訃報:若杉弘さん74歳…新国立劇場オペラ芸術監督

2009年7月21日 23時35分 更新:7月22日 0時19分

 ヨーロッパと日本でオペラ界を切り開いてきた指揮者で新国立劇場オペラ芸術監督の若杉弘(わかすぎ・ひろし)さんが21日午後6時15分、東京都内の病院で多臓器不全のため死去した。74歳。葬儀は近親者で行い、お別れの会を後日予定している。喪主は妻のメゾソプラノ歌手、長野羊奈子(ながの・よなこ)さん。

 東京生まれ。慶応大経済学部に進んだが中退して、東京芸大の声楽科に入り直し、さらに指揮科に転科して卒業。在学中から二期会のオペラ公演など指揮者として目覚ましい活躍を見せた。ワーグナーのオペラ「パルジファル」日本初演の指揮により1967年度の毎日芸術賞も受賞した。

 小澤征爾さんと同い年で並び称されたが、若杉さんは当初からオペラを目指した。ワーグナーの「ラインの黄金」を日本初演するなど、「初演魔」と言われるほど、日本の音楽界で遅れていたオペラに次々に光を当て、現代のオペラ・ブームの基礎を築いた。

 77年からはヨーロッパにも進出、日本人としてドイツ語圏で初めて名門、ケルン放送交響楽団の首席指揮者に就任。その後もライン・ドイツ・オペラ音楽総監督などドイツのオペラ界で活躍。80年度にはオペラ指揮の成果によって2度目の毎日芸術賞を受賞した。

 95年にN響正指揮者、96年にびわ湖ホールの芸術監督、07年には新国立劇場の芸術監督に就任、再び日本のオペラ界の振興に全力を傾けた。

 昨年秋から体調を崩し、今年6月の公演も降板していた。サントリー音楽賞(86年)、芸術院賞(92年)など多くの賞に輝いた。マーラーの交響曲など多くのCD録音がある。【梅津時比古】

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