きょうは「海の日」。夏本番を間近に控え、海水浴など海のレジャーを楽しむ人も多いに違いない。海に親しみ、海の豊かさを実感できる季節である。しかし、海がさまざまなごみによって汚されている実態にも目を向けることが必要だ。
瀬戸内海の海ごみ問題への対応策などについて協議した「瀬戸内海海ごみ対策検討会」が、3年間の協議の成果を今春、まとめている。環境省の呼びかけで、瀬戸内沿岸6県の行政関係者、漁業者、市民団体、研究者が一堂に会した初の試みだ。
特筆されるのは、瀬戸内海の海ごみの実態が示されたことだ。海ごみは、海岸に漂着する「漂着ごみ」、海底に蓄積する「海底ごみ」、海面や海中を浮遊する「漂流ごみ」に分けられる。調査の結果、海底ごみは少なくとも約1万3千トン、漂着ごみ約4千トン、漂流ごみ約1万立方メートルと推計値が明らかにされた。
さらに、海底ごみについては、播磨灘、広島湾など10海域での調査の結果、回収数が最も多かったのは香川県西部の燧灘で、大阪湾の約9倍に上った。次いで児島湾周辺だった。沿岸の人口が多ければ、接した海域のごみも多いと思いがちだが、海底ごみは沿岸人口と必ずしも比例しないことがわかった。
海ごみは発生源が特定しにくく、人の目に見えにくいため放置されることが多いとされてきた。ただ、閉鎖性海域である瀬戸内海の海ごみは、海域内や沿岸、海に流れ込む河川でのごみ投棄などによるものとみられ、海外から漂着物が流れ着く日本海側とは事情が異なっている。漁業に支障を来すことも多く、人々の生活とのかかわりが深いといえよう。
検討会の報告を受け、環境省は海底ごみの回収処理を推進するための手引を作製した。操業中にごみを引き揚げることが多い漁業者が、自治体の処理施設にごみを持ち込む際の工夫や注意点をまとめたものだ。漁業者に参考にしてもらうだけでなく、沿岸自治体も漁協などと連携を図り、海ごみの受け入れ体制整備を進めてほしい。
海ごみ対策に関しては、瀬戸内海は一つだ。瀬戸内の各県がばらばらで対処するのでなく、瀬戸内海のどこであっても、自らの地域のことと考え、全体で取り組むような仕組みづくりが求められる。沿岸地域が一体となる機運を、今後に生かしていかなければならない。
海との触れ合いを、美しく豊かな海づくりへのステップにしていきたい。
東京都港区の公社マンションで2006年、都立高2年の男子生徒がエレベーターに挟まれて死亡した事故で、東京地検は業務上過失致死罪で製造元の「シンドラーエレベータ」の元東京支社保守部長ら2人を含む計5人を在宅起訴した。
当初は構造上の欠陥はないとして、シンドラー社の立件は困難とみられていたが、警察はシンドラー社が事故より以前に不具合情報を察知していたのに、他の業者に点検業務を引き継ぐ際、情報を伝えていなかったことを重視して書類送検した。検察も警察と同様に関係者の責任を厳格に判断し、当時の担当者の立件に踏み切った。
シンドラー社以外では、保守点検方法について十分に把握しないまま現場に保守点検させたとして、事故当時の保守点検会社「エス・イー・シーエレベーター」の社長ら3人が在宅起訴された。
現代社会でエレベーターは欠かせなくなっており、公共性の高い存在だ。安全に利用できるよう万全の管理が求められる。しかし、保守点検業界はメーカーの系列業者と点検専門の独立系業者がシェア獲得をめぐって対立しているという。
国土交通省が5月に実施した業界のアンケートによると、エレベーターの不具合情報について、シンドラー社など主要メーカー6社は、エス・イー・シーエレベーターなど独立系業者に伝えていないと回答している。事故から丸3年たつが、業界は不具合情報の引き継ぎのルール作りなど再発防止策を打ち出せていないのが現状だ。
日常的に利用されているエレベーターの安全管理の課題を浮き彫りにした今回の事故。踏み込んだ起訴は、業界全体に安全対策への取り組みを最優先するよう迫るものといえよう。
(2009年7月20日掲載)