THIS WEEK 政治

「学会票」ナシなら東京は全敗 首相も驚く衆院選予想データ

 自民党が惨敗した七月十二日の東京都議選。政界関係者をうならせたのは、与党にすさまじい逆風が吹き付ける中で、二十三人の候補者を全員当選させた公明党・創価学会の底力だ。いったん「十四日解散―八月八日衆院選」を決断した麻生太郎首相が、自民党の大島理森国対委員長の説得を受け入れ、「二十一日解散―八月三十日衆院選」に日程を変更した背景にも公明・学会の存在があった。

 公明党関係者が証言する。

「都議選当日の十二日深夜から十三日未明にかけ、太田昭宏代表や漆原良夫国対委員長が大島氏に『八月八日選挙は受け入れられない。うちの支持者は都議選の応援でクタクタ。間隔を一カ月以上あけてほしい。首相がどうしてもその日程で、と言うなら、わが党の選挙協力は期待しないでほしい』と申し入れたのです」

 大島氏は、公明党が麻生降ろしに加担しないことを条件に要望を受け入れ、十三日午前、細田博之幹事長と官邸に乗り込んだ。首相は「一週間も延ばしたら中川(秀直元幹事長)や武部(勤元幹事長)たちを抑えられなくなる」と難色を示したが、大島氏は「公明の協力がなければ衆院選は勝ち目がない。それでもいいんですか」と説き伏せた。

 首相説得に物を言ったのは、都議選結果を当てはめた衆院選シミュレーション。公明党の選挙協力があれば、都内の二十五選挙区で「十勝十五敗」に持ち込める。一方、協力が得られない場合は「〇勝二十五敗」。超楽観主義者の首相も沈黙せざるを得ないデータだった。

 公明党は約束を守り、都議選後の麻生降ろし政局で沈黙を保った。十四日の両院議員総会では中堅の上田勇衆院議員が「執行部は首相の進退問題について自民党に進言すべきだ」と退陣論を唱えたが、北側一雄幹事長は「今の発言はなかったことにする」と厳重な箝口令(かんこうれい)を敷いた。もっとも、公明党内でも麻生人気はどん底。「首相の応援演説は要らない」と拒否する声が圧倒的だ。執行部も、「自民党との連立は衆院選まで。その後は選挙結果をみて考える」という方針をひそかに確認している。

 公明党の取り込みを虎視眈々と狙うのは民主党の小沢一郎代表代行。太田氏の地元、東京十二区に自ら殴り込みをかける国替え構想を見送ったのもそのサインである。将来の民公連立をにらんだ戦術転換のようだ。


【関連記事】