2009年7月24日0時7分
総選挙での争点は何か。「政権交代は景気後退」という駄じゃれはもう絶対にやめてもらいたい。「成長なくして未来なし」や「構造改革をとめてはならない」という中身のない話も、「官僚がすべてをだめにした」といった話も、ばらまき政策も、もうたくさんだ。政権選択と言うのなら、将来の日本社会の仕組みはいかにあるべきかを真剣に訴えるべきだ。自民党も民主党も、これまでの議論を聞く限り、その準備は不十分だと思う。
ここまで疲弊させてしまった社会で、商品やサービスの生産現場はもちろん、経済価値を生み出すすべての現場が活力を取り戻せるのか。しかも、そんな難題に、財政危機、地球環境の制約、少子化・高齢化という、百年に一度どころか、人類初の大きな変化の中で解決の方向を示せるのか。「産業資本主義を卒業して金融資本主義へ」また「現場の比較優位を生かせ」という議論も、一面の真理だが、小さな局面の議論に過ぎない。今の日本にはアクションにつなげられる大きな絵が必要である。
それは、オバマ米大統領の「グリーン・ニューディール」に匹敵する、現実的で大きな視野を持つ筋の通った哲学のことである。その意味では政権選択は大きな絵をめぐる闘いである。大きな絵がない社会では、いくばくかの金を積まれても子供を安心して産むことはできない。小さな刺激策を重ねても農業や自営業に後継者は生まれない。
局面の現実論のもと、細密画を描き続ける官僚にその能力は望めない。その能力のある人材は限られている。自民党政権の危機はすべての政党に共通であり、恐らく同様の危機は日本の多くの企業経営にも共通しているだろう。(龍)
◇
「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。