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■「WIRELESS JAPAN 2009」見どころチェック!
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NTTドコモ、かざして使う「直感検索・ナビ」
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NTTドコモ、音や映像につづく第3のメディア“触覚の通信”をデモ
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【WIRELESS JAPAN 2009(見どころチェック!)】NTTドコモ、音や映像につづく第3のメディア“触覚の通信”をデモ
別記事ではAndroid搭載端末「HT-03A」を使ったNTTドコモの「直感検索・ナビ」を紹介しているが、もうひとつ同社が「WIRELESS JAPAN 2009」で出展予定の面白い技術を紹介しておこう。
●触覚や力覚の通信を実現する「触力覚メディア」とは?
物に触った感覚や力の感覚を遠く離れた場所で体感できる、一風変わった装置をご存じだろうか? NTTドコモ先進技術研究所が慶応義塾大学大西研究室と共同開発した「触力覚メディア」を実現する装置がそれだ。この装置は、オペレーターがマスター側の装置を動かすと、離れた場所にある装置(スレーブ側)が追従しながら動く「マスター・スレーブ方式」の遠隔操作システムの一種だ。
触力覚メディアの研究開発用機器。スレーブ側にかかる微妙な力のかかり具合を、マスター側で感じることができた
ただし、この装置は従来のいわゆる「テレオペレーション」と呼ばれる単純な遠隔操作システムとは一線を画するものだ。通常の遠隔操作では、操作対象の装置を動かしたとき、もとの力と同じ力が伝えられるだけだ。もしスレーブ側の装置が障害物などに当たってしまい、反力を返してきても、マスター側でその力を検出することはできない。そのため、力任せにマスター側の装置を動かせば、スレーブ側の装置が破壊される危険もあるのだ。
NTTドコモ 先進技術研究所 コミュニケーションメディア研究グループ 主任研究員の高畑実氏(右)と林宏樹氏(左)
ところが今回、NTTドコモが開発した触力覚メディアでは、スレーブ側の「位置」と「力」の情報をマスター側にフィードバック(スレーブ側の情報の一部をマスター側に戻す)することで、マスター側とスレーブ側の装置間で相互作用を実現する「バイラテラル制御技術」を採用。そのため、もしスレーブ側に大きな負荷が掛かると、その“力の感覚”がマスター側のオペレーターにも伝わる。つまり遠隔操作を行う対象のスレーブ側の状況に合わせて、柔軟な制御が可能になるのだ。マスター側のオペレーターはスレーブ側にかかる微妙な力のかかり具合を感じながら、精密な作業を行えるようになる。
●“触覚の通信”は音や映像につづく第3のメディア
遠隔操作で物体をはじくことを想像してみていただきたい。本来であれば、物体に触れたときの感覚やはじき具合は指先の感覚が重要になるはずだが、単なる操作ではまったくその感覚は伝わってこない。今回NTTドコモが開発した技術では、その微妙な振動や弾力までも操作側(マスター側)に伝えることができる。このように、あたかも人にその場所にいるような臨場感を与える技術は「テレイグジスタンス」と呼ばれている。この触力覚メディアも、マスター側のオペレーターが操作する力を正確に遠方に伝え、さらにスレーブ側の反力(力覚)をリアルタイムに知ることができるという観点で考えると、テレイグジスタンスの範疇に入るものといえるだろう。
このような新しい通信技術の研究にNTTドコモが着手したのは2000年頃だという。いまや携帯電話に必要不可欠な存在となった「iモード」が登場した翌年だ。同社の高畑実氏(先進技術研究所 コミュニケーションメディア研究グループ 主任研究員)は「iモードの次に来る技術として、ロボットを通信に応用できないかと考えていました。たとえば遠隔にあるロボットを、あたかも自分の分身のように動かせれば、それが新しいメディアになると思ったのです」と開発の経緯について説明する。その当時はロボットの研究も単体マシンに留まらず、通信と結びついた「ネットワーク・ロボット」へ広がりをみせていたころだ。
さらに「音や映像につづく第3のメディアとして“触覚の通信”を展開できるのではないかと考え、まず皮膚感覚を検出できるデバイスを考案しました」と林宏樹氏(同 コミュニケーションメディア研究グループ)は続ける。これはデバイスに対して電極をマトリクス状に配置し、それを指で触ると電気的な刺激によって神経を刺激して触覚を再現するという研究だった。その流れで皮膚感覚から力覚へと研究が進められていき、今回の触力覚メディアという成果につながったのだという。
●開発された装置の仕組み
では開発された装置について具体的に見てみよう。マスター側とスレーブ側には、それぞれDCモータを使用している。そのシャフト部にエンドエフェクター(対象に直接作用を及ぼす機構)を連結したシンプルな構成だ。このほかにモータを制御するコントローラーもある。前述のように、スレーブ側に掛る負荷を検出するためにセンサーが用いられているが、圧力センサーは使用していない。モータの回転数や速度を検出する「光学式エンコーダー」と呼ばれる装置が用いられている。これは、モータの回転に合わせて電気的なパルスを発生させるセンサーだ。
力を検出する原理は、まずエンコーダーから発生する電気パルスによって位置(回転角)を検出することから始まる。そのパルスを一定時間でサンプリングすれば速度が求められる。さらに、その速度の瞬間の変化率を調べれば(速度を微分すれば)、加速度(角加速度)が求められる。加速度が分かれば、質量(慣性質量)との関係から力を表現できるわけだ。これにより、スレーブ側の負荷変動をマスター側にフィードバックして、微妙な力覚の情報を返しているのだ。
ちなみに、この装置は制御周期が10kHzで、エンコーダーは数万パルスという高分解能タイプが用いられている。スレーブ側の位置は数μmが検出できるほどの精密なレベルだという。マスター側とスレーブ側の遠隔通信は、イーサネットや無線LANあるいは移動通信網で実現する。もしモバイル環境下で通信の遅延や変動が起きても、安定した動作が行えるような制御を導入しており、高度なリアルタイム性が要求されるシーンにも対応できる。この制御技術は、外部ノイズなどを推定する「外乱オブザーバ」を通信の制御に適用したもので、数msから数100ms程度までの通信の揺らぎを許容できるそうだ。
●触力覚メディアで拓ける未来
さて、この触力覚メディアによって、どのような未来が拓けるのであろうか。NTTドコモが考える“触覚の通信”が我々の生活に与えるインパクトは大きい。たとえば精密制御を可能にする触力覚メディアのメリットを如何なく発揮できるシーンは数多く考えられる。まず原子炉や宇宙、手術などの特殊用途で活躍するロボット操作への適用などが挙げられるだろう。実際に手術ロボットの分野では、遠隔による鉗子手術への基礎研究も進んでいる。ただし、安全性などを考慮すると、実社会へ浸透するまでには、もう少しだけ時間が掛かかりそうだ。とはいえ、現段階でも実用性に目途が付いている分野もあるという。
「すでに実用性を確認したのは建機分野です。たとえば長崎・雲仙普賢岳のような危険な場所は人が立ち入ることはできません。そこで災害復旧工事のために重機をリモートで操作、土石流を食い止めるインフラづくりに利用できるシステムに触覚を応用し,試験を行いました。この分野では本当に遠隔で作業したのかと驚くほど、美しいダムができます」と高畑氏は胸を張る。これは昨年、フジタと共同で実証したもので、NTTドコモのHSDPA回線(FOMAハイスピード)を利用し、建機オペレーターの指示を伝えて、ショベルカーの遠隔操作を実施。通信速度に起因する操作遅延の問題はなく、直線距離で1kmほど離れた場所からでも、うまく操作できたという。
いまは極限環境を中心に導入が始まっているところだが、この技術はアミューズメントなどの一般分野にも広がりをみせるだろう。「触覚を映像のように見せる“触像”という概念も提唱されています。いわばテレビやディスプレイのなかに手を入れるような感覚となるものです。手で触れられないような貴重品や、Webサイトの通販で商品の手触りを表現したりと、いろいろな分野で応用できるようになるでしょう。将来的には、この技術をモバイルの新しいサービスやユーザーインターフェイスとして展開できるようにしたい」と、両氏は期待を寄せる。
事前取材では、冒頭で紹介した触力覚メディアに加え、さらに趣向を凝らしたデモンストレーションを目の当たりにすることができた。詳細については本レポートでは秘密だが、この7月22日から24日までの3日間、東京ビッグサイトで開催される「WIRELESS JAPAN 2009」において、同社の触力覚メディアのデモが行われることになっている。
高畑氏は「遠く離れた相手に力感を伝える技術を皆さんに実感していただけるように、面白い体験装置を準備しています」と語る。何はともあれ、このような技術は実際に触ってみるのが一番だ。ぜひこの機会にNTTドコモのブースへ立ち寄って、同社の最先端技術に触れてみてはいかがだろうか? NTTドコモが考える「第3のメディア」の具体的なイメージがつかめるかもしれない。
なお、出展内容については、ドコモのワイヤレスジャパン2009スペシャルサイト(http://answer.nttdocomo.co.jp/wj2009/)にも紹介されているので、あわせて参照していただきたい。
(RBB TODAY 2009年7月17日 13:03)
キーワード:
WIRELESS JAPAN
NTTドコモ
遠隔操作
テレオペレーション
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