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HMV ONLINE > ニュース > 音楽 > Yorimichi All Stars @HMV ONLINE 200

矢沢永吉

HMVフリーマガジン「the music&movie master」の人気コーナー、「よりみちAll Stars」!!
第10弾の今回登場してくれたのは、矢沢永吉さんです!!


充電明けの夏、いきなりエンジン全開ですね。
そうね、初めてだったからね。
カラッポになれました?
よくアーティストが“充電”とかいうじゃない? 本当はさ、“充電、充電”って何が充電なの!? って思ってたのよ。僕はその充電らしきものやったことないから。で、とりあえず自分を止めたんだよ、1年間。
充電じゃなくて止めたんですか?
そう、止めたのよ。だから“充電”とはちょっと意味合いが違うね。35、6年ノンストップでやってきて、あまりにも突っ走り過ぎてきたから初めて止めた。ここらでちょっと周りの景色をゆっくり眺めてみたいと思って、とりあえず止まってみたの。
止まりながらごらんになった景色はどんなものでしたか?
僕が観たかったのは「リスナーってどのへんで聴いてんだろ」っていう景色だったんだよね。今までひたすらにLIVEやって、ひたすらにレコーディングして、リスナーの目線まで辿り着けてなかったのかもしれないという理由がひとつ。それと武道館も100回やったし、そろそろいい区切りかなというタイミングもあって、5年ぐらい前から僕の中にある、ある種の謎解きじゃないけど、感じたものがあってさ。その謎解きに対して向きあう時間が欲しかったっていうのが本音かな。それがイコール、リスナーからの視点っていうやつですよ。
ご自身をリスナー視点に置き換えられるというのは初めてでしたか?
矢沢永吉 もちろん「らしき」はあったよ。だけど謎解きまでは至らずに、ずっと5年、6年、本気で考えてたのよ。それまでは創り手側の気持ちばかりに走ってたから。
リスナー側の気持ちになれば、一度突っ走ることも止めなければなりませんよね。
そもそもなんでロックバンド作ったんだとか、ロックシンガーやろうと思ったっていったら、そりゃ洋盤にまずハマっちゃって、海の向こうの本場に憧れて、やっぱエアロスミスとかストーンズだろう! みたいなさ。だったら本場に行かなきゃなるまいみたいなことで、ずっと先にあるものを掴まえるために全力で突っ走るしかなかったわけよ。ほら、俺ってとことん真面目だから。俺ぐらいに真面目なヤツ、いないんだから!
たったひとりでアメリカいって、暴挙だって揶揄されましたよね
そんなこともいい思い出よ。でもさ、俺みたいに本場行ってバカやったヤツ何人いる? みんな国内でシコシコやってんじゃん。良いとか悪い、別でよ。だから、純粋度でいったら俺ぐらい純粋って人間、他に誰がいるのよ? って、まぁそのぐらいに熱いワケよ(笑)
熱くてヤケドしそうな時代でしたね。僕も一緒にヤケドさせていただきました。
熱いから勢いでクァーーーーーって行ってできたんだよ。OK,やっぱアメリカだよ! イギリスだよね! って。ワオッ、世界のギターってやっぱ凄ぇよ。世界的なドラマー、アンビリーバボー! そして時間が経ってそんなチャレンジをそっと客観的に視てみる。ちょっと待てよ、と。洋盤、洋楽、確かにグレイトだけど、もうコンプレックスにも似たようなエネルギーと気持ちで行くのはいいんじゃない? それよりも日本のリスナーってどのへんで聴いてるの? 洋楽マネるよりも、純粋なロックが欲しいんじゃない、って。
海外に行かなければわからないことですね。
そういうことですよ。僕らは創り手だから、ドラムは誰々が叩いたとか誰がギター弾いたとか、アメリカでどれだけ凄ぇヤツだとか気になるけど、リスナーってそんなことで聴いてないでしょ? どうでもいいとは言わないけど、それは後でくっついてくればいいものだろって。リスナーって、もっとどシンプルに楽曲で泣きたいんじゃないの?
今のE.YAZAWAに関しては、シンプルに感じたいですね。
そう、それですよ。「感じる」。スコーンって感じてオーマイガット! と言いたいんじゃないの。OK,じゃ、その感じるって要素、何よ? 詞で感じる、メロディとアレンジで感じる。もう直球ストライク投げ込むしかないわけよ。それにエッジの立ったボーカル、あのリバーブ感、あのツヤ感…もうこれだけなんだよね。それ聴いて、何度も何度も聴いて、聴き終わったらまた聴きたくなっちゃっうようなサウンドに心底シビれてさ、「今回のYAZAWAのロックンロールはいいねぇ! 飽きないねぇ! 何回聴いてもいいね!」ってみんな言うんだよ。
もう真夏ですね。灼熱地獄です。
ここからちょっと冷やしてあげるからさ(笑)。それでさ、ちょっと待てよって…このサウンドクリエイション誰がやってんの? ってなったときに、日本のミュージシャンのナントカだろうっていう予想が立つじゃない。NO! NO! とんでもない、これ実は、世界中のこんなヤツらがやってんだよ、って。マジかよ?たまげた、みたいなことが後で来ればいいってことを5、6年前から思ってたのね。
演奏やアレンジの力って、シンプルであればあるほど強烈に感じることがありますよね。
そこで2年前に「YOUR SONGS」ですよ。まあ新たに作ることは出来ないけど、過去にあったマルチテープを引っ張り出してきて、“おめぇ、この音要らねえだろうよー”ってね。主役は誰? っていったらボーカルだよね。そのボーカル支えてる楽器の主役は誰っていったら、そんなモン、リズム系が1個で、つまりドラムにベースみたいなモンだけでいいんじゃない? それとコード系を感じるものが1個あったらもう要らないじゃん。あとはシンセだ、やれ何だかんだってのは所詮脇役じゃない。マルチテープを見たら、もう音だらけなわけよ。これ一回整理してみたいっていう感覚が僕にあったってことですよ。よし、音を整理しよう、整理せずにはいられない感じになってきて。それがRemixってところで、「YOUR SONGS」、1番から6番までやって、もう限度ですよ。作り直したわけじゃないから。それで今回、まったく新しいオリジナルでやったのよ。確信的にね。もう海の向こうがどうしたとか、世界の誰々がどうしたとか、洋楽がどうしたってことは、二の次のさらに次。
それが今回のど真ん中の直球ストライク。
それが答えだね。全力で投げ込むど真ん中の直球ストライク。それを全部、噛んで噛んで、噛みしめて、ロッテのコマーシャルじゃないけど(笑)
それにしてもびっくりするぐらいストレートなサウンドですよね。
引き出しはいっぱいあるからね。曲作り。アレンジ。歌入れする時ももう、エッジのかかったゾクっとくるようなボーカル歌いたいと思ってね。コンプレッサーとリバーブの関係、もの凄い意識した。もうひとつ決定的にコンセプトで僕が大事にしようと思ったのは、洋楽と言われないアルバム作りたいと思った。
あれだけ洋楽を求めた矢沢永吉が、もう洋楽は要らない?
邦楽ロック! だけどコレ、L.Aで作ったんだよ。
また深くて謎ですね。
それには理由があるの。聞いて! プリプロやってる時から、第一コンセプトは「洋楽と言われないアルバム」ってのがあったんから、ココ(自社スタジオ)でやってたのよ。さて、ミュージシャン呼んでカタカタやって、ハッ!? としたの。待てよ、洋楽にしないとは言うけど、グルーヴはどうしても欲しいと。やっぱエイトビートだろ。ロックンロールっていったらグルーヴが一番大事だから。グルーヴといったらあなた、もう海の向こう行くしかないじゃない。悪りぃけど、ドラムとベースのロックンロールなグルーヴはやっぱ本場行かなきゃダメなのよ。でも本場行くと洋盤になっちゃうわけじゃない。さあて困ったな、と。

矢沢永吉 美味しいとこ獲りできないんですか?
それよ、まさしくそれ。洋盤にしないけどグルーヴは貰いたい。美味しいとこ取りなのよ。
プライドの高いアメリカ人がすぐOKって言ったんですか?
まずミュージシャンに「余計なことするな」って言ったの。個人プレー、リフがどうしたとか、ロサンゼルスのクゥカアアーン、どうだ俺上手いだろう! とか、全部、ノーサンキュー。いらない。俺が要求してる通りやってくれと。だから、申し訳ないけどかなり規制した弾き方をしてもらったよ。
どこまでも計画的な直球ど真ん中ですね。
ははは、完璧っ! だから向こうの連中なんかもう、「YAZAWA、なんでアメリカまで来てコレやんの?」って(笑)。「いやいや、ちょっとワケありでさ」って。それで通じ合えるレベルの奴らなんだよ。
強い日本人の姿が想像できて嬉しいです。
あのドラムやベースのなんともいえないグルーヴは、あの国でしかないものだからね。それを極めてシンプルに、余計なことさせないで限界までシンプルに弾かせたから直球ど真ん中のロックンロールアルバムが出来たんですよ。
足して足して足しまくって、もうどこにも余地がない、もう全部持ってる。ちょっと待て、一回捨てよう、引こう、引き算しちゃおう。
隙間が大事ってことだよ。
人生にも通じますね。
だからね、経験って伊達じゃないんだよ。そう、無駄にはなってない。全部僕の宝になってるんですよ。やっぱり、今から30年ぐらい前に海の向こうに渡ろうってことで、本場で勝負したことは宝になってる。ほいで、ぐるっと周ってちょっと待てよ、洋楽がどうしたとか、世界的なプレイがどうしたじゃねぇだろうよ! って。
謎解きみたいなものですね。
謎解きなのよ。パズルっていうかさ。経験してきた宝物の中から、今の自分を表現するにはどれを選んでどうハメ込むか、みたいな。いろいろ詰め込まれてるからさ、ヤザワの体には。
このインタビュー、『よりみち』っていうテーマなんですけども、正に矢沢永吉の60年という時間は、極上な『よりみち』を網羅していますよね。
そうかもしれないね。その時には必死で突っ走ってたけど、結果的には大切なよりみちをしてきたのかもしれない。でなけりゃロックンロールの真髄に辿り着かなかったかもしれないし。ほら、俺60だよ。60歳でこんなロックンロールアルバム作っちゃうんだよ。どれもこれも『よりみち』だったのかもしれないけど、その時々には『よりみち』なんて気持ち少しもなかったし、そんなこと考える余裕もなかった。だからサイコーなわけじゃん。 (矢沢さん、歌いだす。♪ Tシャツめくりあげ チクリと俺の胸に噛み付いた ♪)あの時の声なんか、ファッキン・シャウトしてる。この「アウッ!」とかさ、60の声じゃないもんね。だからさ、この歳、60になるときにアルバム作れたこと、このシャウトのキーが出てること、ほんで、今年、サマーフェス4ヶ所ぐらい、10代や20代の奴らの夏の祭典のど真ん中にブチ出てってさ、ロックンロール吠えまくって来るよ!
それにしても、過去最高のテンションじゃないですか?
だから、だからね、年齢じゃないんだよ。60になって僕は再デビューだと思ってるから。この『ROCK’ N’ ROLL』っていうニューアルバムを引っさげて2回目のデビューだと思ってんのね。だからロッキン・ジャパン、サマーフェス、ap bank(ap bank fes'09)も出るからさ。ちょっとグレイトな夏休み届けますよ。
矢沢永吉にとってはアウェーとも思えるような状況で5万人、ap bankで3万人とかですよ。
そこに60歳の再デビューが登場するわけですよ。矢沢永吉のボーカルってのはこれぐらい声出るよってとこを見せてやるから。ヴァアアアアアアアアアーッって歌うから聴きに来てよ。。
そんなにエネルギッシュなのに、トルクとかターボ効かしてる感じがしないんですよ。スーーッって行ってる感じ。
昔よりも音楽、好きになったからかもしれないね。だからいろんなところに参加させてもらいたい。いや、若者たちに仲間に入れてもらいたい。というのも、ちょっと前まではサマーフェスってのは俺の場所じゃないと思ってた。なんでって、多分俺がバカだったんじゃない? バカなのかショってるか、ええカッコしてるか、このへんのどれかの気持ちで、多分、サマーフェスに関しては、知らねえよ、フン。それ、お前らがやれば? ニッポンの若いバンド、いっぱいいるし、お前らの場所だからお前らがやれよと。悪いけど俺とはちょっと違うから、俺は毎年武道館で5DAYSショーアップしたライヴやって、チケットソールドアウトでやってるから。ソーリーごめんね! っていう感じだった。そうね、今から思えば気取ってたというか、ええカッコしてたというか、そんな感じがどっかにあったと思います。そんで、渋谷さん(陽一。ROCK IN JAPANのプロデューサー)が「じゃぁ永ちゃん、言うよ。オーディエンスの95%、下手したら99%がYAZAWAの名前は知ってても矢沢永吉を観たことないヤツばっかだよ。永ちゃん、世代が変ったんだよ。だからさ永ちゃん、ニッポンの本物のロックシンガー見せようよ」って言ったのよ。そりゃあね、渋谷さんはちょっとヨイショしたと思うよ。でも単純だからYAZAWA(笑)。それ言われりゃあ、”ホンモノですかあ?”みたいな(笑)。俺のどっかをクスっとくすぐったんだよね。
そう言われた瞬間はショックじゃなかったんですか?
なるほどって思ったよ。そうか俺の名前は知っててもホンモノは知らないんだ。そうかー、そういう時代になったんだ。OK! じゃあ渋谷さん1回出させてよ。あとは言うまでもなく、噂聞いてるよね? あの現場を、もうファッキン・総立ちどころか、始まって以来のパニックになっちゃったよね?
矢沢さんのステージを知らないオーディエンスが思い思いにタオル投げてましたよね。E.YAZAWAじゃない、フツーのタオル。
圧巻だったでしょ? その後のメールを見て俺は、愕然としたのと嬉しかったのと、両方あったの。もう反響が凄すぎて、もの凄いメール来たのね。そのほとんどが「え? 矢沢永吉が出るの? まあ、こんなこともでもなきゃ一生観ることもないから、とりあえず観ていこうか」とか、「あのヒト歌、歌ってんですか? コマーシャルのおじさんだと思った。ついでだから観て行こうか」みたいな(笑)
矢沢永吉 それこそ昔、矢沢さんが誰も認めてくれない時代に乗り込んで行ったようなものですね。
だからさ、ほんと、純粋に純粋に僕を観せたかった。観てもらいたかった。メールの最後にはさ「ビックリたまげました。何事じゃこりゃ、って。1曲目でぶちカマされて3曲目になったら周り全員がもう総立ちになってました」と。「自分も気付いたら天に拳上げて、なんか涙が溢れてきました。感動しました」。「感動しました」「感動しました」「感動しました」の嵐よ。俺それ見たときにね、「俺、今まで何してたんだ?」って思ったの。音楽ってものは年齢関係ないじゃない。なんでもっともっと前から、10代や20代の俺なんかこれっぽっちも知らない連中に、もっと観せなかったの? って。
矢沢さんが若者たちに「こっちへ来い!」じゃなくて「そっち行くぞー!」という気持ちが伝わってるんだと思います。
音楽に国境はないと同じでにエイジにも国境はない。なにええカッコしてるワケ? なにショッてるワケ? …。俺はそういう純粋に音楽と向き合う気持ちに飢えている。だから全てがそこにガァーーーッと集まってるから、この『ROCK’ N’ ROLL』ってアルバムも出来るべくして出来てきてるわけよ。そう、さっき言ったけど、60歳にして2回目のデビューですから。今からデビューです。だから今年、これ引っさげて、そしてもうひとつ、よしっ、レコード会社作っちゃおう。この際もうレーベル作っちゃおう。もうメーカーには所属しない! 俺はインディーズだ!
かなりメジャーから嫌がられるインディーズですね。
単なるインディーズじゃないよ。インディーズの良いところはなんだ? メーカーとは違う、あの、スピリチュアルなインディーズ魂みたいな、あの清くて真っ直ぐな良さがある。どんなに逆立ちしてもメーカーが超えられない、清さと真っすぐさ、これでいくんだ! って。そんで僕はウチのスタッフに、おい! 日本一のインディーズ作ろう! 全く新しいスタイルの日本一のインディーズを作ろうぜ! メーカーでもない、旧来のインディーズでもない。新しいインディーズ。これがねぇ、10年前だったらこんな発想浮かばなかったのね。これがなんで今浮かぶのか。ま、時代背景がインターネット、ダウンロードの時代があるって言ってしまったらそれまでだけど、それだけじゃないと思う。やっぱりその、数年前僕はくるりの前座に出さしてもらったり、夏フェス出させてもらったり、あーだこーだやった。ほいで俺は何してたんだっていう、あの、ロッキン・ジャパンの反響見たとき、俺は、これじゃまるきし浦島太郎じゃねぇかと思ったこと、全てがここに繋がったんだと思う。
スピリットの利いたロックを作るためにですね。
洋楽? NO! もういい。洋楽じゃねぇんだよ、アメリカ、イギリス、それは全部引き出しとして持てばいいんだって。大切なのは矢沢永吉がどんだけ気持ちのいい直球のアルバム作れるかってことでしょ? だからこの3年間、レコード出さなかった…NONONO! 出したくなかった、いや出せなかったっていうのが正しいですね。で、ここへ、4年ぶりのニューアルバムになってくるワケ。正しいよりみちだよ。
今回のアルバム、いろんな感情引っ張ってきますよね。
今思えば、なんかひとつのところに、わーーーーっと集まってきたような気がするんですよ。あ、来ちゃったな、みたいな。
日本人特有の琴線みたいのがあって、多分、欧米人とは心の機微みたいのが違うと思うんですよ。「アルバム」とは良く言ったもので、聴いた人が自分のフォトアルバムをめくるような、なんともいえない…初めて聴いたのに、どこか切なかったり、激しかったり、自分の中にあるなにかに掻き回される気持ちになりますね。
あのね、やっぱりね、YAZAWAなんですよ。そう、YAZAWAも言ってるよ。もう勉強した。一周りした。洋楽もかじった。憧れもした。それこそコンプレックスを持ってるぐらいに洋楽研究しまくった。だから、もういいでしょ!もう本来のYAZAWAに戻ります! 今までサンキュー! って言ったらね、そこにマイナーの切なさや激しさなんかがちゃーんと入ってるのよ。マイナーコードから入って泣き入れて、それこそ日本人大好きな「もどかしさ」もちゃんと入っててさ。日本人にしか作れないロックやってるわけですよ。
ロックンロールYAZAWA節みたいのがやっぱありますよね。
そうそうそうそう。
「Sweet Rock‘n ' Roll」という曲には「雨のハイウェイ」入ってますよね。
そう思う? それマチガってないね!
“♪Oh〜 キャロ〜ル”って、あのあたりのグラついた恋心なんかも連れてきますよね。
いやあ、だから僕、今、ほんとに嬉しくて、最高に気分良いもん。気分良いよ! それを持って、これからフェス出たりツアー出たりできるんだから。インディーズ矢沢、最高にハッピーです(笑)
なにかと掻き回しそうですね。
初心じゃないけど、“何か俺たち出来ないのかな?”っていう、あの気持ち?このインタビューでもそうだけど、矢沢がいろんなものを通してメッセージすることに対して「俺たちも応援するよ!」みたいなさ。なんか一緒にやろうよってエネルギーがね、集まってきてるのよ、今。
新たなスタート地点なんですね。もの凄いエネルギーを感じます。
なんつーんだろう? このエネルギーもね、澱んでないの。真っ直ぐさがあるんだよ。もちろん売りたいよ。売りたいけれども、その前に俺たちもっと大事なものがあるよね。何? って言ったら、この時代の変わり目に、俺たちなんか出来るんじゃないの? っていうところの、それが一番大事な部分。そう思うことがもの凄いエネルギーの元になってるような気がする。
嬉しい、楽しい、やる気。それと不安の向こうにある、ちょっとトキメキみたいなもの、凄く感じます。
そうじゃなかったら、夏フェス4ヶ所、やったれ! って言わないですよ。だって今日ウチのマネージャーに「夏フェスさー、取れるだけ取っちゃおうよ!」って言っちゃったもん(笑)。下手したら、今、キャロルんときよりもパワーがある。キャロルの時はなんか、俺どうなっちゃうんだろう? 成功したい! 金持ちになりたい! 上に行きたい! 俺は音楽で身を立てたい! だったからね。世界に別荘持てるぐらいの男になりたいって。あれはあれで良かったんだけど、今は逆にもっと楽しんでやりたいって気持ちが溢れている。あの頃に無かったものがあるんだよ、今は。だから、そういう意味じゃ、YAZAWA良い歳の取り方したよ。
若輩の僕が言うのも失礼なんですが、これからは、やはり、ちゃんとした少年のような大人っていうのが、基準値になってくると思うんです。男はいくつになっても淀みがなくて、どれだけチャレンジし続けられるかだと思うんです。これから60歳を迎えられる矢沢さんがそれを大声で言えるということは、どれだけ自分を楽しめるかというチャレンジだと思うんですよね。そこらへんのストレートさをもの凄く感じます。
でもねぇ、これを言っちゃ、ちょっとええカッコに聞こえるかわかんないけど、そう言えるには条件がひとつある。やっぱりねぇ、大人になるまで思いっきり走らなきゃダメなんだよ。走ってこなきゃダメなの。20代30代40代50代、いろいろ雑音や煩わしいこといっぱいあるけど、走って来なかった奴が能書き足れても所詮能書きに過ぎないんだよ。トラブルも多かった、事件も多かった、いろんなこともあったけど、とにかく思い切りやったかどうかよ。やらないヤツにね、再デビューも少年もへったくれもないよ! やっぱ思い切りやってね、いろんなことを乗り越えて乗り越えて乗り越えてきたらこういう心境になったの。いやあ、音楽があるから最高! みたいな。
矢沢永吉 うらやましいし、憧れます。
もうね、欲しいものなんてないんだって。
ひとつだけあるんじゃないですか?
ふふふふ。音楽ね。音楽があったら最高! と思えちゃうんだからいいよね。
今年は特に矢沢さんのファンはシビレ切らして待ってますよ。
だからまあ、今年はサマーフェスやったり、東京ドームやったり、秋から、ノーマルのコンサートでしょ。ファイナルはいつもの武道館5DAYSで、これで107回目になるのかな。そこまで一気に走り抜けますよ。
期待しています。
いやぁ、ありがとう。楽しかったよ。あっ、ねぇねぇ、『ROCK’ N’ ROLL』!、本当に良かった?
はい。もちろんです。
おっ、キタっ! て思った?
はい。琴線に響きましたよ。語れますよ。
ああ、嬉しいなあ。俺、最近アルバム褒められたらもの凄く嬉しいんだよ。純粋に嬉しい。「矢沢さん、やりましたねえ! とか言われたら、「分かるぅ?」みたいなさ(笑)
聴いたらまたすぐ聴きたくなります。
でしょ? フッと終わったらまたもっかい聴こうかみたいな。
昨日はインタビュー前ということもあったので11回ローテしました。
あれね、ちょっと言うとね、秘密をバラすことになるけど、全部計算されてんだよ。秒数も全部計算してんの。長さも。
どういう・・・?
簡単に言えばさ、AメロがあってBメロがあって、で、Cメロがあるじゃない、それの出し方も全部計画的にやってんの。Cメロは一回しか出てこないとかね。だからもう、サラッとしてしつこくないの。
そうですそうです、しつこくないから余韻が残るの。
そう、残るの。っていうか残すの。
駆け引きで作ってたんですね。
それがね、分かったのよ。結局ねぇ、しつこいヤツは嫌われるの。
あはははははははは!
俺、考えたら昔しつこかったもん。俺は作家としてこういうこと言いたいんだ! ってさ。
全編女性の影がチラチラチラチラ、どの曲も色っぽいです。
そう。女の影がチラチラするし、それを追っかけてる男も潔ぎがいいんだよ。
ちょっと純粋すぎて駆け引きには負けますよね。
潔ぎがいいから、女が振り向いて気になっちゃうワケ。
無欲の勝利みたいな。
これがねぇ、ガツガツこられちゃと女がもうね、警察に電話するわよーって言うわけよ!
矢沢永吉 あはははははは!
だから警察に電話されないように、スレスレのラインで気になってしょうがない男になってやろうみたいな12曲だよね。
7曲目辺りで諦めたフリとかもしてるじゃないですか(笑)
でも8曲目でまた正面から堂々と出てくるの(笑)
短編純愛小説の組み合わせみたいな。
最後はもう、あれですよ。「OK、ハイウェイ、俺、今でも走ってるけど、お前は元気でいるかい?」
矢沢永吉。ハイウェイ。たまらんですね。
いい言葉だね。なんだかんだで男はいつだってひとりぼっちのハイウェイだよ。
矢沢さんのヴォーカルって、時々女性の言葉として聴こえるときがあるんですよね。男が言えない行間を埋めるような、どこからともなく聴こえる女性の声。そこがすごくラヴソングなんですよ。
嬉しいねぇ。こないだある人も同じこと言ってた。あの、『ROCK’ N’ ROLL』っていうタイトルのように、凄く隙間があってロックしてるんだけど、切なくなる要素がいっぱいあるんだよね! って、それがたまんないって言ってくれた時、嬉しかったなあ。
矢沢さんの曲はどんな曲にも哀愁がありますよ。
やっぱり相澤がさ、ノーバディの相澤がこないだ俺にね、「YAZAWAのメロディは黙ってても哀愁があるんだから、あんまり楽器で哀愁出そうと思わなくても充分出るよ」って言った時にね、ああ、こいついいこと言うなあと思ったよ。俺ね、知らず知らずに、メロディにマイナーコードきゅっと入れたりするから、黙ってても、こう、切ないわけじゃない。そこにまた切ないオーバーダビングをするとしつこいんだよね。だから、♪ガンガンガンガンってやっても、マイナーがファーンと入ってちょうどいいわけよ。
かわしてますよね。
うん。だから僕ね、思うの。やっぱりね、キャロルでデビューしてから37年になりますけど、やっぱりアメリカにも憧れたし、イギリスにも憧れた。海の向こうに憧れたことにも感謝してる。それが僕の引き出しになってるから。それで今ここへ来て洋楽じゃないんだよ! って言い切れる僕が凄く嬉しいの。最高じゃん! それ! その通りだよ。帰るべき場所に帰ってきたんだから。ここニッポンに帰ってきて、渋谷に帰ってきて、新宿に帰ってきて、ライヴハウスに帰ってきて、一番気持ちいい瞬間追いかけて音楽やってる。
そこに音楽の原点があることを誰もが再認識するんじゃないですか?
カッコつけてるわけじゃないけど、売れなくてもいいからさ、おいちょっとYAZAWAのアルバム、結構イケてるじゃん!? っていうような風が吹いたらいいなと思うね。俺らと世代の違う10代とか20代30代の連中がね、YAZAWAって結構面白いアルバム出してるよねっていうのがあればもう充分。そしたら次、第二弾待っててよ。間髪入れずに作りに入るよ。
いいんですか、宣言して。
好きにしてよ。純粋にロックやるってことは、やっぱヤンチャじゃなきゃだめなんだから。
思い切りヤンチャですよね。
ヤンチャですよ。俺もこのアルバムも。コイツ。正に、今の時代のキャロルですよ。これからももっとヤンチャするよ。まだまだ60歳なんで、ヨロシク!

矢沢永吉

よりみち編集者・栗山圭介の矢沢永吉評

和食もフレンチもそうだ。焼くも煮るも混ぜるもいいが、究極の醍醐味は素材の旨味をどれだけ素朴に伝えられるかである。化粧水というのは、その成分の配合をどれだけ真水に近づけられるかが勝負だと云う。どれもこれも極めればシンプルに辿り着く。矢沢永吉がしてきた旅は60年を迎え、ロックという列車に飛び乗ってから38年目の駅にさしかかった。これまでさまざまな場所で好き勝手にロックを創ってきた男が選んだ最高の一品は、どれだけ素材の生感をシンプルにダイレクトに伝えられるか、である。その先にはカネも名声も別荘も権利も無く、いわば無心の境地でロックンロールを愉しもうとしたわけだ。脇目も振らずひたすらに走り続けてきたことが、結果最高のよりみちとなり、矢沢永吉は究極のロックンロールを誕生させた。走り続ける彼の正面に廻り込むことは不可能だ。追い続けるのは背中ばかり。けれど彼は武道館で僕らの真正面に立ちロックという生き様を見せてくれる。観衆はその姿を瞼に焼き付け、美味いビールと共にそのスピリットを胃袋へと流し込む。そして夜明けとともに頑張る気持ちが湧き上がる矢沢永吉という極上のドラッグ。拝啓 矢沢永吉様 ロックンロールって、やっぱり気持ちいいものですね。もうしばらくあなたのロックに甘えさせていただきます。



矢沢永吉
矢沢永吉さん プロフィール

矢沢永吉○1949年9月14日広島生まれ。1972年、ロックバンド『キャロル』のリーダーとしてデビュー。75年、伝説となった日比谷野音でのキャロル解散コンサート後、『I LOVE YOU,OK』でソロデビュー。77年日本人ロックアーティストとして初めて武道館公演を行い、07年には前人未到の武道館公演100回を達成。著書『成りあがり』(78年)は若者のバイブルとなり日本中に一大YAZAWAブームを巻き起こす。9月19日には東京ドームで5万人規模の公演『ROCK‘N’ ROLL』開催、10月30日からの全国ツアーへと続く。

Photographer/Pey Inada
Yorimichi Editor/Keisuke Kuriyama


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 -issue199- 南明奈

 -issue198- 榮倉奈々

 -issue197- 松任谷由実

 -issue196- 香里奈

 

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