全国４７都道府県の教育委員会のうち、懲戒処分された教職員の名前を原則公表としているのが岡山など４県、免職や社会的影響の大きい事案は発表しているのが長崎など２６都府県あることがわかった。また、飲酒運転や管理職などに限定したり「公表することもある」などとしているところが秋田など４県ある。一方で、公表内容に氏名を含めていない教委も沖縄を含め１３道県あった。原則公表を決めているところでも、被害者のプライバシーなどを理由に例外を設けている。文部科学省の２００８年４月１日現在の調査で、１２月２５日発表されたもの。

　同省は、調査を受け今年１月、各教委に対し「可能な限り詳しい内容を公表する」よう求める通知を出したが、県教育庁の担当課は「目にしていない」と話している。

　懲戒免職された教職員の氏名を公表している長崎県教委は、不祥事が続いたため０７年に公表基準を設けたという。不祥事防止のため、氏名公表だけでなく、小中高校の教職員向けに、「不祥事防止のための事例集」を作成配布し、注意喚起している。

　担当者は「（教職員名が公表されることで）児童・生徒に動揺がないように、校長に話したり、スクールカウンセラーに対応してもらうことにしている。現場からの反発も特にない」とし「自分がした行為を自分でかぶるのは当然。また、県民への説明責任を果たすための公表」と説明している。

　岡山県教育庁は、昨年５月に「原則公表」とした公表基準を作成し、被害者の人権に配慮する必要がある場合など例外もあるが、原則公表を実行しているという。「１年に１０件程度発表している。特に問題などはない」としている。

「基準不明確」「説明責任は」
疑問示す関係者

　懲戒処分にした職員名の公表をめぐり、県教育庁の判断がゆらいでいる。１６日には、一度公表した氏名を「適切でなかった」と断言した。関係者は、判断基準や説明責任などの問題を指摘している。

　沖縄国際大非常勤講師で情報公開法などが専門の真栄城満喜子さんは、「県情報公開条例に基づけば、公務員の氏名は公開されるべきだ。県教育庁の要領は、氏名を非公表とする根拠が不明確。条例との関係を踏まえた上で要領は定められるべきで、条例に沿わない要領に基づいて公表しないのなら、県民に対する説明責任をどう果たすのだろうか」と疑問を示した。

　県ＰＴＡ連合会の大田守会長は「公表か非公表かの基準がわからないのが問題。また今後、非公表と決めるなら、県民が納得できるように非公表の理由を説明する責任があるのではないか。どんな基準を設けるのか、いろいろな人の意見を聞いて、決めたらどうだろう」と指摘した。

　５０代の小学校教諭は「教職員だからと実名が公表されないのは公平ではないが、子どもにとって『正義』がいいか、というと必ずしもそうではないと思う。今回県教育庁が『実名』と『匿名』を分けたこと、説明や対応がまずかったことはミス」と話した。