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最長「皆既」悪石島に本紙記者決死の入島

 22日午前に迫った世紀の天体ショー。広部玄記者が、6分25秒の最長皆既日食を見てやろうと、鹿児島・悪石島への観測ツアーに乗り込んだ。しかし、甘くはなかった。船を3種類乗り継ぎ、丸2日。救命胴衣まで着て乗った最後の「海上タクシー」は約1時間、ジェットコースターのごとく上下。海に落ちる恐怖の中、ゲリラ豪雨並みの海水も浴び続け、全身ずぶぬれKO寸前。カメラも壊れた。フラフラ上陸後も、水不足のためシャワーで体を洗えない。でも島の盛り上がりを見ると、ダメージも徐々に回復。でも…これで当日曇りだったらどうするの?

 20日午前9時、ツアーの途中宿泊地である奄美大島から大型客船「にっぽん丸」に乗ったまではよかった。シアタールームでゆったりと「皆既日食船上セミナー」を受けたり、大海原を眺めつつ入浴できる「大浴場」で至福のジャグジー付き展望風呂を満喫。昼は高級コース料理を味わった。

 しかし、そんなに甘くはなかった。にっぽん丸は直接、トカラ列島・悪石島に行くわけではなく、午後3時ごろ、同島の北側にある諏訪之瀬島沖で停泊。参加者はそこで全員、救命胴衣着用を命じられ、3隻の「海上タクシー」という小型船(定員30人余り)に乗り換え、悪石島に向かうのだ。

 船後部の屋外座席に座った。出航。風も強く、波は高いがどんどんスピードをあげ、大海原を爆走する。次第に、船が上下に激しく揺れ始めた。同時にバケツをひっくり返したような勢いで降り注ぐ海水シャワー。ごう音とともに、転覆するかと思うくらい左右に傾く。海水はそのたび、ゲリラ豪雨のごとく客席にかかり続けた。船の後ろを、海上保安庁の小型艇が事故に備え追尾している。

 全身がずぶぬれになり、塩水で目が開けられなくなった。ロデオマシンのように揺れ、気を抜くと海に放り出される危険性すらあったので、手すりにしがみついた。頭はフラフラ。これではタクシーならぬ「海上ジェットコースター」だ。甲板を歩くのはほぼ不可能。逃げ場がなかった。

 約1時間後、やっと、断崖(がい)絶壁に囲まれた悪石島に到着。カメラは海水で壊れ、サイフはびしょぬれ、胸に下げていたIDカードも吹っ飛んでいた。上陸後、シャワーを浴びようと思ったが、島は水不足で、当日中にシャワーを使えないことが判明。洗濯もダメ。トカラの現実は厳しかった。

 そもそも、東京からここに着くまで、丸2日かかった。ツアーそのものは19日午前5時、那覇港集合。那覇港から14時間近く乗った奄美大島行きフェリーは、いわゆる“ザコ寝”。マットの幅が狭く、両手を「気をつけ」の姿勢で下に降ろしロボットのような姿勢であおむけのまま、入眠するしかなかった。でも「海上ジェットコースター」に比べればはるかにましだ。

 トカラ列島への皆既日食観測ツアーの料金は34万2000円以上で、うち悪石島へのツアーは、4種類あった。トカラ列島がある十島村から業務委託を受けた旅行会社近畿日本ツーリストが定めた。申し込み後、同社から割り当てられたのは、今回の那覇発着、海上タクシー利用のコースだった。

 ただ、悪石島に着くと、島全体が皆既日食で盛り上がっている雰囲気。迫った本番のことを思うと、ずぶぬれのことなど、忘れていった。ただ島内の生活条件も厳しい。コンビニ、飲食店、金融機関ATM、交通機関などはほぼゼロ。大部分の参加者は小学校の校庭に設置されたテント内などで宿泊する。飲み水はペットボトルが1日5本程度支給される程度。熱中症の危険性が常にある。高額ツアー代を払い、困難を乗り越え「6分25秒」の世紀の天体ショーを体感することこそ最高のぜいたく。絶海の孤島での、過酷サバイバルツアーが始まった。

 [2009年7月21日8時37分 紙面から]


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