り上げているが、その当事者である代議士、そして代議士になろうとしている人たちは、いったい普段どんな生活をしているのかは意外と知られていない。本連載では、「地盤」「看板」そして「カバン」を持たない“フツー”の代議士や候補者の生活に焦点を当てることで、日本の政治はどのように作られるのか、そして現在の政治システムが抱える課題とは何かを浮かび上がらせていく。

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