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小説版 時空警察ハイペリオン
あはは。アイツにヤられちゃってるのはこの三ツ星ひかりその人なんだよね。アイツはどこに居てもあたしの事、わかってる。絶対あたしの所に帰って来る。あたしがピンチの時には自分を犠牲にして、どんな事をしても助けてくれる。
今までもそうだった。信じてる。アイツもあたしの事、信じてる。だから何も言わない。
でも、時々は…具合の悪そうな顔してたら「大丈夫か?」とか言って欲しい。女子高生連れ回すの、恥ずかしいかもしれないけど…捜査にあたしも連れてって欲しい。
あー…。あたしって乙女だなぁ。何でこんなんなっちゃったんだろ?
「公私混同はダメだよ!」って偉そうなさりあの声が聞こえて来そう。わかってるよ。でも、恋する女子の気持ちは繊細で複雑なのよ。それに、こうも毎日する事がないと、そういう余計な事ばかり考えちゃうんだよ。自分の服、買い物してても「アイツなら、こういう服。好きかな?」とか思ったり、ついついアイツの好物の食材ばっかり買っちゃったり。
ちょっとでもオトナっぽく見せようとして、ちょい派手めのチークなんか買ってみたりしてさ。
でも、改めてこっちに赴任して以来、3ヶ月、あたしは高校生やりながら、放課後はこの探偵事務所で事務のバイトをしてるんだけど、殆どアイツと一緒にいた事がない。夜はいつもだいたい9時には帰るんだけど、その時間までには殆どアイツは帰って来ない。アイツの好物を作って置いて行ったりするんだけど、次の日来たらそのまんまだったりノ。これがけっこう凹むんだよね。
アイツ、確かに言ってくれたんだけどな。
「ひかり。俺はお前の為に生きる」って…。これ、さりあ達も聞いてた。
そりゃあ、状況が状況だったけど。
あの時ノ私たちがシグナだった頃、アイツノ「彼」が追っていた07年最大の事件、「ディザイン」事件。怪しげな占いサークルから新興宗教へ、そして目的の為に手段を選ばない秘密結社へと変貌していった「ディザイン」の首魁、その正体は「彼」その人だった。
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用語集
正確には彼の存在を隠れ蓑に、もう一つの人格と言うべき(性格もだけど、見た目も)全く別の人間が存在していたのだ。「彼」は自分自身自覚しないまま日毎に別人と入れ替わっていた。
それは、巧妙に仕組まれた策略だったんだけど、「彼」は自分に隙があった為にそれにつけ込まれ、知らぬ間に人体改造まで施されていた事を心から恥じ、最後には強化改造されたもうひとつの人格を押さえつけられなくなって自ら死を選ぼうとした。
それは、想像を絶する自分対自分の戦いだった。彼は醜く変貌しつつある姿で、別物に変わりつつある声で、あたしに「殺してくれ」と言った。
あたしには出来なかった。それまで時空刑事として、どんな理由があっても、時空犯罪を犯したものを見逃す事はなかったのに。この時代の少女(あたしのこの時代での数少ない友達だった)を愛し、ただこの時代で静かに生きていたいだけと号泣しながら懇願する男の子も、その友達の目の前で撃ったあたし。任務の理不尽さに何度も泣きわめくさりあにも、優しい言葉もかけてあげた事がなかったあたし。
「ドロイドよりもクール」それがあたしに貼られたレッテルだった。
そのレッテルが剥がされ、何もかも剥がされ丸裸にされるような感情と共に、あたしの目には涙が止めどもなく溢れた。
そんなあたしを見て、死ぬ決意をしていた「彼」は言ったのだ。元の彼の澄んだ声で。
「ひかり、俺はお前の為に生きる。時空刑事としてではなく、一人の男として」
彼の精神力が結果的にもう一人の自分を押さえ込む形になった。「もはや同一の身体を使う必要もない!」と「彼」から分離したもう一人は醜悪極まりない姿へと変貌し、「彼」と力を合わせたあたし達に葬られた。
「彼」の名は……織田優生。
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