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マンション更新料「無効」 京都地裁初判断 全額返還を命令

 賃貸マンションの更新料や敷引(しきびき)の特約は消費者契約法に違反し無効だとして、京都府長岡京市の20代の男性会社員が、家主に支払った保証金と更新料計約47万円の返還を求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。辻本利雄裁判長は特約について「借り手の義務を不当に重くし、利益を一方的に害するもので無効」として、家主に全額返還を命じる判決を言い渡した。原告側代理人によると、同法に照らして更新料特約を無効とした判断は初めて。

 判決によると、男性は平成18年4月、家主と2年の賃貸借契約を締結。この際、保証金35万円のうち30万円は解約時に無条件で差し引く敷引特約と、契約延長の際は賃料(5万8千円)2カ月分の更新料を支払う条項がつけられた。原告は更新料支払い後の20年5月、契約を解除した。

 被告側は、更新料について「賃料の補充的要素がある」と妥当性を主張したが、辻本裁判長は「更新後の使用期間の長短にかかわらず一定額を支払う契約となっており、賃料の一部とは評価できない」と判断。「趣旨が不明瞭(めいりょう)で(全国的に)更新料が慣習化しているとも認められない」と指摘した。

 敷引特約も、「物件劣化の対価」などとする被告側の主張を「自然劣化の費用は賃料に含ませて回収すべき」などとして退けた。

「長年の慣習」全国で100万件以上

 京都や滋賀、首都圏などで慣行として広く定着し、全国で100万件以上の賃貸物件の契約にあるとされる更新料特約に、京都地裁は初めて「無効」とする判断を突き付けた。原告側は「画期的な判決。消費者保護の流れを加速させる」と意義を強調するが、不動産業界からは困惑の声が上がっている。

 更新料をめぐってはこれまで、京都地裁の別の判決(平成20年)や大津地裁判決(21年)などで「賃料の補充にあたる」として、妥当性が認められていた。しかし、今回の判決は完全に妥当性を否定。原告側代理人は「借り手に賃料の補充として支払う認識はほとんどない。それを賃料と主張するのは詭弁(きべん)だ」と指摘する。

 賃貸物件をめぐる慣行には、敷引特約なども無効とする判断が定着しつつある。消費者問題に詳しい増田尚弁護士(大阪弁護士会)は「賃借の対価は家賃だけでいいはずだというシンプルで基本に立ち返った判決」と評価する。

 一方、京都市内の賃貸仲介業者は「月々の家賃が安いほうが借りる側にはいいだろうし、更新料を支払う前に退去すれば得になる側面もある。昔からの慣習ですぐになくなるとは思わないが、影響は少なからずある」と困惑。被告側代理人は「十分な審理をせず、拙速な判決を出されたことは遺憾」とし、控訴を検討する構えもみせている。

 国土交通省が19年に実施した調査によると、更新料を徴収している業者は神奈川、千葉、東京、埼玉で90~60%を超え、今回訴訟の舞台となった京都では55%。大阪、兵庫ではゼロなど地域差が大きい。徴収する理由(複数回答)としては、半数の業者が「一時金収入」と「長年の慣習」を挙げた。

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