COLUMN
やっぱり、この作品に触れないわけにはいかないですよね……というわけで、『機動戦士ガンダム』です。アニメのみならず、広い意味での日本の文化史のなかに大きな痕跡を残したといっても過言ではないこの作品を、はたしてアニメージュはリアルタイムでどんな風に取り上げていたのでしょう?
今やアニメという枠も越え、ひとつのジャンル/産業として深く根を下ろしている『機動戦士ガンダム』。それは、たとえば「ガンダム芸人」なんて言葉がひとり歩きして成立してしまうことからも明かでしょう。そんな作品について、今さらくどくどと語るのも芸がない。ということで今回はちょっと趣向を変えて、ガンダム本放送放映時期の本誌記事を紹介したいと思います。 『ガンダム』がアニメージュの誌面に初めて登場するのは、1979年4月号。「翔んで翔んで春にダッシュ」という時代を偲ばせるタイトルの新番組特集内の一本として、比較的ひっそりと紹介されました。放映開始とともに毎月2〜3ページの特集が掲載され、初表紙は1979年9月号。以降、毎号のように富野由悠季(当時は「喜幸」)監督のインタビューやコメントが掲載され、特集分量も増えていきます。 1979年12月号(2度目の表紙の号)の巻頭12ページの特集で、富野監督が67個の質問に答えるという記事があります。第32話まで放映され、そろそろクライマックスに突入にようとしているタイミングで掲載されているこの記事は、色々な意味で当時の空気を如実に伝えてくれます。 以下、いくつか紹介すると(●が質問、○が監督の答え。なお、あくまで富野監督の1979年当時のコメントであることを強調しておきます)…… ●アムロに新しい恋人はできますか!? ○できますけど、すぐ死にます。ララァという名前です……(以下略)。 *監督自ら、思いっ切りネタバレしてます。今、こんな記事が載ったら大変なことになります。 ●シャアは最後まで生きのびることができますか? ○いまのところ、最後で、たぶん死にますとしかいえません。 *思いっ切りネタバレその2。富野監督、当初はシャアを殺すつもりだったようですね。実際には、TV版では生死不明のように描写された後に、劇場版『めぐりあい宇宙』で生存をほのめかす新規カットが追加、やがて『Zガンダム』から『逆襲のシャア』に至るシャアとアムロの物語が紡がれていくことになります。 ●セイラのヌードはでますか。 ○出ます。2カット、総秒数にして6秒くらい。はじめの4秒は入浴シーンのつもりです。 *欲望に忠実な質問、それに生真面目に答える監督。いいやりとりです。 ●シャアとガルマはホモ? ○ウソです。いっさい、そんなことはありません。まだ若いんだもの(笑)。 *聞く方も聞く方だ……という質問もしっかりと受け止め、答えて下さる――1〜2度、取材に同席させていただいた筆者の個人的印象ですが、富野監督はそういう方でした。 良くも悪くもおおらかな雰囲気。そして今と変わらぬ富野監督。本放送当時の『ガンダム』の受け取られ方、そして当時のアニメ雑誌の雰囲気が、多少なりとも感じていただけたでしょうか? 本放送は不人気で打ち切り、その後再放送と劇場版でメガブレイクというサクセスストーリーとともに語られる『ガンダム』。ですがこうした記事から、少なくともコアなアニメファン、そしてアニメ雑誌は、この作品に特別な注意を払っていたことがうかがえます。その下地があってこその、その後のブレイクだったといえるでしょう。