「大相撲名古屋場所11日目」(22日、愛知県体育館)
今年たった2敗しかしていない横綱白鵬が敗れた。大関琴光喜に寄り切られ、痛恨の初黒星を喫した。10日目までは圧倒的な力の差を誇示してきたが、取組後に左中指突き指の治療を受けるなど、2場所ぶりの優勝へ暗雲がたれこめてきた。大関琴欧洲も千代大海のはたき込みを食らい、1敗に後退。全勝力士が消滅し、白鵬、琴欧洲、琴光喜が1敗で並んだ。また、元大関で西前頭13枚目の出島が9敗目を喫し、引退を表明した。
◇ ◇
10日間、盤石を誇ってきた足腰がもろくも崩れた。右四つから右を巻き替えられた白鵬はあっけなくもろ差しを許してしまう。反撃の手だてを見いだす間もなく寄り立てられて勝負あり。土俵下まで転がり落ちるぶざまな負けっぷりだった。
顔をしかめて支度部屋に引き揚げると、ため息をついた。「何もできないね。(琴光喜を応援する)名古屋の声援に負けちゃった」と表情は険しいままだ。今年に入って通算3敗目。圧倒的実力を誇ってきたことがウソのような完敗だった。
不安の兆候は朝から見えていた。2日連続でけいこ場に姿を見せず、ある付け人は「場所前半は顔を見せていたんですが」と心配顔。部屋付きの熊ケ谷親方(元幕内竹葉山)も「夜中の2時、3時まで部屋でビデオを見ている。寝ていないようだ」と表情を曇らせた。
生活リズムの崩れに加え、この日の取組で左手中指を突き指した。消炎剤をすり込み、包帯で人さし指と固定する処置を受けたが、契約トレーナーの執行稔氏は「大丈夫だとは思いますが、明日になるまでは分かりません」と慎重だった。
疲れはあるかと問われると「感じても言わない。ノーコメント」。3人が1敗で並ぶ展開についても「そういうことは聞かないで」とはぐらかした。大本命の失速で優勝争いが混迷を増してきた。