というわけで、本誌が取り上げてきた代表的な作品をご紹介しつつ、ベテラン読者のみなさんに昔を懐かしんでもらったり、若い読者のみなさんに歴史の一端に触れていただいたりできればと思うわけですが、記念すべき第1回目にご紹介する作品は、やっぱアレかな……創刊号、創刊2号と続けて表紙と巻頭を飾ったアレ――『宇宙戦艦ヤマト』。誌面に沿って正確にいうならば、劇場版『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』です。
『ヤマト』に関しては、「アニメブームの火付け役となった」的説明がつきものです。1974年にTV放映された第1作『宇宙戦艦ヤマト』は、視聴率の不調で打ち切りになってしまいました。ところが、その後の再放送や熱心なファンの自主上映会などでじわじわと浸透し、1977年に劇場版として公開されるや爆発的なヒットを記録し、アニメブームと呼ばれるに至りました。
初のTVアニメ『鉄腕アトム』が1963年にスタートしてから10余年。高校生になっても、大学生になっても、社会人になってもアニメを観続けていた、かつての子供たちの存在に、世間が気づいたともいえます。「全国各地にファンクラブ」「劇場に早朝から長蛇の列」「イベントで声優に黄色い声援」といった派手な現象が多かったのも一因でしょう。また、「人類愛」というテーマを大上段に構えてフェイントもかけずに振り降ろすようなストーリーも重要です。そこには、当時の若者が「この作品は子供向けではなく、我らのために作られているのだ」と胸を張って主張できる、ある種の「わかりやすさ」があったと思います。
そんな感じで、盛り上がり最高潮の1978年に『さらば宇宙戦艦ヤマト』は公開されます。いうまでもなく、大ヒットです。
タイトルからわかる通り、この劇場版は当初、最後のヤマトの姿を描くはずでした。愛する人々や故郷の星を守るため、次々と命を散らしていく若きヤマトの乗組員たちの姿に、多くのファンが落涙しました(このあたりの描写は、後に「軍国主義的である」ともいわれ波紋を巻き起こしますが、非常に胸が熱くなる感動的シーンなのは確かです。いや、感動的だからこそ問題だっちゅー話もあるわけですが……)。ラスト、主人公・古代進が恋人・森雪の亡骸を抱き、ひとりヤマトを駆って敵の超巨大戦艦に突撃していくシーンでは、スクリーンに花束を手向けるファンまでいたそうです――。
ですが、その後の『ヤマト』の「航海」は、決して幸せとはいえませんでした。『さらば』と同年にスタートしたTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマトII』は、ほぼ同じストーリーを辿りつつ結末が180度回頭、乗組員のほとんどが生き残り、ヤマトも健在となり、必然として次々と続編が作られていき、『さらば』に号泣したファンは「あの涙はなんだったんだ!?」的気分に陥り……以下略。結局、『新たなる旅立ち』『ヤマトIII』『ヤマトよ永遠に』と続いていく以降のシリーズは、個々の内容云々とは違う部分で、ファンにとっては愛憎半ばするアンビバレントな作品にならざるを得なかったのです。
当時のファンが『ヤマト』を語るときにはいつも、苦笑いとともに「若気の至り」という言葉がつきまといます。今にして思えば、日本のアニメ文化は、ある種の問題作とともにスタートしていた――というのは、言い過ぎでしょうか?
さて、創刊当初からアニメの制作スタッフに焦点を当ててきた「アニメージュ」ですが、この『ヤマト』から、いわば最初のスターとも言うべきクリエイターが登場します。次回は、その人の作品について書いてみようと思います。
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