パーティー当日の午後3時、会場となった地元ホテル――。Aの地元後援会で事務局長を務めるHに焦りの表情が浮かんでいた。そろそろパーティーが始まる時間だというのに、参加するはずの知り合いが現れない。
「やばいなあ…」
受付の椅子に100キロ近い巨体を沈め、Hがため息をついた。
Aとは、彼が初めて立候補した10年前に知り合った。毎朝1人で駅に立ち演説するAを見て、声をかけたのがきっかけだった。以降、同年代のAの活動を傍らで支え続けてきた。落下傘候補であるAにとっては、地元で生まれ育ったHは強い味方である。
「頼み事をしたことなど一度もありません。友人として、私が勝手に応援しているだけのことです」
Hは自営業者だが、商売の拠点は選挙区内にはない。根っからの親分肌で、地元の仲間を集めて異業種交流会を主催している。その会のメンバーが、Aの選挙ではポスター貼りやチラシ配布を手伝ってくれる。今回のパーティーにも、30人以上の仲間を誘っていた。
利害関係なく応援してくれるHのような存在は、Aでなくとも政治家にとっては理想的な支援者である。ただし、そうした存在は簡単には見つからない。
代金上げて、300万円の黒字
Aは今回、パーティー券の代金を前回の1万円から2万円に引き上げていた。
「4年ぶりのパーティー、しかも選挙前ということで、皆さんにご無理を申し上げました」
政治資金を、広く浅く集められれば理想的だろう。しかし、個人からの献金集めは簡単ではない。こうした経済事情ならばなおさらだ。別の難しさもある。
次の総選挙で政権交代が起きる可能性がある。仮にそれが実現すれば、Aも与党の一員として、野党議員時代とは比べものにならない権力を手にすることになる。そうした事情を見越して、今から見返りを求めてすり寄ってくる“支援者”も出てくる可能性が高い。
Aは怪しいと思う人は、極力関わらないように気をつけている。しかし、人付き合いに慎重になればなるほど、支援者集めが難しくなり、資金集めが厳しくなってしまう、というジレンマが起こるのだ。