初心者のための咲-saki-麻雀解説 第4話 1

今回もネタバレしてそうね・・・
というわけで、今回も咲の第4話の解説をすることにした。

が、前半はあんまり麻雀シーンがないのじゃが、ざざっと気になるとこをピックアップしてみよう。

えー、まず部室で片岡さんが龍門淵高校の天江衣の記録を見て驚くシーンがあるが、これは麻雀の局で誰が何をツモして何を捨てたとかを記録する「牌譜(ぱいふ/はいふ)」と呼ばれるもんじゃな。将棋・囲碁の場合は「棋譜(きふ)」という。

紙で記録する場合もあるが、最近はデジタル化されて「デジタル牌譜」と呼ばれるものがある。科学する麻雀」のとつげき東北君が使ったのがコレで、のべ60000局にのぼる対局を処理したわけじゃが、これはデジタルじゃなきゃできないといえるじゃろう。
ちなみに「なめとん」さんのブログで、この画面にチラっと写った天江衣の牌譜を再現しておられるので、興味がある方は見てみるといいですね。

なめとんの麻雀ブログ「咲(第4話)の天江衣の牌譜を再現してみる」
あの画面から再現するとか、すごいわね・・・。
なんでこれをやろうと思ったのか動機はよくわからんけど、すばらしい執念といえるじゃろう・・・。

あと、今回の本題じゃが、原作とアニメで少し設定が違っているところがあるので、そこを取り上げてみたい。
染谷さんの実家が原作では雀荘でしたが、アニメでは喫茶店に変っていますね。あと、部長さんのセリフとか、いろいろ。
「雀荘」とは、わりと都会ならどこでもある麻雀屋さんのことじゃな。行ったことはなくとも、看板ぐらいみたことはとはあると思う。

営業形態は大きく2つある。

一人で雀荘に行って、知らないおっさんと打つ、ランダムに対戦する「フリー雀荘」という形態がまず1つ。小額の賭け麻雀を行っているケースも多く、レートの表示があるんじゃな。染谷さんの原作の実家はノーレートなんで、賭けは行っていないみたいじゃが。

最近はノーレートのお店も増えてるみたいじゃよ。ただし、それとは別にゲーム代金が1ゲームあたりかかるので、ノーレートでも無料ってわけではないのは注意が必要じゃな。「お一人様でも遊べます!」とか書いてると、こっちのフリー形式の営業じゃろう。

それとは別に「貸卓」とか「セット」とか呼ばれる営業形態は、純粋に自動卓を貸してくれる。友達同士で行って、1時間○○円とかで打てる。「貸卓専門」のお店もあれば、フリー雀荘と兼業しているケースもあるので、これはお店によるって話になる。

なんで、この実家が雀荘から、喫茶店に麻雀卓があるって設定になったの?
まあ、はっきりした断言はできんが、放送上いろいろまずかったんじゃと思う。

雀荘はいちおう通称「風営法」の関係で規制がある。
第十八条 風俗営業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、十八歳未満の者がその営業所に立ち入つてはならない旨を営業所の入り口に表示しなければな らない。

第二十二条  風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
営業所で、十八歳未満の者に客の接待をさせ、又は客の相手となつてダンスをさせること。
風俗営業というと、どうしても「性風俗」を連想しがちじゃが、ナイトクラブとかダンスホール、パチンコ、麻雀、ゲームセンターもそうじゃし、照明の暗い喫茶店なども入ってくる。

ダンスどうこうの言葉があるので、全体的に法律が古いわな。なんで、もう少し改正されてもいいと思うんじゃが、とりあえず、咲ちゃんらは高校一年生って話なんで、アニメ表現としてこのあたりがマズいというか、自主規制のようなことをしたんじゃないかと思う。
お金賭けるのはいいのかしら?
えー、そのへんを言うと非常に長くなるので、これは以前に福地君が解説してくれているので、興味がある人は見たらいいと思う。

カンチャン待ち麻雀人生相談「佐々木寿人をやっつけたい!どおしたらいいですか?

原作で咲ちゃんらがやったのは、フリー雀荘の手伝い。フリー雀荘は一人でいくから、4人そろわないと麻雀できないんじゃが、人数が足りない時に入ってくれるスタッフのことを「メンバー」というんじゃよ。

他にもお茶を出したり、お客さんがトイレに行く間に打ったり、わりと業務は多いが基本的には人数合わせで入るのが仕事になる。麻雀を打つんじゃな。これは原作でも描写があったと思う。
好きな麻雀打って、お給料とかもらえるんでしょ? 楽しそうじゃない?
それが、どうも違うみたいなんじゃよな。どちらかといえば、過酷な職業かもしれん。

お店にもよるが、基本的にゲーム代金を自分で支払わないといけないし、ノーレートではないお店で負けた場合は、負けた分を自分で支払わないといけない。麻雀が強くないとやっていけんじゃろうし、好きなだけではとても続けれるもんではないじゃろう。

おそらく、麻雀を商売にしているという意味では、「プロの雀士」ってのは本来は、この「メンバー」という職業の人々に当てはまる言葉じゃろう。
負けたら自分で払うなら、弱いと大変なことになるわねー。
メンバーに関しては、東京大学を卒業して雀荘のメンバーのアルバイトをしたという異色の経歴を持つ、須田良規プロの体験を綴った「東大を出たけれど」が有名じゃな。

漫画版「東大を出たけれど」の1巻の冒頭に、須田プロが文章を書かれているので紹介しておこう。少し長くなるが引用させていただく。

日本中には二万軒の雀荘があり、各々にメンバーという人種が巣食っている。

彼らは、雀荘での雑務や接客をこなしながら、自腹で客と麻雀を打つ、雀荘従業員である。単に麻雀が好きなだけでは、とても続けられる仕事ではない。皆それぞれの事情を抱えながら、将来も希望もない閉塞した場所で、細々と生きながらえているのである。

〜中略〜

私は東京大学を卒業してメンバーになった。まともに就職も出来ず、好きな麻雀から離れることができなかったからだ。
東大を出たけれど (近代麻雀コミックス)
一般の人間よりは、多少麻雀のことは分かっているかもしれない。それでも麻雀の真剣勝負で口に糊していくような気概は無いし、店を興したいとか過ぎた野心を持っているわけでもない。

根が、怠惰なのだろう。ただ、雀荘の空気と牌に触れている時間が、水に合っただけなのだ。

これは私が、吹き溜まりで日々垂れ流す心情を綴った、ささやかな記録である。

甚だ僭越ではあるが―― メンバーを代表して、ここに呈することにしよう。

原作:須田良規 作画:井田ヒロト『東大を出たけれど』第1巻より
なんか、咲の世界とぜんぜん違うわね・・・。暗い感じがするし・・・。
東大を出たけれどは、面白いので読んでみるとええよ。派手な打ち方や超能力めいたものはないが、現実に即したリアリティーのある世界じゃと思う。なにしろ、須田プロが実際に経験されたことじゃしな。
須田さん、このアニメのシーンとか原作を見て、どう思ってるのかしらね。

こんな華やかな雰囲気じゃないよーって言ってたりとか。

えー、そう思って実際に須田プロに質問してみたわけじゃよ。
このメイド衣装のスカート具合とか、どうかなと思って。
お忙しい中、どうもありがとうございました!といわざるをえないです。
メンバー経験も豊富な日本プロ麻雀協会、須田良規プロのお伺いします。

「咲-Saki-」の中でメンバーとして働くシーンがあったのですが、原作、アニメ版を踏まえたうえで、この雀荘のシーンを、メンバーとして経験のある須田プロはどう思われたでしょうか? 何か感じられた部分があれば教えてください。

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原作では確かノーレート雀荘のメンバーをメイドコスで二人がするんですよね?

以前「お年玉をまきあげられる」という咲の台詞も変えられていましたし、制作側は極力賭け事のイメージを払拭したいんでしょう。

実際は放送倫理の問題だったと思うんですけど、それが結果このアニメの主題(=萌)を守っているとも言えますね。

まあ可愛い子がちょっとアウトローな世界に迷い込んでピンチに遭うという展開も、あればあったでいいんでしょうけど!

同じ麻雀というフィールドで原作をされる須田プロならではのコメントじゃな。麻雀プロの中でも、その冷静な判断力と鋭い分析力という分野においては、天才・田中太陽プロを凌駕しているといってもいいじゃろう。
メイドコスって・・・。
続きます!





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