|
きょうの社説 2009年7月22日
◎衆院解散 「自民党政治」の歴史的転換点
衆院選は政権選択をかけた事実上初めての選挙となる。都議選を経て民主党に吹き込む
「政権交代」への追い風はますます強まり、自民党がこの風圧を押し返すのは容易ではない。総選挙は戦後政治を牽引してきた「自民党政治」のまさに歴史的転換点といえ、政権交代可能な2大政党制への実質的な幕開けとなろう。「政権交代」という言葉はもはや野党のスローガンを超え、「変化」や「現状打破」を 望む有権者の心に共鳴しうる力を得てきたようにも思われる。麻生太郎首相は解散会見で衆院選を「安心社会実現選挙」と位置づけたが、今の大きな流れを変えるには自民党が自ら生まれ変わり、解党的出直しに踏み出すくらいの思い切ったメッセージがいる。選挙戦で党の蘇生力を示さない限り、勝算はなかなか見いだせないだろう。 自公政権は首相が2代続けて政権を投げ出す失態を演じ、国民の信頼を低下させた。続 く麻生首相は、解散会見で自らも非を認めた発言のぶれや指導力不足などで国家のリーダーとしての資質に疑問符がつけられた。党内では解散直前まで「麻生おろし」をめぐる混乱が続いたが、結局は「ポスト麻生」も浮上せず、党内で人材が枯渇する長期政権の末期的症状を浮かび上がらせる結果となった。 政権交代が実現すれば自民党は1993年の細川政権以来の野党となるが、派閥の形骸 化やそれに伴う党内グループの溝の深さを考えれば当時のように政権をすぐに奪い返す状況にあるとは思えない。下野すれば党分裂の可能性は前回の比ではないだろう。自民党は目先の選挙活動を超え、野党になることも辞さぬ覚悟で党再生を真剣に考える必要があるのではないか。 一方の民主党も自民党の不満の受け皿になり得ても、積極的な支持を得ているとは言い 難い面がある。40日間にわたる長丁場の戦いで追い風がこのまま順調に吹き続けるとは限らない。選挙戦ではムードに頼らず、政策の裏付けとなる財源確保策を説得力をもって示し、安保・外交への不安を取り除く丁寧な説明がいる。政策を実行に移すための政権運営の在り方についても具体的に語ってほしい。
◎環境モデルハウス 住宅需要の喚起剤にも
石川県は年度内に環境共生型住宅「エコハウス」のモデル棟を、金沢市内の産業振興ゾ
ーンに建設する。省エネルギー性能に優れた住宅の普及を図る環境省のモデル事業の認定を受けたもので、省エネ住宅に関する知識や情報の学習・発信拠点となる。家庭部門におけるCO2(二酸化炭素)削減という環境政策の一環として実施されるが、省エネをキーワードに住宅需要を刺激する経済効果も期待される。県内の2008年度の新設住宅着工戸数は、前年度比14・4%減の7579戸にとど まった。過去40年間で最低水準という厳しい状況の中で、住宅関連業界では太陽光発電システムなどの「エコ」を一つのてこにして需要を開拓する努力がなされている。 こうした状況に対応して県は今年度、住宅の新・改築に当たって二重ガラスや太陽光発 電などの省エネ設備を導入した場合、投資額(200万円〜500万円)の5%を助成する制度を新設した。 県は省エネ住宅に関する表彰制度も設けて県民の環境意識を高める計画というが、今後 さらにエコハウスの需要喚起や、住宅事業者の環境関連技術の向上を図る施策を研究してもらいたい。 県工業試験場前に建設されるモデルハウスは、木造二階建てで断熱施工、自然エネルギ ー利用などさまざまな省エネ技術を駆使して造られる。訪れた人はエコライフを体験でき、関係業者にとっては格好の研修の場になる。 着工は今秋の予定というが、エコハウスの省エネ、CO2削減効果だけでなく、日常の 暮らしの経費節減効果を分かりやすく示すことも大事である。たとえ建設費が割高になったとしても、その後の維持管理費、いわゆるランニングコストが低減される経済的メリットの大きさが具体的に分かれば、住民の関心は一層高まり、需要喚起効果も高まろう。 モデルハウス事業に伴い、関係者による「県エコハウス推進地域協議会」も組織された 。地域の素材やアイデアも生かした石川らしいエコハウスの開発と普及のエンジン役になることを望みたい。
|