先週に続いて05年の前回衆院選の話を。衆院解散直後からテレビを中心に「郵政民営化」「刺客」一色になって1週間後、私は出演している大阪・毎日放送の情報番組「ちちんぷいぷい」のスタッフにこう提案したのだった。
「そろそろ刺客は飽きたって放送してみない?」
刺客といっても自民党の内紛話。総選挙は政党同士の争いのはずで、そもそも郵政ばかりが争点ではないと考えたからだ。番組では提案に乗ってくれて、当時はほとんど話題になっていなかった格差問題などを連日取り上げた。
今さら言い訳にもならない。結局、私たちは少数派だった。テレビ関係者によると、実際、当時は「刺客選挙区」さえ取り上げれば視聴率はぐんぐん上がったそうだ。
それに比べてどうだろう。例えば東国原英夫宮崎県知事の衆院選出馬問題。要請した自民党は「テレビで話題になる」と考えたはずだ。民主党からは「またマスコミは自民党に利用されている」との批判もあった。だが、確かに毎日ニュースにはなったもののメディアに露出すればするほど知事も自民党も評判を落としていったのではなかったか。そこに国民意識の変化を感じないわけにはいかない。
そう。5人も出馬して、連日メディアジャックしたのに、ちっとも盛り上がらなかった昨秋の自民党総裁選のころから、国民はやすやすと踊らず、実像を冷静に見つめ始めていたのだ。
1年前から書き続けている言葉をもう一度、記しておく。国民をなめたらいけないということだ。自民党の中には「私だけは違う」と勝手にマニフェストを作る動きがあるという。もう、そんな姑息(こそく)なまねはおよしなさい。
毎日新聞 2009年7月23日 0時08分
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