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マニアにも一般層にも受け入れられた、アニメ版『うる星やつら』――それは、押井守という映像作家の分岐点でした。

編集(マ)の『アニメージュ』が愛したアニメ
「どうせオレのページはいつも、カラー4色でもテキストで埋め尽くされてますよ」とぼやいているかどうかはヒミツだが、そんな編集(マ)がアニメージュ誌面を飾ったアニメを分析すると……。
第7回 暴走の向こう側の世界――
         『うる星やつら』その2、そして『天使のたまご』 2007.12.25


 承前(前回を読んでない人は読んでね)。

 若いスタッフのほとばしるエネルギーでファンを魅了しつつ、暴走を続けたアニメ版『うる星やつら』。作品の人気とともに、押井守の感性もまた、徐々に突出していきます。そして、『うる星やつら』と「押井守」の緊張関係が最高度に高まったとき、アニメ史に残る傑作が生まれます。
 劇場版『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』です。

 1984年に公開されたこの作品には、押井守の「すべて」があったように思います。基本フォーマットとしてのドタバタコメディ、日常と非日常が入り乱れる不条理、夢と現実の境界があいまいになる観念論的世界、衒学的な台詞回し、ミリタリー趣味……。そう、今もなお押井守の作品で描かれ続けている事々が、この映画のなかには詰め込まれていました。
 それら押井守個人の嗜好/志向(美しい言葉で語るなら"作家性"、ありていに言えば"趣味")が『うる星やつら』という作品のなかで炸裂し、強烈な先鋭性と万人を楽しませ得る大衆性が同居した、ある種の奇跡のようなフィルムが生まれたのです(まだ観てないという人、ウソじゃないから絶対観た方がいいよ)。

 でも、奇跡というのは長くは続かないものなのです。
 『うる星やつら』という作品の“作品性”や“キャラクター性”を押井守が最大限に拡張し、逸脱するギリギリのところまでその世界を押し広げたことで、『ビューティフル・ドリーマー』は傑作となりました。つまり、『ビューティフル・ドリーマー』にとって『うる星やつら』という作品世界は、必要不可欠なものだったのです。
 しかし、原作コミックスとはあまりにかけはなれたその内容を見て、観客は思い始めたのです――ひょっとすると、これはもはや『うる星やつら』ではないのではないだろうか……。
 そして、『ビューティフル・ドリーマー』とその公開直後に放映されたTV版127話「死闘!あたるVS面堂軍団!!」を最後に、押井守は『うる星やつら』のチーフディレクターの座を去るのです――。

 『うる星やつら』を通して押井守の才能を紹介し続けてきたアニメージュは、『うる星やつら』以降も、押井作品を追い続けます。次回作の『ダロス』(1983年〜)も、「初のOVA作品」という形態の新しさもあって、かなり頻繁に特集されました。あるいは84年10月号では、幻の企画となった「押井版『ルパン三世』」について19ページの大特集が組まれています。

 1985年には原案・監督・脚本を手掛けたOVA『天使のたまご』が発表されます。アニメージュでは85年6月号で製作開始の第一報が掲載され、以降毎号のように製作過程が紹介され、同年10月号では表紙にもなりました。OVA作品が表紙――これは、現在ではもちろんのこと、当時としてもかなり珍しいケースです。
 『天使のたまご』は聖書の「ノアの方舟」をモチーフにしており、「『うる星やつら』の押井守」を期待したファンをすべて置き去りにするような、難解なイメージの溢れた前衛的かつ観念的な作品でした。そしてこれ以降、ことの真偽はともあれ、「押井守=難解」というイメージが定着することになるのです。さらには、『天使のたまご』にも色濃い「胡蝶の夢」的観念論の世界は、後の『イノセンス』(2004年)にいたるまで、押井守のメインモチーフとして作品世界の底に横たわり続けるのです。

 さて、『天使のたまご』を紹介するアニメージュの記事のなかで、実は押井監督のほかにもう一人のクリエイターの名前が浮上してきます。そしてその人が深く関わったある作品が、規模は少し小さいけれど、ある着実な足跡をアニメージュ誌上に、そして当時のアニメファンの記憶に刻みます。
 次回は、そんな作品をとりあげようかと何となく思ったりします。 さて、どの作品かわかりますか?

 

 
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