2009年7月21日
佐藤翔樹君の母早織さんの手記が朗読されるなか、壇上のスクリーンには次々と思い出の写真が映し出された=仙台市立袋原中学校
宮城県内で交通死亡事故が後を絶たない。今年は14日時点で死亡者49人、前年同期より約1割増えている。悲惨な死亡事故を少しでも減らそうと、県警犯罪被害者支援室が仙台市内の中学校に通う生徒を対象に、遺族の手記を通じて命の尊さを知ってもらう教室を開いている。(西尾邦明)
15日、仙台市太白区の袋原中の体育館。
「なぜ、青信号の横断歩道で命を絶たれなければならなかったのでしょうか」
支援室の女性警察官が読み上げる言葉に、全校生徒約400人が耳を澄ませた。
00年の七夕の朝、同区の小学3年生佐藤翔樹君(当時8)が登校中、大型クレーン車にはねられて亡くなった。女性警察官が朗読していたのは、翔樹君の母早織さんが書いた手記だ。
「凄惨(せいさん)な事故現場、棺(ひつぎ)の中の変わり果てた息子の姿。夫婦げんかが絶えず家庭崩壊の寸前までいき、不眠症や拒食症にも悩まされた」――女性警察官は、事故後、早織さんの様変わりした日々を淡々と語った。壇上のスクリーンには思い出の写真が次々と映し出される。それを生徒らは、真剣な面持ちで見つめた。
「事故が、こんなに大きな悲しみをうむとは思わなかった」。朗読終了後、生徒会幹事で3年の岸田龍司さん(14)は生徒らの前で話し、事故を防ぐ誓いを新たにしていた。
県警交通企画課によると、今年は前年同期に比べて、飲酒運転が原因の死亡事故5件をはじめ、複数が死亡する事故や漫然とした運転による正面衝突事故が増えているという。県警幹部は「『命の大切さ』を知ることが事故を防ぐ」と話す。今後、同じような教室を順次、市内の中学校で開いていくという。
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