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「忍たま」地名 尼崎に萌え…若い女性ら訪問

「忍たま乱太郎」の登場人物名が付いた地を巡るファン。ご当地の神社にはキャラクターを描いた絵馬が並ぶ(兵庫県尼崎市の七松八幡神社で)=泉祥平撮影

 人気テレビアニメ「忍たま乱太郎」のキャラクターの名前と同じ地名を目当てに、若い女性らが次々に兵庫県尼崎市を訪れている。市内各地で、地名が記された公園などを訪れて銘板の写真を撮ったり、神社で絵馬にキャラクターを描いたり。地名に愛着を覚える〈地名()え〉はインターネット上でブームになっているとされ、降ってわいたような現象に、関係者は戸惑いながらも「新たな観光のきっかけになれば」と期待も高まっている。

 アニメは同市在住の尼子騒兵衛さんの漫画が原作。忍術学園で学ぶ忍者のタマゴたちの物語で、1993年からNHKで放映している。多くのキャラクターの名前に、猪名寺、下坂部、富松(とまつ)久々知(くくち)潮江(しおえ)、立花、七松(ななまつ)食満(けま)など市内の地名が使われている。

 同市七松町の七松八幡神社では昨年8月頃から、若い女性が数人で訪れ、神社名が記された数種類のお守りのうち、緑色だけを買っていくように。不思議に思った宮本聖士宮司が尋ねたところ、女性らは「忍たま」のファンで、キャラクターの「七松小平太」が緑の衣装を着ているため選んでいたとわかった。

 訪れるのは10歳代半ばから20歳代が中心。ファンがネット上のブログに訪問記を書き、広まったらしい。ネットを通じて知り合った数人で訪れるケースが多く、市内各地を歩いて「潮江公園」「七松小学校」など地名が書かれた道路標識やバス停、駅などの写真を撮って帰るという。

 同神社では今年に入り、1か月に約100人が訪れたこともあり、案内用に市内地図を配り始めた。社務所で数時間かけて絵馬にキャラクターを描くファンもいて、境内はこうした絵馬約100点がずらり。

 ネットで話題になっているのを知り、同神社を訪れた大阪市の高校1年の女子生徒(15)は「地図で地名を見ただけでも『ここから名付けたのか』と感動する。来られてうれしい」と興奮気味。10回以上訪れたという宝塚市の高校3年の女子生徒(17)も「尼崎の地名を聞くだけでテンションが上がる」と説明する。

 ファンの“聖地”になっている同神社は尼子さんに依頼し、5月から七松小平太を描いた絵馬を用意。宮本宮司は「いまだに『なぜ』という思いはあるが、普段は閑散とした神社に参拝し喜んでもらえるだけでうれしい」と話す。

 尼子さんは「尼崎は古い歴史を感じさせる地名が多く、キャラクターの名前で残せればと名付けた。尼崎に遠くから来てくれるのは新鮮で、いろんな場所に訪れてもらえれば」と期待していた。

 法政大社会学部の稲増龍夫教授(メディア文化論)の話「現実の実感が薄れてアニメに走る人が、そこの世界の重みが増すにつれ、リアルなものとの接点を求めたくなるのだろう。コスプレなどもその表れだが、かすかな手がかりで土地を巡るとは、ここまで来たかという思いだ」

2009年7月23日  読売新聞)
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