衆院が解散され、約4年ぶりの衆院選が8月18日公示、30日投開票の日程で行われることになった。自民、民主の二大政党が事実上初めて政権を競う。日本の将来を占う歴史的な政治決戦だ。
麻生政権誕生後すぐにもと思われた総選挙は先送りが続き、東京都議選など最近の地方選挙で自民党は連敗した。最後は「麻生降ろし」の党内対立にうんざりさせられた。衆院解散を迎え、多くの有権者が「やっと」という思いを抱いているだろう。
共同通信社の先日の衆院選トレンド調査では、比例代表の投票先で民主党が自民党を倍以上上回っている。
麻生太郎首相は会見で、自らの発言などをめぐり不信を招いたと反省し、今回の衆院選を「安心社会実現選挙」と名付けて民主党との対決姿勢を鮮明にした。投票日まで40日。自らと党に対する支持をどこまで回復できるか。
改革期待しぼむ
バブル崩壊後、一向に好転しない景気、年金不安や財政難。2000年ごろ、日本は閉(へい)塞(そく)感にさいなまれていた。変革への期待を背景に登場した小泉純一郎元首相は旧道路公団民営化など従来型の政治と一線を画した。前回05年の衆院選時、有権者の変革期待は最高潮に達したともいえよう。与党が圧勝し、衆院議席の3分の2を占めた。
翌06年に後を継いだ安倍晋三元首相は当初人気が高かったものの、長くは続かなかった。就任後間もなく郵政造反組を復党させたのが転機だったろう。07年の参院選で大敗して「ねじれ状況」を招き、選挙後の国会開幕直後に退陣してしまった。
続く福田康夫前首相も約1年で政権を投げ出した。麻生氏を含め3代の政権は総選挙の洗礼を受けないままで「たらい回し」の非難を浴びた。
この間、変革への期待はしぼんでいった。麻生氏は経済対策に力を入れたが、その分借金も膨らんだ。有権者は政治が従来型に後戻りした感を持ったのではないか。改革への失望感とともに政権の人気もしぼみ、最後は麻生降ろしの騒動劇。自民党の焦りの結果であったともいえよう。
山積する課題
政権与党が有効な策を打てなかった結果、国民の閉塞感は募る一方である。課題は山積している。
当面の焦点の景気対策は、定額給付金にしろ高速道の休日通行料金上限1000円にしろ、差し当たりの感が否めない。外需頼みの体質からくるもろさが言われる産業構造をどのように改め、力強い景気回復を図っていくのか。
国の借金は08年度末で846兆円に達した。税収減や景気対策のための大規模な財政出動で本年度末には900兆円を突破してしまう。
少子高齢化に拍車が掛かる中、年金や介護、医療保険など社会保障制度も今度こそ抜本改革に挑み、将来の安心を導かなければならない。
防衛、安全保障政策に絡む問題も重要だ。今後、日本が国際社会に貢献する道筋は、どうあるべきなのか。
先の衆院選トレンド調査では、有権者が重視する項目の上位に社会保障や景気、雇用などが並んだ。民意をくみ取り、優先順位をつけて解決に取り組む必要がある。
政策見極めよう
難題に挑む各党の政策を示すのがマニフェスト(政権公約)だ。しっかりとまとめてもらいたい。発表済みの党もより充実を図るべきだ。
民主党は、打ち出した政策の裏付けとなる財源があいまいと言われ続けてきた。また鳩山由紀夫代表がインド洋での海上自衛隊の給油活動継続方針を示したが、安保政策について党内にさまざまな意見があるだけにそのまま受け取れない。政権を狙うなら、民主党には信頼に足る政権公約が求められる。
鳩山代表の政治資金虚偽記載問題や巨額献金事件への小沢一郎代表代行の関与などに関しても説明不足だ。
自民党内には独自マニフェストの案も出た。選挙までに党として説得力ある政権公約をまとめられるか。党の存亡をかけた正念場といえる。
有権者にとっては政権選択の重要な時である。ムードに流されることなく各党の政策をしっかり見極めなくてはならない。その上で、自らの未来をつかみ取る意気込みで総選挙に臨みたい。