2009年7月21日
試合前、トレーナーのマットに呼ばれて、彼の事務室に入りました。
「ドア閉めて」
「耳をすませて」
なんかいな?と思ってじっと黙っていると、
「XXXXX!!XX!XXXXX!」
「XXX!XXX!XX!XXXXXX〜XX!」
どこかで聞いたような、と思ったら、監督の叫び声。
どうやら誰かと言い合いをしているようで、それが換気口を通ってトレーナーの事務室まで響いてくるのです。
「すごいだろ?いつもこうだよ」
このところ、度重なるミスプレーで、大変機嫌の悪いボビー(ディッカーソン・監督)。
選手の前でこれだけ怒鳴ることは稀ですが、まさかその分監督室で怒り狂っていようとは、ちっとも知りませんでした。
選手の雑務で追われているのに、監督のご機嫌までチェックせざるを得ないマットはホンマに気の毒。
アメリカの筒抜け単純換気口は、こうしてたくさんの音を近隣の部屋から運んできます。
よくアパートなどで、子供の笑い声などが聞こえてくるのはほほえましいものの、ボビーの叫び声は、
軽くエコーまでかかって、恐ろしいことこの上ないのでした。
「選手を全員ここに集めて聞かせたら、ミスが減るんちゃうか?」とマットに提案するべきなのかどうか。
アイオワ州デモインにて 田口壮 
2009年7月20日
試合のことはいいところがまるでなかったので、何一つ書きたくない、そんな夜。
しかしヨメの話を聞いたら、なんだかしんどい気持ちが失せてしまいました。
学校のお迎えに行くと、寛は車の中でなぜだか
「きょうはおともだちにすなをかけてしまったの。わざとじゃないんだけど・・・」とか、
「せんせいのいうことをききませんでした・・・」などと、
ざんげを始めるのだそうです。ヨメはそれを「お迎えざんげ」と呼んでいて、今日は何を反省するのだろうと、毎日楽しみにしているらしいのです。
「ママ・・・ごめんなさい・・・」
(始まった!)と思ったヨメが、
「どうしたの?何かしちゃったの?」と心のわくわくを隠しながら尋ねたところ、
「かんくん・・・うそついてました・・・」
「うそ?何?」
「ママはふとってないよってこのあいだいったの、ほんとはうそ・・・」
「・・・」
「ママふとってる・・・」
寛はたぶん、良心の呵責に耐えられなくなって告白したのでしょう。
ヨメの気持ちに比べれば、僕の4タコなんて、たいしたことでもないよなあ。
アイオワ州デモインにて 田口壮 
2009年7月19日
本日の対戦相手はナッシュビル・サウンズでした。
試合前、相手のバッティング練習が終わり、僕らがティーを打ち始めた時のこと。ちょうど引き上げようとしていたサウンズのサンディー・ゲレロ打撃コーチが、すーっと寄ってきました。
「ソウ!最近変化球がうまく打てないんじゃないか?」
サウンズと試合があるたび、何かと話しかけてくれるコーチです。
特に過去の面識もないのですが、なぜか僕にぴったりくっついて
離れない。相手は本物、僕はニセモノとはいえ、同じラテン顔のよしみなのか、対戦チームとは思えないような接近ぶりで、ついに今日は、打撃の心配までしてくれたのでした。
「変化球、うまく打ててないようだな・・・」
「そうなんです。どうもこのところしっかり捕らえられなくて」
「ストレートは完璧に打ってるからな。1試合目、2試合目はすごく
よかったし、捕られてもきちんと打っていた。どうだ、
もう少しだけ打つ瞬間に、身体を前にずらしてみないか?」
「ああ、なるほど」
ゲレロコーチは身振り手振りとわずかな日本語を交えながら、熱心にバッティングを教えてくれました。
教えてくれることにも感謝ですし、これまでの打席をくまなく
チェックして、気にしてくれていたことにも大感謝。
このお礼はサウンズ戦でのナイスな打撃で返したいところですが、その場合、喜んでくれるかどうかは、いまひとつ自信の持てないところです。
アイオワ州デモインにて 田口壮 
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