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わが町にも歴史あり・知られざる大阪:/127 愛染まつり 大阪市天王寺区 /大阪

 ◇夏を告げる「宝恵駕籠」 日本最古とも伝えられ--愛染堂勝鬘院

 生国魂(いくくにたま)神社は芸能と縁が深い。毎年9月には上方落語家が総出で「彦八まつり」が行われている。

 米沢彦八は上方落語の祖とされ、江戸時代中ごろ、生玉さんの境内で軽口噺(はなし)や、役者のものまねをする「しかた物真似」を演じていた。米沢彦八の功績を顕彰するため、90年に上方落語協会が「彦八の碑」を建立し、翌年から「彦八まつり」を開催している。

 上方落語には、生玉さんを舞台にした「蛸(たこ)坊主」という噺がある。生玉さんの東門前の蓮池近くにあった茶店が舞台。4人の旅僧が「精進料理を食わしてもらいたい」とやって来る。食べ終わってから、旅僧は「だしは何から取った」と主人に聞く。カツオだしと聞いて「精進の身にけしからん」と気色ばみ、居座ってしまう。修行僧とはいえ、やからだ。

 そこへ、粗末な身なりの坊さんが収めに入るが、4人は言うことを聞かない。坊さん、「蛸坊主めが!」とののしり、4人を蓮池に放り込む。「犬神家の一族」よろしく、池の中に逆さまに突き立った8本の足が並び、「それ、蛸坊主じゃ」--。

 前回、紹介した大阪薪能は8月11、12日開催。今月11、12日には「いくたま夏祭」がある。

    ◇

 夏祭りの季節が始まった。生玉さんの南にある愛染堂勝鬘院(あいぜんどうしょうまんいん)の「愛染まつり」が、6月30日から7月2日にかけて行われた。30日に宝恵駕籠(ほえかご)行列があると聞いて愛染堂へ行ってみたら、運良く遭遇した。

 近鉄大阪上本町駅から、3台のかごが練り歩いて来た。浴衣姿の12人の愛染娘と若い衆の掛け声が面白い。「愛染さんじゃ」「ほ~え~か~ご」「べっぴんさんじゃ」「ほ~え~か~ご」「商売繁盛」「ほ~え~か~ご」。愛染娘と若い衆が交互に声を掛ける。男は「ほ~え~か~ご」と決まっている。「べっぴんさんじゃ」が可愛い。「女の祭」を感じさせる。

 愛染堂に着くと、国の重要文化財に指定されている多宝塔前で「駕籠上げ」だ。おっさんカメラマンたちが放列を作って待ち構える中、愛染娘が1人ずつ、かごに乗り、若い衆に担ぎ上げられ1回転する。激しく揺すられるので、愛染娘は振り落とされまいとかごにしがみつきながらも、見物客に手を振って愛敬を振りまく。

 大阪の夏祭りは、この愛染まつりから始まって、住吉大社の祭で締めくくられるから、「あい(愛)すみ(住)ません」のシャレ言葉があるそうだ。聖徳太子が始めた日本最古の夏祭りとも伝えられる。

 「べっぴんさんじゃ」の掛け声について、山岡武明住職(35)と奥田聖応前住職(70)に尋ねると、「少なくとも昭和一ケタから、この掛け声です。芸者さんたちが『きれいになりたい』とお参りにこられることも多いし」とのこと。愛染さんは縁結びの御利益があるとされ、川口松太郎の「愛染かつら」のモチーフにもなった。

 江戸時代に始まった宝恵駕籠にはかつて、芸者さんが乗っていた。徳島の藍染め業者が主な信者で、そのだんな衆は大坂の色町で最も格が高かった新町で遊んでいたから、戦前までは新町の芸者。戦後は南地、昭和40年ごろからは今里新地と移り、ここ10年は愛染娘だけになったという。

 そんな歴史を聞くと、駕籠上げはどうも、だんな衆がひいきの芸者を自慢する美人合戦ではなかったかと想像してしまう。【松井宏員】

毎日新聞 2009年7月9日 地方版

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