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十勝毎日新聞社ニュース

「まるで真冬、死んでしまう」  トムラウシ山9人死亡

2009年07月17日 14時14分

嵐で衰弱、次々脱落
陸空から懸命の救助

 【新得】中高年のツアー客ら9人が亡くなった新得町内のトムラウシ山(2141メートル)での遭難事故。旭岳からトムラウシ山までの花をめでながらの縦走は、一転して大惨事に。山中で何が起きたのか。無事下山したツアー客らは「頂上は台風並みの風」「まるで真冬のような寒さ」と想像を絶する厳しい天候を青ざめた表情で振り返った。

報道関係者の車両から警察車両に移される女性(16日午後11時55分ころ、塩原真撮影)

 警察や消防などは同山短縮登山口を拠点に17日早朝から陸と空の両方から懸命な捜索を展開。警察官と新得消防署員計6人が午前4時に入山、30分後に地元の山岳関係者6人が続いた。陸上自衛隊からも約30人が投入され、ヘリコプターで頂上まで運んでから救助活動を進めた。

 同消防署員からは「下山した人の情報によると、頂上の気温は0−2度しかなく、体温が下がり命の危険もある」「東京の登山ツアー客はばらばらに下りたようだ」などの声が上がり、救助隊員は一様に厳しい表情で山に入った。

 道警航空隊のヘリ2機と陸自のヘリ1機が威力を発揮。好天にも恵まれ、ヘリが次々と遭難者を救助していった。同登山口で救助隊員と無線交信していた新得消防署によると、同4時40分ごろから約2時間の間で、男女8人を同登山口や同町内の農道空港、帯広市内の帯広厚生病院などに運んだ。その後も次々と搬送したが、生存者は10人で、単独で登山をしていた男性1人を含めて9人の尊い命が失われる事態に。

 最初に自力で下山した男女=いずれも(64)=は「頂上は台風並みの風。登山道は川のようになっていた」と疲れた表情を見せた。下山したもう1人の男性(65)も「寒くて死んでしまうと思ったので早く下りた。みんなちりぢりになってしまった」と話した。

 同登山口で救助活動が進められる中も、多くの登山者が山登りに出掛けていった。福井県から来た無職男性(70)は「昨日(16日)登ろうと思ったが、雨が降っていたのでやめた」と話していた。

「私たちも危なかった」追い越した静岡の6人
 遭難した登山ツアーの18人とともに15日にヒサゴ沼避難小屋に宿泊し、16日午前5時半ごろからトムラウシ山を目指した静岡県の6人パーティーは辛うじて無事だった。メンバーの男性(66)は「出発時は暴風雨。雨は横なぐりに降り、強風で立っていられないほどだった。ツアーの後ろを歩いたが時間がかかると思い、頂上手前で、休憩していたツアーを追い越した。われわれは4時間遅れで東大雪荘に到着し、遭難を知りびっくりした」と驚く。

 男性によると、天気予報通りに午後から一時的に晴れ間も見えたため引き返さずに登山を続けたが「強風に加え、まるで真冬のような寒さ。私たちのメンバーもツアー客と同様に危なかった」と説明。

 この男性と一緒だった登山暦50年の女性(69)は「リュックサックに17キロの荷物を背負っても風に吹き飛ばされてしまう。私も同じだが、ツアーの女性も強風が恐ろしく岩場で足がすくんでいたようだった。ツアーにはガイドもいて、きちんと登っていたようで残念」と動揺した様子だった。

本州の3000メートル級に匹敵 夏でも死亡事故頻発

 北海道には雄大な風景や高山植物を目当てに、全国から多くの登山客が訪れる。冷涼なだけに、道内の2000メートル級の山は本州の3000メートル級と同じ気候条件と言われ、夏でも死亡事故が頻発。地元のガイドは「本州と違って気候変化への対応が難しい」と指摘する。

 後志管内の羊蹄山では1999年9月、ツアー登山客が悪天候で道に迷い、64歳と59歳の女性2人が死亡。引率した旅行会社社員は業務上過失致死罪で有罪となった。

 大雪山系では2002年6〜9月に登山客が疲れで動けなくなるなどの事故が相次ぎ、5人が死亡。04年7月には72歳男性が低体温症で、同10月には81歳女性が凍死した。

 登山ガイドを務める南富良野町の男性は「7月は高山植物の花が咲き、登山客の数がピークになるが、山では朝方に氷点下まで気温が下がることもある」と注意を呼び掛ける。

 トムラウシ山や美瑛岳では、雨風を避けられる山小屋や避難に使える手ごろな登山道も少ないという。「山小屋を使うツアーでは、雨風が吹いても予定通り到着するために無理をしてしまう。テントなどを持っていないと天候急変には対応が難しい」と話している。

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