HOME 特集 【緊急企画 夏山遭難】トムラウシ山の惨事(下)
   | |

特集

【緊急企画 夏山遭難】トムラウシ山の惨事(下)

2009年07月19日 15時11分

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

トムラウシ山南側の前トム平からの眺め。好天時は広々した景観が広がり、中高年に人気の登山コースだ(2004年9月撮影)

「誤り」招く強行出発
登山ブームに潜む危険
「引き返す勇気必要」

 「ひとことでいえば、余裕のない行程で、天候判断よりも強行を決断した行動判断の誤り。最近のツアー動向を見ていると、いつかは事故が起きると思っていたが…。ツアー参加者が多いため、大惨事になってしまった」。十勝山岳連盟の太田紘文会長(69)は、地元・トムラウシ山(2141メートル)で一夜にして9人の命が奪われた悔しさをにじませる。

 大雪山系のほぼ中央に位置する独立峰・トムラウシ山は、日本百名山の1つにも数えられ、多くの登山者のあこがれの山。登山人気に加え、昨今の健康志向ブームもあり、中高年の登山熱は高い。80歳近い人が、百名山の最後に残った山として来ることもあるという。

事故、過去最多8割以上中高年
 一方でブームの裏には危険も見える。警察庁によると、国内の山岳遭難は昨年、件数、人数、死者ともに過去最多で、8−9割は40歳以上。トムラウシ山の登山ルートはいずれもアプローチが長く、上級者向けといわれている。

 「日帰りでも10−12時間行程。ロープなどを使うわけではないが、体力的なものと天候判断も含め、厳しい山」と地元山岳関係者。「訓練ではなく、楽しむために来ているはず。年齢を考えれば余裕を持って登ってほしい」と、今回の救助にも携わった新得山岳会の小西則幸事務局長(57)は訴える。

「いかに危険を回避して安全に登るかを考えてほしい」などと語る太田会長

避難小屋頼りの宿泊計画タブー
 太田会長は、本州からの一部ツアーには今回のように、テントを張らずに避難小屋を目指すケースも多いと指摘する。北アルプスなどは2、3キロごとに管理人付きの小屋があるが、東大雪は天候に恵まれても8時間も歩かないとたどり着かず、「避難小屋の宿泊を目的に渡り歩いてくるのはタブー」。

 さらに好天前提で余裕のない行程にも疑問を投げかける。アミューズトラベルの松下政市社長は記者会見で、日程に縛られて安全を害することは「なかったと思う」と語った。だが事故当日、登山を取りやめたり、引き返してきた人も多かった。

 「計画があるから、早く温泉まで行こうという気持ちが強かったのでは。ヒサゴ沼(避難小屋)に引き返す勇気が必要だった」と太田会長。地元ツアー会社では、登山に必ず平地での観光日程を入れ、山での万一に備えるところもある。別の山岳関係者からは「北海道の山をなめている」と怒りの声も上がっている。

参加者とガイド割合に疑問の声
 18人に対してガイドが3人という割合も問題視される。しかも2人はトムラウシ山は初めてだった。ガイドパーティーは、山岳会のパーティーと違い、あちこちからの集合体。関係者からは「連帯感がなかったのでは」との声も漏れる。「体調も経験も実力もお互いによく分からない中では、さらに判断を慎重にしなくてはならなかった」と、登山専門誌の男性編集部員(41)。

 経験や体力の差が、いざというときに出る。無理な行程を取るとその差は開く。今回はちりぢりになり、生死を分ける差となった。名実ともに自力で生き延びるしかなくなった。ガイドの指示、判断がどうだったかは今後の捜査で明らかになるが「全員を把握するには4人に1人くらいは必要とされる」との見方もあり、そこに原因の1つはあると見る専門家は多い。

 花が多く、変化に富んだ素晴らしい山といわれるトムラウシ山。「中高年対象の講習を21回行っているが、その受講生で遭難で亡くなった人はいない。難しいことではない。常に基本に、初心に帰ること」(太田会長)。東大雪荘によると、事故発生後、行程延期など、天候判断に慎重な登山者が増えたという。大きな犠牲を払ってしまった今、後に続く人たちが教訓にできるか試される。

6~12時 12~18時
22日の帯広
最高気温
21℃
最低気温
12℃
天気予報はかちモバ!十勝19市町村6時間毎更新中!

十勝毎日新聞に掲載された全19市町村の話題や
お知らせなどを、地域の皆様や十勝を離れて暮らす方々にふるさと情報としてお伝えします。

無料メール配信中     登録数5000 件突破

今、なぜ「かちまい」…
ご購読のお申し込み