Hyperion
小説版 時空警察ハイペリオン

(W-1)

アイツが「ちょっと出かけて来る」と言って事務所を出て行ってからもう4時間になる。
「何がちょっと出かけて来る、よ!」流し台にたまり放題にたまった食器やグラスなんかを洗いながら、思わず声に出してしまう。 別に好きで洗いものをしてる訳じゃないけど、他にする事が無いのと、片付けても、片付けても翌週に来てみると散らかり放題に散らかり、たまり放題にたまっている洗い物を見てると、なんだか闘志が湧いて来る。
ていうか、一応このわたしの居る場所として、このゴミ屋敷状態は許せない。
わたしはここ「折尾探偵事務所」にバイトとして、基本、週に3日通っている。「折尾探偵事務所」は横浜の南港区の大久保ってとこにある「咲山ビル」っていう雑居ビルの一角にある。
そして、さらに2時間。結局アイツは帰って来なかった。そろそろ定時だ。そう、バイト終了時間。結局今日も家政婦のごとき仕事しかしてない。 たまった光熱費や水道代やらの督促状の束をこれみよがしに机の上に置くと、わたしは帰り支度を始めた。
…と、そこへ、玄関のチャイムが鳴る。
どうせこの部屋へ来る客なんて家賃を取り立てに来るオーナー件管理人の咲山のおじーさんぐらいだ。
「はいはい、ただいまーっ!」
一応営業スマイルを頬に張り付かせつつ玄関の鍵を開ける。
ドアを開けるとそこには…この、折尾探偵事務所の主、折尾光四郎その人が両手一杯に荷物を抱えて立っていた。

用語集

「ごめんごめん、両手塞がっちゃってさぁ」
大荷物を抱えて光四郎は部屋へ入って来る。
「お買い物ですか?」
わたしはわざと丁寧に質問する。
「うん。ほら、そろそろ新番組が始まる時期じゃない?だから去年の商品、半額以下になっちゃってるんだよね。男として、これは見逃せないよね!」
「はあ。」
男として見逃せない大事な商品…というのは、子供のおもちゃだ。合体ロボとかの。
女としては…ていうか普通の大人としては理解に苦しむ。この事務所にはよく見ると…特に奥の部屋は、この光四郎のコレクションである合体ロボのおもちゃが所狭しと並べられている。
「いやぁ、合体ロボって男のロマンなんだよね。結局俺たちの時代になっても合体ロボって実現してないじゃない?特にこの時代の合体ロボ商品って凝りまくってるんだよね。最近ではなんと言っても超合金だま…」
「はいはい!キンタマの話は聞き飽きました!だいたい合体する巨大ロボなんて非合理的なメカ、何の役に立つってのよ?」
「き…きんたまって、そんな単語、乙女が口に出しちゃダメでしょーっ」
あーっ!もう、この人と話してても会話にならないわ!
ったく、なんでこのわたし…冬木玲菜がこんなヤツのこと!!

 p11

 p12 
(C)MAXAM INC/MILLION ENTERTAINMENT INC.