7月21日午後2時過ぎ、民主党代議士・Aが、証書筒と紙袋を抱えて衆院議員会館内にある事務所に戻ってきた。
1時間ほど前、衆院本会議で解散が宣言された。正確に言えば、その時点でAも代議士ではなく「前代議士」となった。
本会議の後、Aら民主党議員は徒歩で10分ほどの場所にある党本部に移動し、「公認証書授与式」に臨んだ。候補者たちは5階のホールで鳩山由紀夫代表から1人ずつ公認証書を手渡された後、6階の事務所まで階段を上っていく。そこである紙袋を受け取るためだ。
500万円は現金で
紙袋には、100万円の束が5つ、つまり500万円が入っていた。民主党は選挙資金として公認候補に1000万円を支給する。公認証書授与式の後に手渡されたのは、その半額にあたる。次期総選挙で3度目の当選を目指すAにとっては、現金で選挙資金を支給されるのは、これが初めての経験だ。
「以前は、すべて銀行振込みでした。こうして持ってみると、意外と軽いですね」
民主党が公認候補に現金を手渡しするようになったのは、小沢一郎・前代表が代表に就いた2006年以降のことだ。
8月30日の投票日に向け、選挙戦は既に加熱している。衆院が解散された今、候補者が東京に残る意味はない。Aも他の候補者同様、すぐに地元へと戻る予定になっていたが、500万円の現金を持って新幹線で移動はできない。
「まずは、銀行に寄ってから行きます」
そう言って、Aは紙袋をバッグに入れて車に乗り込んだ。
選挙には資金が必要だ。4年前の総選挙では、Aは12日間の選挙期間中だけで約900万円を使った。ポスターの印刷代など事前の政治活動を含めれば、費用は1500万円に達した。国会議員としては、最も金をかけていない部類との自負がある。
4年ぶりに資金集めパーティーを開催
だが、それでも党から支給される資金だけでは足りない。そんな事情もあって、Aは衆院解散直前の週末、地元後援会の主催で政治資金パーティーを開いた。
政治資金パーティーは、政治家個人の後援会、政党や派閥などが主催する。一部の有力政治家にとっては、個人や企業の献金にも増して大きな収入源だ。年に何度もパーティーを開き、1億円を超す収入を得る国会議員もいる。企業や団体がまとめてパーティー券を購入するからだ。
しかし、Aのような無名の野党議員には縁遠い話だ。Aがパーティーを開くのは4年ぶりのこと。前回の収入は100万円ほどだった。パーティーをやれば、誰でも大きな資金を集められるわけではないのである。今回はどうだったのか。