|
マ田力の勇くん
「またぢからの いさむくん」
小學校の時、何かの本に載つてゐたのが、この文でした。
「勇」の漢字の覺え方です。
確かに覺え易いです。しかし、當時の私は何か引つ掛かつてゐました。
『漢字には部首がありそれは意味を表し、殘りの部分が音を表す。』
この原則を先生は�海悗討�れました。
この原則に則ると「勇」の字はどうなるのか・・・。
「マ」は部首（この場合、「マ冠」か？）といふ感じがしないし、他の漢字でも見たことが無いな。
「田」は「マ」と「力」に挾まれてゐる。「偏」「構へ」「冠」と部首にはいくつもあるが、字の眞ん中に部首は來ないな。
「力」が部首の字は他にも見たことがある。これが部首かな。
「男」といふのも考へられるな。「男」という部首は今まで習つたことが無いけど、いつか習ふのかな。
でも、いづれにしても「ユウ」といふ音はどこから來たか解らない・・・。
こんな事を考へてゐたのを思ひ出します。
時は流れ、漢字を手書きする事も減り、部首がどうの書き順がどうの等すつかり無關係な生活を送つてゐました。そこへふと目に付いた「旧字力、旧仮名力」（青木逸平著・ＮＨＫ出版）といふ本。言葉とか漢字とか日本語とかいふのはわりと好きな方だつたので、そのまま購入しました。舊字といふのはなんとなく知つてはゐましたが、その名のとおり古い字で古代の文字なんだらうなといふ位の認識でした。しかし、その本を讀み進めるにつれ、これは舊字では無いぞ、舊字こそ正しい字、正字なんだと氣づきました。それから大正時代に發行された漢和辭典「詳解漢和大字典」を本屋で見つけ即購入。またネット上でも正字正假名のサイトがいくつもあるのを發見。そこで「勇」の字の眞實を知つたのです。
「マ」「田」ではなく「甬」（ヨウ）
「詳解漢和大字典」でもその樣に表記してありました。永年の疑問にやうやく解答が見つかりました。
今思へばこの「勇」こそが漢字の世界への誘ひだつたのでせう。
「勇」は「マ」「田」「力」では無く「甬」「力」
|