脳性まひ回避の可能性は明言せず
7月23日に開かれた日本医療機能評価機構の原因分析委員会の第6回会合では、分娩に関連した脳性まひの発症の原因分析をまとめた報告書案について意見交換が行われた。この中で、前回の会合で争点となっていた脳性まひ回避の可能性の記載については、明言を避けることで決着。責任追及を懸念する医療者らに配慮する形になった。
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岡井崇委員長(日本産科婦人科学会常務理事)は会合の冒頭、脳性まひ回避の可能性の記載について、現在、日本内科学会などが実施している「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を参考にすることを提案。
同モデル事業の「評価結果報告書」のマニュアルでは、「もし何々があったら何々が生じなかったはず」といった結果を知った上で診療行為を振り返って評価することについて、「将来への改善に向けての必要な提案は再発防止への提言の章で述べられるべきもの」としている。
「再発防止への提言」は、「どうすれば死亡を回避することができたのかという視点での評価」としており、結果を知った上で臨床経過を振り返り、死亡を回避できる可能性をすべて考え、実際に行われた診療行為を勘案してできる限り提言するとしている。
岡井氏の提案に対して委員からは、「提言した内容が裁判の時の資料として利用されていくことに懸念がある。思い切った報告書を書きづらくなる」などの意見が出た。岡井氏は「裁判に訴える権利は止められない」と強調。ある程度の期間、訴訟は避けられないとの見方を示しながらも、司法関係者の制度への理解が進み、「ある程度の常識的な判断をしてくれるようになってくれればいい」との期待感を表明し、訴訟も収束していくのではないかとした。
会合では、前回の模擬部会で示された原因分析報告書の原案と、この提案を踏まえた案が提示された。脳性まひ回避の可能性の記載について、原案では「胎児機能不全と診断され、吸引分娩とクリステレル胎児圧出法で児が脳性まひとなったことを考えると、胎児機能不全と診断された午前5時10分、もしくは胎児心拍数の回復が見られなくなった午前5時30分以前に速やかに帝王切開によって児が摘出されていたら、脳性まひは回避できた可能性があると考えられる」と明記していた。
しかし、この日提出された案では、「当該分娩機関での診療行為の安全性向上に当たり、以下の点を考慮する必要がある」として、「吸引分娩で児の摘出が困難な場合には、早期に鉗子分娩か帝王切開に切り替える方がよい」「吸引分娩とクリステレル胎児圧出法の併用は、胎児への負荷を考慮すると、1、2回の施行で児を摘出できると判断された場合にのみ行うべきである」など、「提言」の形に修正されていた。
更新:2009/07/23 23:20 キャリアブレイン
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