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それは人気原作のアニメ化ではないし、けっして“大作”とよべるような作品でもありませんでした。でも、その詩情溢れる世界は強い存在感を示し、多くのファンに愛されました――。

編集(マ)の『アニメージュ』が愛したアニメ
「どうせオレのページはいつも、カラー4色でもテキストで埋め尽くされてますよ」とぼやいているかどうかはヒミツだが、そんな編集(マ)がアニメージュ誌面を飾ったアニメを分析すると……。
第8回 それを「萌え」とは呼ばなかったけれど――『とんがり帽子のメモル』  2008.01.25


 前回紹介した『天使のたまご』がアニメージュの表紙を飾った1985年10月号で、表紙イラストの原画を手掛けたのは名倉靖博さんでした。
 名倉さんは『天使のたまご』において、作画監督として天野喜孝さんによる繊細な原案イラストをアニメ化する上で重要な役割をはたし、押井監督をして「この作品の救世主」と言わしめた名アニメーターで、表紙に合わせて掲載された『天使のたまご』関連の特集が「名倉靖博の世界」と題されるほどの、注目のクリエイターでした。

 さて、そんな名倉さんの名前をアニメファンに強く印象づけた作品が、『天使のたまご』を遡ること約1年前に登場します。
 その作品の題名は、『とんがり帽子のメモル』。
 身長約10センチでとんがり帽子を被ったリルル星人のメモルと、病弱で孤独な女の子・マリエルの友情を描いたファンタジーです。名倉さんはキャラクターデザイン(当時のクレジットは「キャラクター原案」)を担当しています。
 元気でおしゃまなメモルとの交流を通して、失い欠けた希望を取り戻していくマリエル――シンプルなストーリーと緻密な心情描写や絵本のように詩的な語り口、そして繊細なタッチビジュアル。『メモル』の暖かくて、優しくて、そしてどこか切なく郷愁を誘うその作品世界は、斬新で、多くのファンの心を虜にしました。

 そしてアニメージュもまた、この作品に熱い眼差しを向けました。
 1984年7月号では土田勇さんのイラストが表紙を飾ります。
 土田さんは美術デザインとして、名倉さんととともにファンタジックな世界の構築に貢献した人。1983〜84年頃からアニメージュの表紙は徐々にセル塗りされた描きおろしイラストが主流になっていましたが、土田さんの描いた柔らかなタッチの鉛筆線に水彩絵の具で色づけされたイラストは異彩を放ち、読者の大きな反響を呼びました。同号には土田さんの手になる連作イラストも掲載されます。

 1984年9月号では、同じく土田さんが何と32枚ものイラストを描きおろした「オリジナル紙芝居」という、豪華な付録が実現しています(文は島田満さん)。1985年3月号にはオリジナルマンガが別冊付録となり、1985年5月号では放映終了(1985年3月)記念という趣でイラストストーリーが掲載されています。まだまだロボットアニメやコミカルなアクションアニメが主流を占めていた当時のアニメージュ誌面で、瑞々しいイラストに彩られた『メモル』の記事は強い存在感を放ち、「特別な作品」として当時の読者の記憶に強く印象づけられることになりました。

 その後、名倉さんは『メトロポリス』(2001)『イノセンス』(2004)『時をかける少女』(2006)等の作品の原画や、『怪〜ayakashi〜』「天守物語」(2006)のキャラクターデザイン・総作画監督など、アニメーターとして第一線で仕事を続けています。そしてイラストレーターとして、独特のファンタジックな世界を描き続けています。
 また、若き日にこの作品に演出として参加していた佐藤順一さんは、現在『ARIA』シリーズで詩情と郷愁に溢れた物語を見せてくれています。さらに、本作に大きな影響を受けたと思われる『ちっちゃな雪使いシュガー』(2001)などの作品を通して、(当時はそんな言葉はなかったけれど)「萌え」の源流と位置づけられることもあるようです。『メモル』の残したものは、確実に現在のアニメに根を下ろしているといえるでしょう。

 80年代前半に10代から20代を過ごしたアニメファンで、『とんがり帽子のメモル』に強い思い入れを持つ人は決して少なくありません。続編やリメイクとも(今のところは)無縁です。にもかかわらず、誕生から20年を経た近年でも、新しいムックやCDは発売され続けています。

 そんな残り方をしている作品は、他にはなかなか見あたりません。

 

 
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