「衆院選「候補者A」かく闘わんとす」

衆院選「候補者A」かく闘わんとす

2009年7月24日(金)

第27話 4年ぶりに資金集めパーティー

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 7月21日午後2時過ぎ、民主党代議士・Aが、証書筒と紙袋を抱えて衆院議員会館内にある事務所に戻ってきた。

 1時間ほど前、衆院本会議で解散が宣言された。正確に言えば、その時点でAも代議士ではなく「前代議士」となった。

 本会議の後、Aら民主党議員は徒歩で10分ほどの場所にある党本部に移動し、「公認証書授与式」に臨んだ。候補者たちは5階のホールで鳩山由紀夫代表から1人ずつ公認証書を手渡された後、6階の事務所まで階段を上っていく。そこである紙袋を受け取るためだ。

500万円は現金で

 紙袋には、100万円の束が5つ、つまり500万円が入っていた。民主党は選挙資金として公認候補に1000万円を支給する。公認証書授与式の後に手渡されたのは、その半額にあたる。次期総選挙で3度目の当選を目指すAにとっては、現金で選挙資金を支給されるのは、これが初めての経験だ。

公認証書と500万円の入った紙袋
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 「以前は、すべて銀行振込みでした。こうして持ってみると、意外と軽いですね」

 民主党が公認候補に現金を手渡しするようになったのは、小沢一郎・前代表が代表に就いた2006年以降のことだ。

 8月30日の投票日に向け、選挙戦は既に加熱している。衆院が解散された今、候補者が東京に残る意味はない。Aも他の候補者同様、すぐに地元へと戻る予定になっていたが、500万円の現金を持って新幹線で移動はできない。

 「まずは、銀行に寄ってから行きます」
 そう言って、Aは紙袋をバッグに入れて車に乗り込んだ。

 選挙には資金が必要だ。4年前の総選挙では、Aは12日間の選挙期間中だけで約900万円を使った。ポスターの印刷代など事前の政治活動を含めれば、費用は1500万円に達した。国会議員としては、最も金をかけていない部類との自負がある。

4年ぶりに資金集めパーティーを開催

 だが、それでも党から支給される資金だけでは足りない。そんな事情もあって、Aは衆院解散直前の週末、地元後援会の主催で政治資金パーティーを開いた。

 政治資金パーティーは、政治家個人の後援会、政党や派閥などが主催する。一部の有力政治家にとっては、個人や企業の献金にも増して大きな収入源だ。年に何度もパーティーを開き、1億円を超す収入を得る国会議員もいる。企業や団体がまとめてパーティー券を購入するからだ。

 しかし、Aのような無名の野党議員には縁遠い話だ。Aがパーティーを開くのは4年ぶりのこと。前回の収入は100万円ほどだった。パーティーをやれば、誰でも大きな資金を集められるわけではないのである。今回はどうだったのか。





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著者プロフィール

出井 康博(いでい・やすひろ)

ジャーナリスト。
1965年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社入社、「ザ・ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」の客員研究員を経て、独立。主な著書に『松下政経塾とは何か』(新潮新書)、『年金夫婦の海外移住』(小学館)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社)などがある。また日経ビジネス2002年9月30日号コラム「ひと烈伝」でヨシダソースで有名な米ヨシダグループの吉田準輝会長を寄稿、現在「フォーサイト」(新潮社)で「2010年の開国・外国人労働者の現実と未来」を長期連載中。


このコラムについて

衆院選「候補者A」かく闘わんとす

ねじれ国会に、2代続けて首相の突然の辞任、そして総選挙。ざわつく国政に、テレビや新聞、そして週刊誌と政局関連の話題を取り上げているが、その当事者である代議士、そして代議士になろうとしている人たちは、いったい普段どんな生活をしているのかは意外と知られていない。本連載では、「地盤」「看板」そして「カバン」を持たない“フツー”の代議士や候補者の生活に焦点を当てることで、日本の政治はどのように作られるのか、そして現在の政治システムが抱える課題とは何かを浮かび上がらせていく。

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