原因分析報告書案、大筋で固まる―産科医療補償制度
日本医療機能評価機構の「産科医療補償制度原因分析委員会」(委員長=岡井崇・昭和大医学部産婦人科教授)は7月23日、第6回会合を開き、仮想事例を基に事務局が作成し、模擬部会で検討してきた原因分析報告書案を大筋で固めた。同案は、同委員会で審議するための報告書を作成する「原因分析委員会部会」の委員を対象にした説明会で資料として用いられる。説明会は9月に開かれる予定。【関連記事】
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この日事務局が示した報告書案は、▽事例の概要▽脳性まひ発症の原因▽臨床経過に関する医学的評価▽今後の産科医療向上のために検討すべき事項▽関連資料−などで構成されており、関連資料では医学用語の解説などを記載している。
事務局は報告書案のほか、模擬部会での審議の要約や報告書の原案などを示し、修正個所の確認を行った。これらの資料は、部会の委員を対象に9月に開かれる説明会で、報告書作成の参考“教材”として用いられる。
会合では、分娩機関から提出されるカルテなどの記載に改ざんがあった場合の対応などについて議論が行われた。
弁護士の鈴木利廣委員は、「改ざんというよりは後日記載。後日記載が問題になる点は、分析にとって極めて重要なところについて、『なぜここだけ行間にこんなにいっぱい書いてあるのか』ということがある」とし、原因分析委員会の対応としては、「(報告書の)提言の中に付記する程度のことはあり得るかもしれないが、カルテの後日記載と原因分析はかかわりのある部分はないと思う」と述べた。ただ、「後日記載が明らかに出るケースは、標準逸脱が極めて大きい場合に、それを覆い隠そうとしてやるという動機付けがある。後日記載だけを調整委員会で問題にするのではなく、重大な過失があるような事案にこそまさしく、そういうものがくっついて回ることが多いので、その中でやっていけばいいのではないか」とし、「重大な過失」につながる可能性がある場合は、医療訴訟に精通した弁護士らで構成され、分娩機関との間の補償などについての調整を行う調整委員会で対応することを提案した。
議論を受け岡井委員長は、改ざんを疑い、調べることは、原因分析委員会の役割ではないとした上で、「明らかにおかしいことが見つかった場合は、部会から本委員会に上げてもらう。本委員会で審議し、難しい場合は分娩機関に問い合わせもする。原因分析での結論は調整委員会に上げ、そこで対応するということでいいのではないか」と述べた。
また、報告書の書き方について、「分かりやすさ」と「報告書としての厳密性」をめぐっても議論となった。岡井委員長は、「医学用語それぞれに括弧で説明を入れるのはやめ、分かりやすい説明を読みやすいところに入れていく。難しい用語については、簡単に説明を付ける」とまとめ、説明をどこに入れるかなどについては今後の検討が必要との考えを示した。
次回の会合は9月4日に開かれ、報告書に記載する用語などについて審議する。事務局によると、補償申請書類の受け付けは7月から始まっているが、現時点で申請はないという。原因分析委員会部会の審議は早ければ11月に、同委員会での審議は12月に行われる見通し。
更新:2009/07/23 22:39 キャリアブレイン
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