それでもAは従来からの方針を守り、今回のパーティー券は、自らの秘書やHら地元の親しい支援者を通じて販売した。
「商売でもやっている人でなければ、個人で政治家のパーティーに2万円を払うのは確かに大変ですよね」
出席した40代のサラリーマン男性は言う。男性がチケットを買ったのは、自身が応援している前県議から購入を頼まれたからだ。前県議は今回のパーティーの司会者である。
こうした形で人集めしたパーティーの最終的な収支は、300万円ほどの黒字となった。券代を引き上げる一方、食事代など経費も抑えた結果である。100万円の黒字だった前回と比べれば、成功と言えるだろう。
購入者の多くは個人だが…
「Aには、いつも泣かされます」
そう苦笑しながら、Hもほっとした様子だった。
東京と地元でそれぞれAの後援会長を務める企業経営者が、併せて60枚のパーティー券をまとめて購入した以外は、大半が一般の個人としての参加である。民主党は3年後、企業・団体の献金やパーティー券購入を全面禁止する方針を打ち出している。しかし、個人の献金にだけに頼るのは簡単なことではなさそうだ。
こうして高額の政治資金パーティーが開催されるのも、選挙を始めとする政治活動に大きな金が必要だからだ。その金を工面するために、政治家が不透明なしがらみを持ってしまう。また、党が候補者に支給した選挙資金にしろ、私たちの税金の一部であることも忘れてはならない。
衆院解散から投票日までの40日という期間は、戦後では最も長いものとなる。本連載では総選挙まで、資金面を始めとして“普通の”候補者たちが直面する問題を通じ、現在の政治が抱える課題について引き続き追っていく。